視察レポート

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2021年03月10日

新選組の故郷 日野・八王子 視察レポート

東京支店 酒井康行

 日本各地の教養を深め、その土地に刻まれた歴史や文化の証人になる旅へ皆様を誘う人気のシリーズ「文化歴史塾+旅」。先日、発表されました春の特別編「武州多摩・新選組風雲塾」で訪れる場所やその周辺を巡って参りました。旅のご参考に、さらにはご自身で行かれる際にお役立ていただければ幸いです。

 幕末の京都にて「池田家事件」を筆頭に尊王攘夷運動の弾圧活動をした浪士隊として名高い「新選組」。戊辰戦争においては、鳥羽・伏見の戦いで敗北を喫した後に四散することとなり、甲州において新政府軍に敗れると、新選組は解散に至り、局長・近藤勇は斬首刑に処せられたのでした。
 新選組の舞台というと、やはり京都が有名ですが、実はこのたび視察した日野や八王子も新選組の故郷と申せましょう。
 日野は新選組副長にして箱根新選組局長を務めた土方歳三と、新選組六番隊組長を務めた佐藤彦五郎の生誕地でもありますし、土方歳三の義兄にあたる佐藤彦五郎が入門した天然理心流の道場があることでも知られています。この道場にて、近藤勇と土方歳三、さらに沖田総司は出会い、共に剣術を磨いたのでした。 
 また、後述の八王子には「千人同心」の屋敷がありました。日野にも千人同心は分布し、日頃は農業に従事していたため、農民の自分達でも徳川幕府の役に立ちたいと思う土壌が形成され、それ故に、日野の人達は幕府に仕える新選組にも協力的だったと考えられています。

都内で唯一残る江戸時代に建てられた本陣建物「日野宿本陣」

 今の建物は、嘉永2年(1849年)の大火で焼失してしまった主屋にかわるものとして建設されました。幕末に日野宿の問屋と日野本郷名主を務めていた佐藤彦五郎が本陣兼自宅として元治元年(1864年)から使用された建物です。
 大火をきっかけに自衛の必要を痛感した佐藤彦五郎は、八王子千人同心の井上松五郎から天然理心流を紹介され、近藤周助に入門し、自宅に道場も開きました。佐藤彦五郎は卓越した技量からか4年後には免許皆伝をとっています。

日野宿本陣の入口
本陣内の各部屋には雛祭りの装飾が施されていました
雛人形
日野宿本陣の向かいに位置する日野宿交流館では「文化歴史塾:幕末動乱と新選組」をお聞きいただく予定です
日野図書館に脇には「問屋場・高札場」跡地があります

最後の日野宿名主を務めた佐藤彦五郎新選組資料館

 平成16年(2005年)4月25日(日)に土方歳三資料館、井上源三郎資料館に続き、3館目の私設資料館として開館しました。
 幕末、最後の日野宿名主を努めた佐藤彦五郎。自宅でもあった日野宿本陣に天然理心流の道場を開き、そこには近藤勇や沖田総司、山南敬助らが訪れ、日野出身の土方歳三、井上源三郎らを交えた新選組と日野の人々との物語の幕がここから上がりました。
 佐藤彦五郎は新選組に物心共に応援を続けたことも知られています。その佐藤彦五郎が残した膨大な資料から新選組に関係するものを公開しているのがこの資料館です。土方歳三と佐藤彦五郎の鉄扇など新出の資料も展示されています。

佐藤彦五郎新選組資料館
資料館と同じ並びに位置する民家レストラン「cafe花豆」にて昼食をお召し上がりいただく予定です

月2回のみの開館、子孫の方がご説明くださる土方歳三資料館

 土方歳三の生家が建て替えを機に、平成2年から自宅の一室を開放して作られている資料館です。歳三の愛刀「和泉守兼定」や鎖帷子などの武具、写真や手紙などが展示されており、歳三の子孫の方が直接解説をしてくれます。
 ここでしか聞くことの出来ない新選組の知られざるエピソードで、さらに新選組への理解が深まることでしょう。

土方歳三資料館
資料館の中庭
資料館から徒歩数分の場所にある、土方歳三が眠る石田寺
土方歳三の墓、周囲の墓石もほとんどが「土方家」と刻まれており、その数に驚かされました
旅の始まりは多摩モノレールの万願寺駅からです
駅付近には「一里塚跡」も残されています

