2020年7月22日更新

第17回 カンボジア・アンコールワット×第一回廊に描かれた「乳海攪拌図」

 

アンコールワット

カンボジアのアンコールワットは大変有名な世界遺産の遺跡であり、訪問された方も多いでしょう。これは全体が大変貴重な芸術作品であり、彫刻やレリーフなど目を見張るものがあります。ここを訪れた方は第一回廊の浮彫を見ながらガイドさんの説明に耳を傾けられたことでしょう。
しかし、そこに描かれている物語は難解なものも多く、すぐには理解できないかもしれません。訪れたことのある方は復習として、これから訪れる予定の方は予習として、最も重要な浮彫彫刻をご紹介させていただきたいと思います。

アンコールワットの浮彫彫刻の目玉とも言える「乳海攪拌図」

「乳海攪拌」(にゅうかいかくはん)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。アンコールワットの浮彫彫刻の目玉とも言えるもので、ヒンドゥー教における天地創造の物語です。
アンコールワットは第一回廊から第三回廊まで方形の通路で取り囲まれていますが、その中で第一回廊はほとんどの面に彫刻が刻まれています。そしてその東面の南側の壁に長さ約50メートルにわたって描かれているのが「乳海攪拌図」です。
乳海攪拌とはその名前の通り、ミルク状になった海を「攪拌」、つまりかき混ぜることです。中央にヴィシュヌ神が描かれ、その下に彼の化身である神亀クールマがいて、その背に大マンダラ山を載せました。その山に巨大な蛇(竜王ヴァースキ)を巻き付け、左側ではアシュラ(阿修羅)が蛇の頭を持ち、右側では神々が尻尾を持って引っ張り合って、山を回転させて海の中を掻き混ぜているのです。海に棲む生物はことごとく磨り潰され、海はミルク状になって、そこから太陽、月をはじめ不老不死の妙薬アムリタや女神アプサラス、そしてヴィシュヌ神の妃であるラクシュミーらが生まれてきたのです。海の中では魚たちが千切れてしまい、上部では女神アプサラスが踊っています。この踊りは現在でもアプサラダンスとしてカンボジアの伝統芸能となっています。とにかく細かな彫刻であり、人々の表情までも細かく描かれているのは驚異ともいえるでしょう。
人々の表情までも描かれた細かな彫刻
アプサラダンス
乳海攪拌図

「乳海攪拌図」で描かれるヒンドゥー教の物語

この物語はヒンドゥー教の物語であって、インドの古代叙事詩「ラーマヤナ」や「マハーバーラタ」の中に描かれています。アンコールワットはもともとヒンドゥー教の寺院であったことがここからもわかります。
 
スワンナブーム国際空港の立体模型
このモチーフはアンコールワット寺院ばかりでなく、アンコールトムに入る城門の一つ「南大門」やその他のいくつかの寺院でも立体彫刻を見ることができます。
また、タイのバンコクのスワンナブーム国際空港の中には非常に精巧に作られた立体模型がありますので、これをご覧いただければ乳海攪拌がよく 理解できるでしょう。


次回は第18回 フランス・コールマールのウンターリンデン美術館をご紹介します。お楽しみに!
次回更新予定:7月29日(水)

東京支店:中屋雅之


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