2018年11月26日更新

中国少数民族の地・雲南省

複雑な地形がつくった 多様な民族が暮らす雲南

現在雲南省に暮らす24の少数民族は、チベット=ビルマ語族、チワン=トン語族、モン=クメール語族、ミャオ=ヤオ語族など様々な語族に分かれます。民族衣装も多様で、鮮やかな織や刺繍に銀の飾りを縫いこんだ衣装やポンポンを付けた頭飾り、帽子や笠のような被り物など様々。彼らの祭りに足を運ぶと、こうした衣裳をまとった人々を目にすることができます。

雲南省に少数民族が多数暮らしているのは、その地理的な条件が理由のひとつに挙げられます。中国の南西部、西はミャンマーと、南はラオス、ベトナムと国境を接し、東はチワン族の暮らす広西チワン自治区と、ミャオ族やトン族の住む貴州省が、北は四川省とチベット自治区に接します。省の面積は日本の総面積より一回り広い約39万平方キロで、その約9割以上が高原から山岳部と起伏に富んでおり、しかも気候は標高500メートルの亜熱帯気候から3000メートルを越す寒冷の高山地帯と多様なのです。その山や谷の隙間に平地、あるいは壩子(パーツ)とよばれる盆地がいくつも点在し、そこに様々な民族が町や集落をつくって暮らしてきました。

しかし辺境にあって辺境でないのが雲南の最たる特徴のひとつと言えましょうか、彼らは隔絶世界に暮らしているわけではありません。国境を成すイラワジ川、あるいは南部ラオスやベトナムとの間に流れるメコン川は人や物資が主要な「街道」でもありましたし、チベットやネパール、あるいはベトナムやミャンマーを経由してインドへ抜ける道は西南シルクロードとして紀元前数百年頃にはすでに主要な街道のひとつとなっていました。


西南シルクロードの町・大理 大国家を築いたイ族、ペー族
西南シルクロードの要衝として発展した町のひとつが大理で、ここを都として雲南の民族による南紹国、大理国が興りました。南紹国は8世紀に興り、雲南の民族の中でも最大といわれるイ族の祖先が築いた国といわれます。 その後937年に興ったのがペー族の国、大理国でした。「白(ぺー)族」と書くように、白を尊い色とする民族。白を基調とした女性の長ズボンや上着、青い縁取りの前掛けはかわいらしいものです。

大理国は1276年にモンゴルのフビライ・ハンにより滅ぼされ、以後雲南省は中国に組み込まれることとなりますが、大理の町ではイ族やペー族、漢族の文化の融合した独特な風情が楽しめます。


東南アジア民族のふるさと シーサンパンナのタイ族・ハニ族
雲南省のなかでも最深部といわれるラオス、ベトナム国境付近の町シーサンパンナ(西双版納)は、東南アジアとの関連の濃い地。深い山岳に張り付くような手つかずの熱帯雨林に水田、棚田の広がる風景と、そこに民族衣装をまとって暮らす人々の姿はアジアの桃源郷ともいえ、1980年代にこの地域が初めて外国人に開放されて以来、エキゾチックな魅力が注目を浴びています。
行政名を「シーサンパンナ・タイ族自治州」というように、ここに暮らすタイ族は東南アジアのタイ王国やラオスなどに通じる民族で、地名もタイ語の「シップソーンパンナー(12の千の田んぼ)」が転訛したものです。住居には熱帯地方でよく見られる高床式で、敷地内には精霊ピーを祭る祠もあるなど、実にタイ的です。町中にはタイやミャンマー、ラオスを思わせる上座部仏教の寺院や金色のパゴダなどを目にすることができます。4月には水かけ祭りも行われ、食事も酸っぱ辛い料理が多いなど、タイと共通する文化は多く、東南アジア側から見ると「自身の民族のルーツの地」と考えられるというのも頷けます。

もうひとつ、シーサンパンナを代表する民族がハニ族です。元陽を中心に広がる見事な棚田は雲南の絶景としてフォトジェニックな魅力ともども多くの人をひきつけます。

この見事な棚田をつくったのがハニ族。7世紀頃にシーサンパンナに現れ、先住のタイ族から水田耕作を学び、標高1500メートルの地に1300年の年月をかけてこつこつと棚田をつくり暮らしてきたのです。
またハニ族はこの地の特産品として欠かすことのできない、プーアール茶の栽培にも携わってきました。彼らが「茶と米をつくる山地系民族」といわれるゆえんです。シーサンパンナでつくられるプーアール茶は非常に高価なものとして、チベット産の馬と交換されたことから、シーサンパンナから大理を経てチベットへ向かう道は「茶馬古道」と呼ばれるようになりました。この茶馬古道は雲南に富をもたらす主要な交易路で、ここでつくられる茶があったからこそ、雲南は地域としての独自性を維持することができたのかもしれません。

雲南省の町や田園風景、祭りには彼らの伝統的な生活文化が息づいています。ぜひ足を運び、その姿と風景を目にしてみてください。

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主な参考文献
■『雲南の多様な世界』(著/栗原 悟 大修館書店 2011年)
■『中国56民族手帖』(著/松岡 格 マガジンハウス 2008年)
■『雲南の少数民族』(中国雲南人民出版社・編 日本放送出版協会 1990年)
■『中国西南の少数民族│文化をさぐる旅』(著/古島琴子 サイマル出版会 1987年)
■『西南中国の少数民族』(著/鈴木正崇・金丸良子 古今書院 1985年)
■『雲南・少数民族の天地│中国の秘境をゆく』(NHK取材班 日本放送出版協会 1985年)