歴史ある風景
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2021年07月27日
“越後のミケランジェロ”石川雲蝶。ミステリアスな芸術家
本社 プランニング事業本部:乗田憲一
先日「世界ふしぎ発見」で絶景の清津峡や縄文時代の「火焔土器」など、“知られざる越後”が紹介。中でも出演者たちが驚きの声をあげたのが、石川雲蝶の寺社彫刻でした。
「越後のミケランジェロ」と呼ばれる石川雲蝶ですが、実は出身は江戸。雑司ヶ谷、鬼子母神堂の裏手に生まれたと伝わります。身近な存在だった寺社建築の彫刻を手がける宮彫りの石川流に弟子入り。20代で既に彫物師として名を馳せていました。しかし天保の改革で奢侈の禁止、倹約奨励で華やかな寺社の宮彫りの注文はさっぱり。働き盛りの雲蝶も仕事がなく毎日ぶらぶら。そんな時、越後・三条から「本成寺の欄間の彫刻を彫ってほしい、良い酒とノミを終生与えるから」と声がかかり、越後行きを決意。越後・三条は日本有数の刃物・鍛冶の町。本成寺の破風飾りを皮切りに、精力的に制作活動に没頭。新潟県ほぼ全域に、大小約1000点もの作品を残しました。
その中でも、お勧めは魚沼の2寺。西福寺にある開山堂は、雪深く貧しい農民々の心の拠り所になるようにと彫刻、襖絵、漆喰など、圧巻の装飾が完成。雲蝶は越後の名匠として知れ渡りました。永林寺は、博打好きだった雲蝶が寺の和尚と賭けをして負けたことで大作を残しました。本堂の建て替え、設計から各種彫刻まで108点にも及ぶ作品をなんと13年もかけて制作。約束通り、無償で全てを成し遂げたのです。
雲蝶の彫りの繊細さと力強さ、そして躍動感溢れる造形美は見る者を圧倒します。でも個人的に気に入っているのは、スズメや蝶などの小さな生き物が描き込まれていたり、永林寺の欄間に彫られた2人の天女が裏に回ると背中が丸出しで艶っぽい。よく見ないと気づきませんが、発見した時には思わず「知ってはいけない秘密を知った気になる」、そんな遊び心。確かな技術に裏打ちされた自由な創作が、最大の魅力かもしれません。
雲蝶の人となりを伝える資料は明治期に焼失。「謎に包まれた雲蝶」は余計に、作品を鑑賞する上で想像力をかきたてられるミステリアスな芸術家です。
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