地名に残されたローマ人の足跡
チェスター(イギリス) 前編
ローマ・ブリテン時代に築かれた城塞でぐるりと取り囲まれた街、チェスター。円形劇場等の遺跡が城塞内外に残され、その足跡を今に辿ることができます。城塞内の旧市街では、中世の古き良き時代の建物が損なわれることなく残され、ここで披露される「おふれ役人」の通達儀式はちょっとした見物です。またイギリス人の文豪ディケンズがこよなく愛した街でもありました。
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| イギリス全図 |
チェスターはロンドンの北西およそ300キロに位置します。ウェールズ北部への玄関口に当たることから、ローマ・ブリテン時代(紀元1世紀中頃〜5世紀)以来対ウェールズの戦略上の重要地点として見なされてきました。その足跡を地名そのものにも見出すことができます。
今日、イギリスではウィンチェスター、ランカスター、グロースターなど、〜チェスター、〜カスター(〜chester, 〜caster)の語尾を持つ都市が多く存在しますが、これらの語尾はラテン語の「軍団所在地」(カストゥルム castrum)に由来します。前述の都市は全て、これに当てはまるもので、チェスターはまさに軍団所在地そのものを表していることになります。「全ての道はローマに通ずる」といわれるようにローマ人はこれらの諸都市を軍道で結びました。
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| チェスターの街並み |
チェスターの旧市街はこのローマ・ブリテン時代に築かれた城壁(ローマン・ハーバー城壁)でぐるりと取り囲まれ、その周囲は3・2キロにもなります。合わせて同時代に、円形劇場や浴場、公会堂、水道などの公共施設の充実が計られ、ローマ同様の快適な市民生活が営まれました。なかでも円形劇場は、イギリスで発掘されたものとしては最大級といわれています。街の全体像は、散歩道になっている城壁に上るとよく分かります。イーストゲートから城壁を上り、街を眺めてみましょう。すぐ目につくのは、白壁に黒の木組みのコントラストが印象的な建物群です。お伽噺に登場する家々のようにかわいらしく、しかも一つひとつデザインが異なり、その凝った意匠に目を奪われます。
右前方に見えるのはチェスター大聖堂です。11世紀を起源とするベネディクト派の教会で、街のシンボルともいえる建築物です。初期のノルマン様式にゴシック様式が加えられた複雑な構造を有します。街のどこからでも見えるので旧市街を歩く時のちょうどいい目印になります。
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