視察レポート

視察レポート

2021年03月11日

雅な風情が残る「柳都」新潟を歩く

プランニング 吉田義和

北陸の中心都市新潟。日本の大都市の中では奇跡的に空襲を免れ、明治、大正時代の建築が下町にしっかりと残ります。3月はじめ、春からの旅の打ち合わせに訪問することになり、せっかくだからと新潟の町を様々巡ってみました。運よく芸妓の舞も鑑賞することができ、かつて北前船で栄えた湊町風情を感じることができました。

まずは新潟日報メディアシップで新潟の町を俯瞰

新潟は信濃川と阿賀野川の間に出来た河口の町です。北陸を代表する2つの大河の河口にあることから広々とした平野が広がり、近代以降排水技術の発達によって肥沃な米どころに生まれ変わりました。河口部は江戸から明治にかけて北前船の風待ち港となり、大いに賑わいました。明治初期の10年間、新潟市が日本の人口第一位だったのは以前「町並み百選」でもご紹介させていただきました。現在の新潟の町は河口から少し内陸に入ったところに中心街がありますが、かつて賑わいを見せた「古町」は海岸線からすぐ。信濃川と日本海に挟まれた砂州の上に位置しています。新潟の町歩きを始める前に、新潟市の中心「万代シティ」にある新潟日報メディアシティビルに登ってみましょう。最上階にあたる20階は展望テラスとして開放されており、新潟の市内を一望できるのです。真下を流れる信濃川、そこに架かる萬代橋(今年築92年という新潟のシンボル的な橋)その先の古町と、砂丘の先にある日本海という独特な地形が一望できます。

新潟日報メディアシップ20階の展望台
新潟日報メディアシップから古町(旧市街)を望む

朝食は新潟のソウルフードを

新潟メディアシップの並びに、商業施設が並ぶ新潟の中心「万代シティ」があります。ショッピングモールや飲食店が多く、新潟きっての繁華街と言える場所です。その中心にあるのがバスセンター。新潟市郊外へのバスが頻繁に発着する交通の中心ですが、市民にとっては「食」を楽しむ場でもあります。最も有名なのが「バスセンターのカレー」です。バス乗り場の脇にある立ち食い蕎麦の店「万代そば」のメニューのひとつなのですが、訪れる人のほとんどがカレーを注文するという人気ぶり。私も朝8時の開店と同時に訪問しましたが、すでに10人ほどが並んでいました。独特の黄色いとろみの強いカレーは、とんこつスープをベースに作っているのだそう。マイルドな外見ですが、スパイスも効いていて、新潟っ子がやみつきになるのも分かる味です。

新潟のソウルフードを生み出す「万代そば」
人気の「バスセンターのカレー」

市街のはずれで見つけた素朴な朝の風景「白山朝市」

地方の町で人々の暮らしや食、風土を知るうえで「朝市」を訪れるのはとても面白いものです。販売している野菜や漬物などの手作り料理などを眺めていると、色々な発見があります。前回訪れた盛岡の神子田(みこだ)朝市(詳しくは町並み百景や視察レポート盛岡へ)に続き、新潟にも朝市がないものか、と探していましたら、新潟から越後線で一駅の白山駅にあることを知り、早朝に訪れてみました。ほっかむりをした30人ほどの地元のおばあちゃん達が野菜や果物、漬物などを販売しています。3月上旬の新潟はまだまだ寒かったですが、ふきのとうなども売られていて春の気分を先取りすることができました。やはり新潟といえば米どころ。朝市にも多くのお米が売られているのも特徴的でした。

白山駅の近くで行われている素朴な朝市
地元の新鮮な野菜や果物、米などが並びます

「柳都」新潟を今に伝える芸妓の雅に触れる

新潟では新潟市の観光協会の方と今後の旅の打ち合わせを行ったのですが、「ちょうど午後に芸妓の舞の体験があるのでどうですか?」と嬉しいお話をいただきました。北前船の湊町として栄えた新潟は、花柳界の文化が栄えた町。現在も多くの芸妓さんがお座敷に呼ばれています。芸妓あそび、というと贅を尽くしたあそび、というイメージがあるかもしれませんが、新潟ではちょっとした祝い事や慶事などにも呼ばれてきたため、市民にも親しまれている文化です。今回は古町の一角にある料亭「割烹 蛍」にて芸妓の舞を鑑賞しました。スタッフによる新潟の歴史解説の後、お姉さま方の三味線にのせて2人の芸妓さんが舞を踊ります。北前船の船頭から伝わったという「新潟おけさ」や北原白秋作詞の「新潟小唄」など、湊町らしく船にまつわる歌と共に雅な舞が繰り広げられました。舞だけでなく、簡単な芸妓あそびの体験や、衣装の説明など充実した内容でした。

新潟民謡の音とともに雅な舞を見せる芸妓さん
芸妓さん自ら衣装や髪飾りの説明も。

和洋様々な建築が楽しめる 古町そぞろ歩き

信濃川と日本海に囲まれた新潟の下町である「古町」は散歩も楽しいところです。まずは新潟の「起点」と言われる新潟総鎮守、白山神社を訪問しました。北前船の守護社でもあり、本殿には150年前の湊町の様子が描かれた北前船大絵馬が奉納されています。境内には新潟の豪商、斎藤家の邸宅を保存した燕喜館や、明治時代の議会をそのままに残した新潟県政記念館など見どころも豊富です。神社の正面から門前町として歴史深い古町通が続きます。かつては道筋ごとに堀があり、柳と桜が交互に植えられており、季節ごとの彩りが美しい町並みだったそうで、その美しさから新潟は「柳都」という愛称で親しまれるようになりました。交易の中心として栄えた新潟らしく、欧風バロック調建築の新津記念館や近代和風建築の傑作といわれる旧齋藤家別邸など、大正から昭和期に建てられた建築も多く残り、散策も楽しいエリアです。

旧齋藤家別邸では雛飾りが飾られていました
古町糀研究所では飲料から化粧品まで糀を活用した商品を販売。女性に人気です。
北前船の時代を物語る白山神社の大船絵馬
新潟県政記念館
街角にある歴史案内も嬉しい

新潟で楽しむ燕三条職人の”技”と”食”

上越新幹線で新潟のひとつ手前の駅、燕三条。通常の観光ではあまり降りる機会の少ない駅かもしれませんが、ワールド航空では国内旅行を始めた当初からとても注目している町です。古くから「和釘」の生産が盛んだったこの地は、現在金属洋食器の国内シェア90%を誇る職人の町。皆さんが普段気づかずに利用しているカトラリーも実は燕産、というものが多いのではないでしょうか。そんな燕三条の町で地元の食材と、職人の粋を融合したレストランが話題を呼んでいます。「Bit」という名のイタリアンです。この店の代表メニューが燕鎚起(ついき)銅器の老舗玉川堂の食器と料理をあわせた「玉川堂コース」。食材はもちろんカトラリーも燕三条のものにこだわった、新潟を五感で感じられる逸品です。燕三条が本店ですが、新潟市内や東京の銀座にも支店がありますので、ぜひお近くを訪れた際は訪れてみてください。

玉川堂の食器と食が融合したBitの料理
新潟産の新鮮な果物や乳製品を使ったデザート。

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