2013年10月18日更新

フランスの宮廷料理と郷土料理(後編)

ガレット ©ana.frança
前編はこちらから

高級な格式ばった宮廷料理だけがフランス料理ではありません。各地の特産品を使い、伝統的な料理法で作る郷土料理の数々は、フランスの食文化の大きな特徴のひとつでもあります。フランスは大西洋と地中海に面し、スイスやスペインの国境沿いには山脈が横たわり、いく筋もの川が流れています。温暖な気候風土に恵まれた肥沃な土地は豊かな農産物や畜産物、そして水産物を育みます。パリをはじめ、フランス各地に立つ庶民のマルシェ(市場)に行けば、新鮮な生鮮食料品から多彩なワインやチーズがずらりと並び、この国の豊かさを実感するはずです。

フランス北西部、荒涼とした雰囲気すらある大西洋岸のノルマンディー地方とブルターニュ地方。世界遺産に登録されるモン・サン・ミッシェルやサン・マロといった人気の観光地がある地域です。ここではリンゴの栽培が盛んで、リンゴのお酒シードルや蒸留酒カルヴァドスが有名。また沿岸部は干満の差が激しいため、牡蠣やムール貝、ホタテ、エビ類がふんだんにとれ、ヒラメや鰯、鯖などの魚類の水揚げも豊富です。沿岸部の潮風を受けた牧草を食んで育った仔羊の肉は潮の風味がついているといわれています。

牧畜業が盛んなノルマンディー地方はバターやクリームをふんだんに使った料理が特徴です。カマンベールチーズの故郷としても知られています。舌平目のノルマンディー風は野菜とシードルで作ったスープで舌平目を煮て、バターと生クリームをふんだんに使ったソースを添えたもの。ムール貝のノルマンディー風はワインで蒸したムール貝を生クリームのソースで食べます。シードルで茹でた小エビ、ムール貝の酒蒸しなどあっさりとした料理も。一方、ブルターニュ地方は古くからそば粉を主食としており、ガレット(そば粉を使ったクレープ)は手軽に食べられる食事のひとつ。サーモンや卵、ハムなどを入れて食べます。
 
アルザスの伝統家庭料理ベックオフ ©notfrancois
ブルゴーニュの煮込み料理
リヨンのブションで食べる家庭料理 


フランス中東部のブルゴーニュ地方。ボルドーと並ぶワインの産地として有名で、ロマネ・コンティ、ボジョレやシャブリはここブルゴーニュ地方のワインです。一大ワイン産地ブルゴーニュは美食の地としてもたいへんよく知られ、特産のワインに合った郷土料理が発展しました。ブッフ・ブルギニョンは、ブルゴーニュ風牛肉の赤ワイン煮込み。時間をかけてブルゴーニュ産ワインで煮込んだ軟らかな牛肉はコクのあるソースがまったりと絡んだおふくろの味です。珍味エスカルゴもこの地方の郷土料理。食用カタツムリをバターで風味付けしてにんにくとパセリを加え、オーブンで焼き上げます。かつてのブルゴーニュ公国の首都だったディジョンはマスタードが特産品。様々な種類のマスタードは肉料理の風味付けによく使われています。

ブルゴーニュからローヌ・アルプ地方へ南下しましょう。ソーヌ川とローヌ川が合流する辺りにあるのがフランス第二の都市リヨンです。世界遺産の旧市街はルネッサンス様式の建築物が軒を連ねる美しい町並みが今も残ります。豊かな川の恵みを受けて栄えたリヨンはミシュランの星付きレストランが数多く点在する美食の町として知られています。郷土料理には、穀物だけを餌として放し飼いにして育ったブレス産鶏肉、クネル(肉や魚のすり身を茹でてスフレにして焼いたもの)、アンドゥイエット(腸詰めのソーセージ)、リヨン風サラダ(ポーチドエッグやベーコン入りサラダ)、川カマス料理などがあります。こうした料理は、ぜひともリヨンならではのブションと呼ばれるビストロ(大衆向けのレストラン)で味わいたいもの。ボリューム満点の家庭料理を楽しみましょう。

地中海に面したフランス南部のプロヴァンス地方も特筆すべきグルメの地。さんさんと降り注ぐ太陽の恵みを受けた新鮮な野菜と地中海の魚介類をふんだんに使った料理を満喫しましょう。漁港として古くから栄えたマルセイユのブイヤベースはとりわけ有名です。水揚げされた魚介類をハーブとにんにくの風味を利かせ、黄色のサフランを入れて煮込んだスープです。受け継いだ伝統のレシピを守っているからこそ、店ごとにレシピが少しずつ異なるのだそう。

そしてドイツと国境を接するアルザス地方はドイツ色が料理にも反映されています。伝統的な家庭料理ベックオフは、パン屋の窯で作られたという煮込み料理。この地方名産の白ワインに浸けた肉(豚、牛、羊など)と野菜やジャガイモを鍋に入れて窯で蒸し焼きにしたものです。また、スペインと国境を接するバスク地方は、トマトやピーマンとにんにくを炒めたピペラードに地元産のバイヨンヌハムを添えたものが知られています。

このほかにも、フランスには郷土料理や伝統料理、特産品が各地にあります。訪れた地の名物を探しにぜひフランスへお出かけください。