佳景・名景・絶景

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2021年07月03日

円成寺(柳生街道 奈良市)

『旅のひろば』編集部 上釜一郎

 

今週は先週の奈良での撮影行った浄瑠璃寺に続き、円成寺(圓成寺・えんじょうじ)です。
円成寺は奈良市の東部、柳生街道の名刹です。柳生は、柳生新陰流で有名な剣豪の郷。その柳生の剣豪も往来した峠道が柳生街道です。
交通アクセスはかなり不便な場所ですが知る人ぞ知る名刹という感じで、人気の観光スポットとなっている寺院ではなく、ひっそりと落ち着いた空間に浸りたいという方にはぴったりです。円成寺の歴史は、天平勝宝8年(756年)に聖武上皇・孝謙天皇の勅願によって鑑真の弟子である唐からの渡来僧、虚滝和尚が開山したとも、平安時代の貞観期に創建されたとも伝わりますが、一般的には平安時代の中頃にあたる万寿3年(1026年)に命禅上人と呼ばれる僧侶が十一面観音を祀ったことが創建の由来であると考えられています。 
みどころは、2017年東京国立博物館に展示され、多くの人々の注目を集めた、運慶20歳代の作とされる実質のデビュー作、国宝・大日如来坐像。相應殿の完成で、ごく間近にご覧いただけます。

円成寺でまず目に入るのが、楼門前に広がる優雅で美しい庭園です。平安時代末期に造成されたとみられています。平安から鎌倉時代にかけて貴族の住宅に流行した寝殿造の庭園に類似しているとされ、寺院としては阿弥陀堂の前面に広がる浄土式庭園として、奥州平泉(岩手県)の毛越寺庭園とともに貴重な遺構となっています。

室町時代に平安時代の本堂の建築をほぼそのまま再現する形で再建されたv本堂
本堂は本尊阿弥陀如来坐像や四天王立像などが安置されていますが須弥壇周辺もみどころです。
室町時代に建立された円成寺の山門

多宝塔は、平成になってから再建された真新しい建築であり、奈良市内では唯一の「多宝塔」となっています。運慶作の国宝大日如来坐像の収蔵場所はかつては多宝塔で、そのご本尊でしたが、現在は受付の裏手にある真新しい専用空間(相應殿)で拝観可能となっています。

本堂の東側には、お寺の鎮守社である神社「春日堂」と「白山堂」があります。これらは鎌倉時代の前半に春日大社本殿であった建物を移築したものであ、現存する最古の「春日造」の建築となっていて国宝に指定されています。
【上釜一郎】プロフィール
1964年奈良県生まれ。旅行誌(マガジンハウス/ガリバーほか)からファッション誌(集英社/ COSMOPOLITAN JAPANほか)、広告写真等のカメラマンとして活躍。また、『南オーストラリアのユートピア アデレード』(弊社菊間著・新潮社)『マカオ歴史散歩』『新モンゴル紀行」(ともに弊社菊間著・新潮社とんぼの本)の写真等も撮影。現『旅のひろば』編集部で、各地の視察も行っている。過去には紛争地や、対人地雷問題の取材などの取材経験も多数。1997年にノーベル平和賞を受賞した地雷廃絶国際キャンペーン(International Campaign To Ban Landmines=(ICBL))の日本キャンペーン(JCBL)元運営委員。
現在ワールド航空サービスの知求アカデミー講座で、写真講座の講師も務める。

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