視察レポート

視察レポート

2022年09月30日

特別企画「遥かなる琉球」 第5回 沖縄視察レポート

2022年8月13日(土)~2022年8月17日(水):プランニング:吉田義和 東京支店 松本育美

最終回は鮮やかな沖縄の伝統手工芸に焦点をあててご紹介いたします

沖縄県だけで12品目。伝統的織物の宝庫です。

 沖縄県には16品目の国指定伝統的工芸品が登録されています。これは京都府や東京都に次ぐ多さで、沖縄がいかに歴史ある独自の手工芸を守ってきたかがお分かりいただけると思います。

中でも16の品目のうち12を占めるのが伝統織物です。沖縄では八重山、宮古や与那国など離島をはじめ、本島各地でも独特の織物が織られ、その姿を今に残しています。その発祥は14~15世紀頃、海洋貿易によってインドから東南アジア、そして琉球へと伝わった織りや染めの技術と言われています。沖縄を訪れたことのある方は、色鮮やかな琉球紅型(びんがた)の小物や織物のコースターをお土産店などでご覧になった方も多いのではないでしょうか。

沖縄伝統織物は沖縄を代表するお土産のひとつ
織物を利用した加工品も人気

 今回は、ぜひ伝統手工芸アート造りの現場訪ね、その奥深さに触れる旅をお届けしたいと、工房や話題のスポットを訪問して参りました。

東南アジアから琉球、そして日本へ。海のシルクロードを辿った絣(かすり)

 まず訪れたのが南風原(はえばる)です。空港にもほど近い南風原には、琉球絣(かすり)の伝統が残ります。町の琉球かすり会館周辺には、織物工房や糸繰り場、機織り機の工房などが多く残る一角があり、「琉球かすりロード」とも言われています。東南アジアから伝わった絣(東南アジアではイカット)の技術は、ここ琉球から江戸時代の日本各地に広まりました。今回ツアーでは機織りの町の工房を巡る特別ガイドツアーをアレンジしていただくことになりました。

かすり工房や機織り機の工房が並ぶかすりロード
ガイドとともにかすり工房を見学

2022年オープン! 話題の伝統手工芸スポットへ

 那覇近郊では話題の2つの新スポットを訪問しました。近年、沖縄の伝統手工芸の保存や後継者の育成が推進されてきていますが、その一環として今年オープンしたのが「おきなわ工芸の杜」と「首里染織館suikara」の2施設です。「おきなわ工芸の杜」は沖縄全土の伝統的工芸品を一度に展示。沖縄の伝統的工芸を理解するには最高の施設といえるでしょう。希少な久米島紬や与那国織なども間近に、そして実際に触れていただく事もできるよう展示されています。敷地には貸工房などもあり、新進気鋭の若手作家がその技術を磨く姿がご覧いただけます。担当の方とも打ち合わせし、実際のツアーでは旅の最初に訪れることで、まず手工芸の全体像に触れていただく解説をお願いしました。

沖縄各地の伝統手工芸が集まる「おきなわ工芸の杜」
沖縄各地の伝統的工芸を解説していただきます

 「首里染織館suicara」は琉球の王都首里にオープンした新施設。琉球貴族や士族の儀礼衣装として発展した首里織や琉球紅型の工房兼展示施設です。高貴な織物としてつくられた首里織には、沖縄各地の織物の技術が結集され、染め色、文様とも鮮やかで精緻なものが多いのが特徴。各地の織物に触れてから訪れると、よりお楽しみいただける施設です。

2022年4月にオープンした首里染織館suikara
色鮮やかな首里織を展示

可憐な花模様が特徴の読谷山花織(ゆんたんざはなうい)

 沖縄のリゾート地としても知られる読谷村には、15世紀頃から織られてきたと伝わる「花織」という織物が残ります。読谷村伝統工芸センターを訪れ、花織事業協同組合の理事長、又吉さんにお話を伺いました。現在はコースターや小物なども置いていますが、もともとは琉球王朝御用達の織物として首里の貴族と読谷の一部の人しか着ることの出来なかった貴重な織物で、細かな花模様を織り込むのが特徴。例えば「オージバナ(扇花)」が子孫繁栄、「カジマヤーバナ(風車花)」が長寿というように、花の模様によって意味が込められているそうです。

 伝統工芸センターでは花織に加え、木綿で追った細帯である「読谷山ミンサー」も伝えています。又吉さんには実際の機織り機でミンサー織の実演も見せていただきました。

花織を解説してくれた又吉さん
ミンサー織を実演していただきました

優美なる琉球漆器

織物と並び、琉球王朝の伝統手工芸として知られているのが琉球漆器です。中国から技法が伝わり、13世紀頃から作られ始めた琉球漆器は、漆器の製作を管理する貝摺(かいずり)奉行所が設置されるなど、琉球王朝によって保護されていました。螺鈿や沈金によって優美に細工された漆器は周囲の国にも珍重され、江戸期には薩摩藩によって徳川家康はじめ歴代将軍にも献上されてきました。そんな漆器を展示する漆芸専門美術館として日本で初めてオープンした浦添市美術館も訪れてみました。「沖縄本土復帰50周年 世替わり琉球漆器」展が開催されており、琉球王府で利用された漆器の数々が展示されていました。スペイン風の外観も一見の価値ありで、今回もいくつかのコースで立ち寄る行程としています。年に数回展示替えがありますが、2023年1月29日からは「色と形と文様と -漆器のいろは-」が開催。琉球漆器の芸術性をわかりやすくお楽しみいただけます。

5回にわたる視察レポートをお読みいただき、誠にありがとうございました。10月の視察報告会、そして1月にツアーで皆様とお会いできますこと、楽しみにしております。

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