2020年8月12日更新

第20回 フランス・オータン ロラン博物館の「イヴの誘惑」

 

フランス オータンの町

サン・ラザール寺院
フランスのオータンに町はロマネスク建築の代表ともいえる「サン・ラザール寺院」で有名です。

これはヴェズレーの聖マドレーヌ寺院と並んでフランス・ロマネスクの最高傑作と称されています。





 

ロラン美術館

しかし、ここでご紹介したいのは、サン・ラザール寺院のすぐ斜め前にある「ロラン美術館」です。ロラン美術館は15世紀に遡る建物「オテル・ニコラ・ロラン」の一部を占めていますが、後にボーヌの町に施療院(オテル・デュー)を建設するニコラ・ロランは1376年にこの建物で生まれました。

「ロラン美術館」はガロ・ロマン時代の遺物から20世紀の絵画まで幅広いコレクションで有名です。特にロマネスク部門ではサン・ラザール寺院とその付属修道院を飾っていた数多くのロマネスク彫刻が展示され、ロマネスク愛好家にとっては垂涎の美術館と言えます。
ロラン美術館の建物

ロラン美術館

その展示品の中で特に注目いただきたいのが「イヴの誘惑」です。このレリーフはもともとオータンのサン・ラザール寺院の東入り口のまぐさ石の右側を占めていましたが、1766年にこの部分が取り壊され、近くに住む住民が自分の家の建設に再利用していました。

実際、このイヴの誘惑は改築中の家の壁から見つかっています。まぐさ石の左側にはこれと対を成すアダムの彫刻もあったといわれていますが、まだ見つかっていません。
イヴの誘惑
このレリーフは1130年頃、おそらくジスルベルトゥスによって制作されたと考えられており、ロマネスク彫刻の歴史において最も初期に制作された女性の裸体彫刻の一つです。このレリーフの中でイヴは横たわって左手で原罪を象徴する「禁断の木の実」を掴み、身体を艶めかしくくねらせ、まさにこの瞬間に罪を犯そうとしています。

このような女性の艶めかしさを描いた彫刻や絵画はロマネスク期やゴシック期にはタブーとされ、ほとんど見られませんでした。16世紀以降のルネッサンス期になってやっとボッチチェリの「ヴィーナスの誕生」などに見られるようになります。つまり、「イヴの誘惑は」この時代にあって、極めて珍しい、斬新な彫刻であり、ロマネスク彫刻の最高傑作と言えます。


次回は第21回 メキシコ・メキシコシティー メキシコ国立人類学博物館の「パカル王の翡翠の仮面」をご紹介します。お楽しみに!
次回更新予定:8月19日(水)

東京支店:中屋雅之


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