2016年12月2日更新

クラシックファンの憧れ ヨーロッパの名コンサートホール

クラシック音楽の本場ヨーロッパの名だたる都市には、歴史あるコンサートホールがあります。そこで奏でられる音楽の素晴らしさは言うまでもありませんが、その時代の粋を集めたホールは、観るだけでも価値のあるものばかりです。クラシックファン垂涎のホールをまとめて紹介しましょう。


ウィーンフィルの本拠地 楽友協会「黄金のホール」
 
ウィーンフィルの本拠地、楽友協会                                 ©オーストリア観光局

クラシック音楽の聖地ともいえるオーストリア。その首都ウィーンには、この国を代表するオーケストラ、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団があります。このオーケストラが本拠とするのが、「楽友協会」です。楽友協会は、ウィーンを本拠とするクラシックの団体の名であるとともに、その本部が置かれている建物の名前でもあります。

建物は1870年に建てられました。革命の気運が鎮まりつつあった当時のウィーンには、高まる音楽人気にふさわしいコンサートホールがなく、楽友協会は、時の皇帝フランツ・ヨーゼフ一世に建設を願い出ます。これに対し、皇帝は建設を許可しただけでなく、騒音に邪魔されないようにと、あえて大通りを避けた場所を敷地として与えました。設計を手がけたのはデンマーク人の建築家テオフィール・ハンセン。こうして3年の月日をかけてウィーンを代表するコンサートホールが完成したのです。

ギリシャ・ルネッサンス様式の建物内には、主に2つのホールがあります。ひとつ目は2000名余りを収容する大ホール「グロッサー・ザール」です。アポロとミューズが描かれた天井、梁を支える女性の美しい立像など、金の装飾の施された直方体のホールは壮麗そのもの。また、その音響には、建設当初から賞賛の声が寄せられました。 「黄金のホール」の通称は、内装の絢爛豪華さと、音響の素晴らしさから生まれたものです。

ウィーンフィルハーモニー管弦楽団が新年に開催する「ニューイヤーコンサート」は、世界中のクラシックファンが楽しみに待つ毎年恒例のイベントで、コンサートの模様は、この素晴らしいホールから全世界にテレビ中継されています。

もうひとつのホールは、「ブラームス・ザール」の名が付いた小ホールです。楽友協会のメンバーだったブラームスは、1872年から3年間、協会主催のコンサートで指揮を執るなど、協会に大きな貢献をしました。この功績を称え、ブラームス自身が自らのピアノ作品の初演を行ったこともある小ホールに、後年その名が冠されたのです。約600人収容のホールは、ステージの後ろでも演奏が聞ける造りです。1996年には室内楽専用ホール、2004年には地下にさらに4つのホールが造られました。


プラハの春音楽祭の舞台は 二人の偉大な音楽家に縁
 
プラハ市民会館の中にある、スメタナホール

スメタナ、ドヴォルザークなど、世界に名だたる作曲家を輩出してきたチェコの首都プラハにも、素晴らしいコンサートホールがあります。

最も名の知れたホールといえば、大作曲家スメタナの名を冠した「スメタナ・ホール」でしょう。アールヌーヴォーの代表建築であるプラハ市民会館の中のホールのひとつで、コンサートホールとしてはプラハ最大です。毎年スメタナの命日である5月21日に、その代表作品『わが祖国』でスタートする「プラハの春音楽祭」のメイン会場となり、世界中からクラシックファンが集まります。

プラハの春音楽祭の会場として、もうひとつ注目すべきが、「ルドルフィヌム」です。もともと、音楽や美術の促進のために建てられたもので、「芸術家の家」とも呼ばれ、ネオ・ルネサンス様式の美しい建物は、コンサートホールとギャラリーの複合建築となっています。「ドヴォルザーク・ホール」と名付けられたホールは、ヨーロッパのコンサートホールの中でも最古のひとつで、その音響効果の素晴らしさでクラシックファンにはよく知られています。1885年の杮落し公演では、ドヴォルザークの曲が演奏されました。ちなみに、ルドルフィヌムの名は、この公演の主賓であったオーストリアのルドルフ皇太子に敬意を表したものとされています。  チェコを代表するオーケストラ、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団が本拠とするホールであり、プラハの春音楽祭でも主要な開催ホールの一つとなっています。


音楽の国ドイツが誇る 個性豊かなホール

「音楽の国」として忘れてはならないドイツのコンサートホールもいくつか紹介しておきましょう。
バーデンバーデン祝祭劇場
まずは、この国の春の風物詩である「イースター音楽祭」のメイン会場となる「バーデンバーデン祝祭劇場」です。建物自体は、収容人数2500席の現代的な美しいコンサートホールですが、建物の正面に当たるファサードはかつての鉄道駅を転用したものです。新古典主義の様式と前衛芸術が融合した、ユニークな建物といえるでしょう。  ヨーロッパ第2の大きさを誇るオペラハウスであるとともに、世界一と評される最新の音響設備を有し、優れた音響で評価を得るホールであり、三大テノールの一人、プラシド・ドミンゴをはじめ、名だたる音楽家がこぞってこの舞台に立っています。

もうひとつが、ベルリンの「フィルハーモニー」。ベルリンを訪れた旅行者が「フィルハーモニーに行くにはどうしたらいいか」と尋ねたら「練習だ」と言われた、という笑い話があるように、オーケストラの名と混同されがちですが、「フィルハーモニー」は、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が本拠とする建物の名です。

建築家ハンス・シャルーンの設計によるこの建物は、「戦後の現代型ホールの原点」ともいわれる存在で、ホール断面の形状を模したモダンな外観もさることながら、ホールの階段や客席テラスの不規則な配置も画期的で、1963年の落成時には先駆的な建築として注目されました。近代的なコンサートホールでは初めて、客席が舞台を囲むスタイルを取り入れたことでも知られ、このセンターステージ型はその後、世界中で真似されています。杮落としは、カラヤンが指揮棒を振ったベートーベン『第九』のコンサートでした。  音楽ファンでなくとも一度は訪れてみたい夢の舞台。その歴史も含め、五感で味わいたい場所でもあります。

モダンなフィルハーモニー
ベルリンフィルの本拠地
【参考文献】
■『ウィーン楽友協会二〇〇年の輝き』(著/オットー・ビーバ、イングリード・フックス 訳/小宮正安 集英社 2013年)
■『世界最高のオーケストラ   ベルリン・フィル ─2時間でわかる─』(著/アンネマリー・クライネルト訳/最上英明 アルファベータ 2007年)
■『世界の建築・街並ガイド5』(監修/川向正人 エクスナレッジ 2012年)
■『ヨーロッパ音楽旅行案内 改訂新版』  (著/福原信夫 編/東亜音楽社 音楽之友社 2000年)
■ウィーンフィルハーモニー管弦楽団オフィシャルサイト
■ バーデンバーデン観光局オフィシャルサイト