歴史ある風景
歴史ある風景
2021年05月11日
埼玉・熊谷とシチリア島 庶民による庶民のための彫刻が花開いた時代
本社 プランニング事業本部:乗田憲一
彫刻でびっしりと埋め尽くされた寺社が北関東にみられることはご存じでしょうか。江戸時代、京都の桂離宮や竜安寺石庭のような「わびさび」の世界観があった一方で、実際は彫刻で埋め尽くされた寺社仏閣もよく好まれていました。
徳川家光が日光東照宮を建て替えた際、当時の最高峰の職人が集められました。この技法は関東各地に根付き、やがて仕事の分業化が進み、彫刻を専門に請け負う彫物師も現れました。これにより建築は大工が、彫物師がこれを装飾する文化が育まれました。そして彫刻が全面を埋め尽くすものも出てきました。
その極めつけが、埼玉県熊谷市に妻沼聖天山・歓喜院です。実はこれ国宝です。豪華絢爛の極みで、庶民の寄進によって建てられました。彫刻をよく見ると、囲碁をうつ神様とか、近利根川で魚を捕る漁師、凧揚げする子供たちなど題材が面白い。自分でお金を出すから自分好みの彫刻でと考えたのでしょうか。
これを見たときイタリア・シチリア島のシラク―サを思い出しました。大地震のあと町を復興するためにバロック彫刻を取り入れました。本来は教会を彩る華やかな宗教彫刻ですが、庶民の家に施された彫刻は違いました。柱上部には舌を出して笑っている人、噛みつきそうな悪魔などの彫刻がなされ、見上げた人が驚いたり、笑ってしまうような遊びがたくさんあります。これには神様もびっくりするかもしれません。
東照宮をかたどる高尚な彫刻技術も、日常生活の可笑しみに変えてしまう。庶民の逞しさは時代を越え、世界を越えるようです。
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