2016年12月7日更新

海洋ロマンを刺激する帆船、その歴史を辿って(前編)

空をひとっ飛びする飛行機はたいへん便利な乗り物であり、島国である日本に暮らす私たちにとってはなくてはならない移動手段です。その一方で、大海を航行する船に憧れを持つ人は少なくありません。とりわけ帆船は、海洋ロマンを大いに刺激してくれます。

500年前、1000年前と比べて大陸や地域、港の風景は変わっても、太平洋や大西洋のまっただ中の風景は変わりません。朝日や夕日を浴びる帆船は帆の影を水面に写し、夜、波の静かな音を聞きながら満天の星を見上げれば、遠い昔日の冒険心溢れる船乗りの郷愁を感じるかもしれません。今月は、ヨーロッパの帆船についてその歴史をほんの少し振り返りつつ、大海原で潮風を受けて航海する帆船に思いを馳せてみました。
 
200隻以上の帆船が集まるという ロストックの帆船パレード
世界最大級の帆船パレードと帆船スターフライヤー号

飛行機による高速移動の海外旅行が一般的になった現在でも、大航海時代から大帆船時代を経た海洋ロマンと結びついたクルーズは根強い人気を誇ります。さらに近年ではクルーズファンの間では、とりわけ帆船クルーズが憧れの的となっています。

ドイツ北部のかつてのハンザ都市ロストックで毎年8月に開かれる帆船パレード「ハンザ・セイル・ロストック」は、200隻以上の帆船がヨーロッパ各地から参加し、世界中から100万人以上が集まる一大フェスティバルです。期間中、次々と港に姿を見せる大小様々なタイプの帆船は圧巻。2013年のハンザ・セイルにも200隻以上の帆船が参加を表明しており、現段階で19世紀建造の帆船が10隻以上、全長100メートル以上の大型帆船は4隻が参加を予定しています。なかでも目玉は19世紀の快速帆船(クリッパー)を再現したスター・クリッパーズ社のスターフライヤー号(2300総トン、全長115メートル)です。

昨年に引き続き2度目の参加となるスターフライヤー号(1991年進水)は、4本マストに16枚の帆を掲げたその優美な姿が人気です。大海原では帆船時代そのままに潮風を受けて帆走し、補助エンジンの使用は出入港時や悪天候の際に限定しています。風をいっぱいに受けた真っ白な帆を掲げて航海する気品溢れる姿はクルーズファンの憧れの的。船内は快適な居住性が保たれ、センスの良いエレガントな調度品とともに、チーク材やマホガニーをふんだんに使った居心地のよい上品な空間が広がります。乗客定員数は170人と大型クルーズ船にはないアットホームな雰囲気も魅力です。
 
スターフライヤー号
帆船の歴史6000年と南方船と北方船

帆船の歴史を簡単に振り返って見ましょう。大英博物館所蔵の陶磁器コレクションには、紀元前4000年頃、あるいはそれ以前のものとして、エジプトの陶器に帆のある船の絵が描かれた壺があり、帆船の歴史の長さを物語っています。現存する最古の船のひとつと考えられているのが、エジプト・ギザに保存されている「太陽の船」です。川舟として実際に利用されていたかは不明ですが、クフ王のピラミッド周辺で発掘され、紀元前2550年頃建造と推測されています。この船の材質にはレバノン杉が用いられていたことから、この時代すでにエジプトとレバノンの間で東地中海における海上交易が行われていたことがわかります。

記録に残されているものでは、紀元前1600年頃、エジプトのハトシェプスト女王の船がプント(北ソマリア付近)まで航海したとテーベ神殿に描かれています。女王の船の中央にはマストがあり、追い風に有効な横帆(おうはん)が掲げられています。櫂(オール)があり、船尾の舷側(船の側面)に2本の櫂状の舵を装備しています。

時代は下り、地中海の覇権を取った海洋民族、古代ギリシャ(紀元前2500年~紀元前4世紀頃)、そのギリシャから船舶や航行技術を受け継いだ古代ローマ(紀元前8世紀~395年東西分裂)の時代を経て、ヨーロッパの船舶・航海技術は発達していきました。

ヨーロッパの帆船は中世に入る頃に、その特徴と活躍の場から南方船と北方船という2つの形式が独自に発展していきました。南方船は地中海を制していたローマの商船にその起源を見ることができ、北方船はヴァイキングの船にその起源を持ち、いずれも独自に発展していきました。

海洋ロマンを刺激する帆船、その歴史を辿って(後編)はこちら

参考文献

■帆船 6000年のあゆみ
(著/ロモラ&R・Cアンダーソン 訳/松田常美 成山堂書店 2004年)
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■図説 船の歴史 (著/庄司邦昭 河出書房 2010年)
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Hanse Sail(http://www.hansesail.com/)