町並み百選
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2021年09月30日
山の京都 美山の町並み
プランニング事業本部 吉田義和
本日は添乗で京都に来ております。京都は過去に2度書いていますが、今回ご案内するのは市街地ではなく山の京都です。南北に長い京都府。市の北部には丹波山地が広がります。京都の市街から30分郊外へ走るだけで、美しい里山風景が広がりますが、中でも美しい風景をご覧いただける美山をご紹介いたします。
茅葺古民家の重伝建 「美山」
茅葺の伝統集落、というと白川郷や五箇山合掌造り集落が挙げられますが、集落の美しさ、という意味では美山も負けていません。京都市街から北へ50キロ。丹波山地を車で1時間半ほど走り抜けた先に位置する「美山かやぶきの里お」。小高い山の麓に39棟の茅葺の家屋が並ぶ、まさに日本昔ばなしに出てくるような「日本の原風景」といえる景観です。コロナの情勢前までは京都にほど近い土地柄もあり、訪日客で大変混み合っていましたが、昨日訪れた美山は個人観光客がまばらに来るだけで、人々の静かな生活が垣間見える村本来の姿を見ることができました。
美山かやぶきの里は、この地に残る江戸時代から明治時代に建てられた伝統家屋「茅葺屋根の家」を実際に生活しながら保存している集落です。夏が暑く冬の寒さが厳しい丹波地方では、江戸時代から屋根に傾斜があり、熱や湿度に近い茅葺屋根の民家が造られていました。美山地区は若狭地方から京都へと鯖を運ぶ「鯖街道」の通り道として栄え、多くの民家が連なっていました。時代の流れとともに茅葺屋根はトタン等に変わっていきましたが、美山では地元の住民の活動もあり、平成5年に重伝建に登録され、国の保護のもと、景観を保っています。
9月28日、初秋の美山を訪れました。バスで里に着くと、集落の前の畑には一面のそばの花が咲き、白い絨毯のようでした。その後ろには茅葺の家々が並び、桃源郷のような風情を醸し出しています。駐車場から集落の入口へ。入口のレトロな赤いポストが目印です。各民家は「観光」のためではなく、ほとんどが実際に暮らしている家々。平日のこの日は家の庭で畑仕事をしたりと、のどかな日常風景を見ることができました。一部の民家は民宿やカフェを営んでいますが、観光のために生活スタイルを崩すことはせず、等身大の村の範囲内で観光業を行っていることに好感が持てます。重伝建登録により村のよさが見直されるまでは、過疎化が進んでいた美山の村ですが、現在は里山の暮らしに憧れてこの地に住む若者も増え、土日祝日には行列のできるパン屋さんがオープンするなど、景観は変わらないなかで少しずつ進化を遂げています。
ちょうど屋根の葺き替えを行っている民家に遭遇しました。急斜面の屋根に木の足場を組み、上から茅の束を組み合わせて綺麗に葺いていきます。茅葺の「茅」とは茅という植物というわけではなく、茅葺の屋根づくりに利用する植物の総称で、ここ美山では主にススキを利用しています。秋が深くなると畑には茅場と呼ばれる茅となるススキを乾燥させる場面などもご覧いただけます。ただしススキは美山の近隣だけでは足りず、熊本などから送ってもらっているのだとか。利用する茅の束は実に3000束以上。葺き替えには2週間を要するといいます。
海に山に、変化のある京都。次回は海の京都をご紹介します。
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