月2回のみの開館、天然理心流の演武も鑑賞する井上源三郎資料館

 八王子千人同心を代々務めた井上家。佐藤彦五郎に天然理心流を紹介したのは井上源三郎の兄・井上松五郎と考えられています。松五郎は家を継いで八王子千人同心となって多くの記録を残し、源三郎は新選組六番隊隊長として活躍しました。
 その生家に平成16年1月、たくさんの資料が発見された土蔵を改装した資料館がオープン。松五郎の「文久三年御上洛御供旅記録」、歳三書状、源三郎書状、八王子千人同心資料、近藤勇が松五郎に贈った名刀「大和守源秀国」などの資料が展示されています。
 このたびは、天然理心流の演武もご覧いただけるという、大変貴重な機会も設けています。

井上源三郎資料館
ツアーでは天然理心流の演武をご覧いただく予定です
新選組ふるさと歴史館
新選組ふるさと歴史館の見学を日野観光の締め括りとしてご案内予定です

千人同心屋敷の置かれた町・八王子

 八王子には「千人同心」と呼ばれる国境警備を任ぜられた武士団が結成していたことは、意外と知られていない史実です。徳川家康が関東に来る前、幕府は山梨県の甲州武田氏の元武士250人に国境を警備させ、後に千人に増やされたから「千人同心」と言われるようになり、八王子千人町に作った屋敷を拠点に、家康の墓がある日光東照宮の警備や江戸消化役(今で言う消防隊)など、色々幕府や世の中のためのことをしていました。新選組が結成される先駆けとも言うべき武士団、それが千人同心だったのです。

千人同心屋敷跡
八王子では日本の名城100選にも登録される八王子城跡も訪ねます

 八王子城は高尾山から景信山へ続く尾根北側の独立峰の頂上部、標高約450mを中心に築かれた巨大山城です。山上の要害地区と山麓の居館地区(御主殿跡)、周辺の砦や竪掘りの防御部分から成り立っています。1590年6月23日、豊臣秀吉の小田原城攻めに備えた大改修の甲斐もなく、前田、上杉軍を中心とした秀吉軍の猛攻で1日で陥落、その後廃城となりました。この八王子城の落城が決め手となって、籠城を続けていた小田原城が開城し、北条氏は滅亡しました。

古道から御主殿へ渡るために城山川に架けられた橋「曳橋」。現在の橋は、当時の道筋を再現するために、現在の技術で、戦国時代の雰囲気を考えて架けられました。
会所からのぞむ主殿。会所は主殿で儀式を終えた後、宴会などを行った場所、主殿では政治向きな行事が執り行われました。

 また、旅の締め括りには、武蔵野を望む小高い丘に佇む「八王子うかい亭」にて鉄板焼きの昼食をご用意しました。豪商の邸宅を思わせるそこには、ジャパネスクとアールヌーボーの装飾品の数々。和と洋が混じり合う大正モダンの香気漂う空間で、めくるめく味の饗宴をご堪能ください。

うかい亭の入口
煌びやかな装飾でお客様をお迎えくださいます
優雅に鉄板焼きをお楽しみください
敷地から望む武蔵野

旅のついでに、高幡不動や高尾山はいかがですか

 このたびの旅の舞台の近郊には言わずと知れた有名な観光地である高幡不動や高尾山もございます。せっかくなのでと、旅の前後に一緒に訪れてみてはいかがでしょうか。

高幡山金剛寺境内に聳える五重塔
土方歳三の像もあります
山内八十八ヶ所巡拝をして参りました
最後となる88番目の地蔵は大師堂の脇にあります
仁王門
高幡不動名物の「開運そば」をいただきました
昭和天皇 武蔵野稜 写真は武蔵野東陵
高尾山入口
高尾山麓にあるTAKAO599MUSEUM
高尾山の動植物や昆虫に関する展示が充実しています
高尾山頂へはリフトで向かってみました
高尾山薬王院へは左の男坂(108段の階段)か右の女坂(緩やかな登坂)のいずれかを選んで進みます
高尾山薬王院
やっとこさ、高尾山山頂に到着しました!
高尾山山頂からの眺め
吊り橋を渡る4号路を選んで下山しました
帰りはケーブルカーにて
日本一の急勾配を走るケーブルカーは迫力満点でした!

本社プランニング事業本部・乗田憲一連載「歴史ある風景:幕末維新。閃光の如く駆け抜けた土方歳三を育んだ町、武州多摩」もあわせてご覧ください。

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