視察レポート

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2021年01月31日

街道をゆく 中山道視察レポート①(蕨、深谷)

東京支店 福島伸彦

12月の下旬に本社・プランニング事業本部の吉田と2名で中山道の日本橋から高崎までの視察をしてきました。かつての大幹線道路・中山道は、江戸の5街道のひとつ。全長534km、途中に69の宿場が置かれ大いに栄えました。中山道と聞くと山間部の木曽路、特に奈良井宿、妻籠宿などが有名ですが、今回はほとんど知られていない関東の中山道の町々を高崎まで巡ってきました。その中でも特に印象に残った、蕨(わらび)宿と深谷宿をご紹介します。

江戸近郊で最大の宿場町、蕨(わらび)宿

旅の起点、日本橋から約20km、埼玉県南部に位置するのが蕨宿です。現在の蕨市は面積5.11平方キロメートル、人口7万5千人の「日本で一番小さな市」「日本一の人口密度の市」として知られています。

中山道が人と物の大動脈であった江戸時代も蕨宿は大いに栄え、天保14年(1843年)の記録によれば、本陣2軒、脇本1軒、旅籠23軒、家数430軒。江戸近郊では浦和宿や大宮宿をしのぐ大きな宿場として栄えていました。繁栄の礎となったのは、綿織物産業。特に「双子織」に代表される綿製品は良質で安価であった為評判となり、蕨宿は織物の町として飛躍的に発展しました。蕨市の旧街道沿いを歩くと、格子戸の家や蔵造りの古い建物が残されており、宿場町風情を今に伝えています。他にも岡田加兵衛本陣跡、歴史民俗資料館が残されており、町の人々が旧跡を大切に守り、残していることが伝わってきます

かつての中山道の歴史と文化を伝える蕨の歴史民俗資料館。写真は長寿を願う庚申塔(こうしんとう)
蕨の歴史民俗資料館は双子織などかつての産業も伝えます。

煉瓦造りのレトロな町並み、深谷宿

深谷は利根川と荒川に挟まれた肥沃な大地に恵まれ、昔から様々な農作物が生産されてきました。今では生産量日本一を誇る「深谷ネギ」が有名ですが、ネギの生産が本格化したのは明治30年(1897年)頃からで、それ以前は染料となる藍、及びその加工品である藍玉(あいだま)の生産が盛んでした。2021年のNHK大河ドラマの主人公であり、新1万円札の顔になる渋沢栄一もそんな深谷の藍農家の出身。

現在の深谷市は煉瓦造りのレトロな町並みで知られていますが、それも500近くの企業を育てた渋沢栄一が設立した日本初の機械式煉瓦工場があった為で、他の宿とは町並みの趣が異なります。旧街道沿いに残された造り酒屋の煉瓦建築にその面影がよく残っています。

深谷の現役の造り酒屋菊泉。煉瓦造りの煙突があります。
深谷駅前には郷土の英雄渋沢栄一の像があります。
深谷のかつての造り酒屋・七つ梅酒造。跡地はカフェや本屋などに活用されています

渋沢栄一生誕の地「中の家(なかんち)」

渋沢栄一の生家「中の家」は代々農業を営んでいましたが、養蚕や藍玉づくりとその販売、更に雑貨屋や質屋業も営み大変裕福で、「名字帯刀(みょうじたいとう)」が許されていました。屋根に「煙出し」と呼ばれる天窓のある典型的な養蚕農家の形を残す大きな主屋を中心に藍玉の取引に使われていた副屋、そして米蔵や藍玉蔵、道具蔵、宝蔵と使い分けられていた4つの土蔵が建ち、豪農の形をよくとどめています。

幕末から明治にかけて、時代に翻弄されながらも高い志を持ち、近代日本のあるべき姿を追い求め、挑戦し続けた渋沢栄一。勉学や剣術に励み、藍の商売にも従事していた、「日本資本主義の父」の原点がここにあります。

生家には立派な土蔵が4つもあります。
生家の大きな主屋の屋根には「煙出し」と呼ばれる天窓があります。
渋沢栄一の生家「中の家」。立派な門構えが目を引きます。

渋沢栄一の晩年の住処「誠之堂(せいしどう)」

「誠之堂」は1916年、渋沢栄一の喜寿を記念して、頭取を務めていた第一銀行の行員の出資により建てられたもので、そこからも深く敬愛されていたことが伺われます。「西洋風の田舎屋」にして欲しいという希望に基づき、当時の建築界の第一人者、田辺淳吉が設計したもの。当初は世田谷区瀬田にあったものが平成11年に深谷市に移築されました。外観は英国農家風でありながらも、室内外の装飾に東洋的な意匠が取り入れられ、バランスよくまとめられています。ここでは是非ステンドグラスをご覧ください。中国風の珍しい題材で、漢代の貴人と演奏者などの人物像は渋沢栄一を貴人に見立て、喜寿を祝う情景であるとされ、なんともほのぼのとした姿で味わいがあります。

誠之堂の外には渋沢栄一が植樹した泰山木もあります。
渋沢栄一の晩年の住処誠之堂。外観はイギリスの田舎の家

今回ご紹介した蕨、そして深谷を訪れる旅がこちら。是非、ご検討ください。

街道をゆく 中山道六十九次の旅【7日間】

古くから江戸と京都を結ぶ大動脈として栄えた中山道と東海道。中山道は山間の厳しい道でしたが、道中の危険が少なく多くの参勤交代など要人の往来で利用されてきました。その宿場の数は六十九。宿場を辿っていくと、普段は高速道路で、また鉄道で通り過ぎていた街々にも隠れた歴史のロマンやエピソードがあることに驚かされます。特に幕末に京都から将軍家茂に降嫁した和宮の道中物語や、今年の大河ドラマでも話題の渋沢栄一の物語は、旅をより深みのあるものにしてくれることでしょう。もちろん江戸時代の旅人さながらに宿場に立ち寄りながら旅をしますが、沿道には赤城、榛名、妙義といった名峰や日本アルプスが聳え、景観も楽しめる行程です。

出発日:3月29日(月) 、 4月10日(土) 、 5月10日(月)
旅行代金:¥255,000

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