町並み百選

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2023年01月23日

錦市場と伊藤若冲(京都)

近年の日本画ブームの中心的存在、大人気の絵師・伊藤若冲。卓越した描写力と鮮やかな色彩、細部にわたる緻密な描き込みは凄味すら感じさせ、見る者を惹きつけます。

江戸中期、京都の錦市場の青物問屋「桝源(ますげん)」の跡取りとして生まれた若冲。幼い頃から絵の才能を示し、10代の頃は一時期狩野派に師事しますが、厳しい教えになじめなかったのか、ほぼ独学で絵の道に没頭します。40歳になった頃には家業は弟に譲り、ゆかりのある相国寺に移り住んで、本格的に絵師としての活動に邁進、数多くの傑作を残しました。

室町時代創建の相国寺。境内にある承天閣美術館には、若冲や丸山応挙、長谷川等伯などすぐれた文化財を収蔵しています

錦市場はその起源を平安時代に遡るという、京都の台所。アーケード街の長さは390メートル、京野菜や琵琶湖の川魚、鱧、ぐじ、笹カレイ、湯葉や生麩、おいしそうなおばんざいなどが並び、四季折々の京の食文化を感じる散策が楽しめます。
若冲の生家があったのは錦市場の西の端あたりだったそうです。現存はしていませんが、間口3間(約5メートル)、奥行き15間(約25メートル)と、いかにも京都らしい「うなぎの寝床」の造りながら、ずいぶん広い、大店であったことが窺えます。
絵ばかり描いていたイメージの強い若冲ですが、錦市場が存亡の危機にあったときには町年寄として奔走したとの逸話も残り、彼がこの市場を心から愛していたことは間違いありません。

昔も今も、京都の台所・錦市場
錦市場で生まれ育った伊藤若冲

2016年、伊藤若冲の生誕300周年を記念して、錦市場の店のシャッターに若冲の作品が描かれました。日中、お店が開いているときは見ることができませんが、朝や夜、京都の町を散歩する機会があったら、錦市場を覗いてみてください。まるで若冲作品がずらりと並ぶギャラリーのようです。

お店ごとに違う若冲の絵が。こちらは解説付きです
お店が閉まっているときしか見られない、シャッターのギャラリー

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