町並み百選

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2021年08月19日

蔵とラーメンのまち 喜多方 

プランニング事業本部 吉田義和

オリンピックが終わると同時に、酷暑から一気に気温が下がってきました。もう一度残暑が訪れるとは思いますが、それを過ぎればいよいよ秋。木々が色づく紅葉シーズンを迎えます。東日本有数の紅葉の名所といえば、会津裏磐梯。神秘的な湖面の五色沼や、桧原湖、秋元湖といった湖に紅葉の木々が映える絶景は何度訪れても素晴らしいものです。今回は、裏磐梯のすぐ脇に位置する町、喜多方をご紹介したいと思います。

秋の桧原湖と裏磐梯レイクリゾート ©裏磐梯観光協会
裏磐梯レイクライン

豊かな伏流水に恵まれた酒造りの町

喜多方といえば「ラーメン」と安易に連想してしまいがちですが、実は重伝建にも登録されている町並みの美しいところ。特に「蔵の町並み」で知られています。会津若松という都市の郊外で、なぜ喜多方が栄えたのでしょうか。まずは簡単に喜多方の歴史についてご案内します。会津北方のこの地域が「喜多方」という名称になったのは、明治8年のこと。文字通り会津の北方(きたかた)の5つの村が合併して、縁起を担いだ当て字で「喜多方」となったのです。喜多方発展の礎は江戸時代のこと。北の飯豊(いいで)山脈から流れ出る良質の伏流水と豊富に獲れた米を利用した酒造りがこの地で始まりました。酒造りはいつしか麹を使った作業を応用して、醤油や味噌なども作られるようになっていったのです。その保管のため、町には多くの蔵が立ち並ぶようになりました。

多方の町を潤す水を作り出す飯豊山脈ⓒ(一社)喜多方町観光物産協会
喜多方町の中心に位置する大和川酒造ⓒ(一社)喜多方町観光物産協会

明治期に入ると、喜多方郊外の三津谷には煉瓦工場が完成。町中で起こった大火の影響もあり、一般の民家にも蔵が普及し、蔵の町並みが形成されていきました。同時に会津から米沢を走る新米沢街道が、喜多方を経由することになり、街道町としても栄えていきます。現在その面影を色濃く残すのは、喜多方のメインストリートから500メートルほど西にある小田付(おたづき)地区です。街道に沿って蔵屋敷や酒造が並ぶ小田付地区は明治期からの町並みが保存され、この一角は電柱も地下化。昔のままの町並みがご覧いただけます。この一角で存在感を示すのが小原酒造です。1717年創業の歴史ある酒造で、話題となったのがモーツァルトを聞かせて造る日本酒「蔵粋(くらしっく)」です。麹に音楽の振動を与えることでより美味しい日本酒になるという研究のもと、様々な音楽で試行錯誤し、モーツァルトに行き着いたとのこと。たしかにその味はなんとも滑らかです。

煉瓦工場のあった三津谷地区の煉瓦蔵群
町中にはレトロなボンネットバスも走ります。
モーツァルトの日本酒「蔵粋」をつくる小原酒造
歴代の杉玉に歴史を感じる小原酒造。醸造所の見学も楽しめる

そしてラーメンのまちへ

昭和に入り、国内旅行が盛んになると、喜多方町は町のイメージ戦略として「ラーメンのまち」を掲げ、全国に宣伝をはじめます。もともと大正末期に中国から来た青年によってラーメンの製法が伝わり、町に100を超えるラーメン屋がある激戦区。ここに「ラーメンのまち」の宣伝が功を奏し、「喜多方ラーメン」の名前は全国区になったのです。現在でも、老舗の坂内食堂など多くの店は開店から並ぶほどの人気。しょうゆベースのあっさりしたラーメンなので、いくつか店をはしごする人もいるほどです。

あっさりした醤油ベースのスープに太めの縮れ面が絡む喜多方ラーメン
伝統の蔵屋敷でラーメンがいただける「あずまさ」

グルメと歴史の町、喜多方。紅葉の秋には訪れる機会も増える訪問地です。ぜひ本場の味をお楽しみください。

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