2016年1月22日更新

地の果ての聖地・サンティアゴ巡礼(後編)

前編はこちらから

聖なる都市サンティアゴの誕生    

あらゆる人々が目指す聖地、サンティアゴ・デ・コンポステーラ。9世紀初頭にヤコブの遺骸が発見されると、当時この一帯を治めていたアルフォンソ二世はサンティアゴ教会を建設し、教会に隣接する領域を囲んで「聖なる空間」としました。これが、中世都市サンティアゴの原型です。  
吊り香炉
サンティアゴ大聖堂
現在、この場所は小高い丘になっており、旧市街の中心にあるカテラドル(大聖堂)に向かって巡礼路が続きます。人々がまず目指すのが、カテラドルを真正面から拝むことのできるオブラドイロ広場です。カテラドルでは毎日12時から、巡礼者たちを迎えるミサが行われています。18世紀以降正面入り口となったファサードをくぐり、栄光の門を抜け、大聖堂の中へと入っていく巡礼者たち。栄光の門の中央支柱にあるサンティアゴの像の下に手を当て、巡礼を終えたことを告げるのが習わしです。過去多くの人々を迎えたことを示すかのように、皆が手を押しあてるその支柱は、磨り減って指の形にえぐられています。

ミサの終盤になると、最大の見せ場である巨大な吊り香炉(ボタフメイロ)が現れ、力強く南北に振られます。パイプオルガンの演奏とともにボタフメイロが高く揺れる様は非常に荘厳な気持ちにさせてくれます。そもそもこの香炉はかつて、長旅を続けた巡礼者の体臭を消すために使われていたといいます。心地よいほのかな匂いは、今も心と体を癒してくれることでしょう。
レオン・パラドール
巡礼に支えられた中世都市    

ほかにも、巡礼の道の途中には、魅力的な街がたくさんあります。巡礼路の中でも大都会といえるのが、アルランソン川の両側に広がる中世の城下町ブルゴスです。新市街には高層マンションや工業地帯があり道幅も広いものの、古い建物をそのまま生かした旧市街に入ると、道も細く入り組んでいます。川沿いの道を歩くと見えてくるのが、14世紀に街を囲っていた市壁に造られたというサンタマリア門。この門を飾る多くの彫刻も見どころです。門をくぐると、世界遺産にも登録されている荘厳なカテラドルが目に飛び込んできます。  

ブルゴスと同じく大都市で、巡礼路の中継点とされているのがレオンです。かつてレオン王国の都として繁栄し、イスラムの侵攻に対するキリスト教勢力の中心地でした。レオンには、ロマネスク建築を継承するサン・イシドロ寺院、ゴシックの傑作であるカテラドルなど、多くの歴史的遺産があります。最盛期には17の巡礼宿があったとされていますが、中で最も有名なのが現在5ツ星のパラドール・デ・レオンになっているルネッサンス様式の旧サンマルコス修道院です。100メートルにわたる建物の正面の豪華なプレテスコ建築の浮彫は見事なもの。また、レオンには、バルやレストランが集まるバリオ・ウメドと呼ばれる地区があり、古い佇まいを残す旧市街のなか、地元の人々が食事に出かけ、バルを堪能しています。店自慢の一品料理やワインを味わうのも楽しみです。  

ブルゴス、レオン、そしてサンティアゴは、いずれもサンティアゴ巡礼の盛行を背景に、成長を遂げてきた都市です。それぞれ歴史は異なりますが、巡礼に支えられた中近世の観光都市の典型といえるでしょう。また、巡礼路の道沿いには、川にわたされた石造りの橋、味わい深い村など、風情ある景観が続きます。歩くことでキリスト教文化、芸術、美しい景色に出会い、そして自らを見つめ直すことができるのが、スペインのサンティアゴ巡礼なのです。
 
アストルガの司教館
巡礼路とガウディ

レオン県には2つのガウディ作品があります。レオンのサントドミンゴ広場にある「ボティネスの家」は地元産の花崗岩を使用したネオゴシック様式の建物。現在は銀行として使われています。もうひとつはアストルガにある司教館です。まるでお城のようなデザインは当時としては斬新で物議をかもしたとか。



 
主な参考文献
スペイン巡礼史 「地の果ての聖地」を辿る(関哲行著 講談社現代新書 2006年)
聖地サンティアゴ巡礼 世界遺産を歩く旅
(NPO法人日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会  ダイヤモンド社 2010年)
スペイン巡礼の道を行く 世界遺産カミノ・デ・サンティアゴ(米山智美著 古財秀昭写真 東京書籍 2002年)
ぶらりあるき サンティアゴ巡礼の道(安田知子著 芙蓉書房出版 2006年)