視察レポート
視察レポート
2021年09月24日
長崎街道 異国の香りを求めた228㎞の道筋
九州支店 柴尾祐樹
五街道の支街道として整備された長崎街道。その特徴を決定づけたのは、江戸時代初期の鎖国政策といえます。南蛮船の来航を長崎に限定したこの政策により、当時国内唯一の外国に開かれた港であった長崎から入る貿易品を運ぶ道として重要な役割を果たしました。長崎と小倉を結ぶ街道沿いには25の宿場町が設置され、白糸、香料、ガラスなどの貿易品のみならず、ラクダや象などの珍しい動物もこの道を通って江戸に向かったとされています。
そんな長崎街道(別名シュガーロード)を9月の連休を利用して大阪支店長の渡邉と共に訪ねました。
旅の始まりは一本の橋から
山陽道の終点・下関とは関門海峡を挟んで向かい合う福岡県・北九州市の小倉。街を貫く紫川河口近くに架かる常盤橋が長崎街道の始点です。伊能忠敬やシーボルトも渡ったというこの橋は木造の人道専用であり、江戸時代の人々の往来を想像することができます。近くには長崎街道の宿場町地図も。これから始まる旅のために改めてルートを予習しました。
常盤橋周辺を歩いてみると、小倉城の姿が目に飛び込んできます。関ヶ原の戦いで功をたて、京都・宮津からお国替により北九州へやってきた細川忠興によって築かれました。現在の天守は昭和34年に再建されたものですが、近郊の足立山から切り出した天然石で造られた野面積みの石垣と織りなす景観はなかなかの貫禄です。江戸時代の人々もきっと堀から聳え立つ天守の姿を目にしたことでしょう。
江戸時代の街道の面影を最も残す 木屋瀬(こやのせ)宿
同じく北九州市の木屋瀬(こやのせ)宿は、長崎街道の中でも最も宿場町の面影を残すといわれます。江戸時代には、現在の宗像大社や福岡市、そして佐賀の唐津へと続く唐津街道へ抜ける追分の宿として賑わいを見せました。大きな商家が一般公開されており、内部では案内人の方から話を伺うことができました。大名行列が町を通過するため、行列側から見える家の表は質素に、裏は窓も広く開放的な家を作っていたなど、なかなか興味深い話を聞くことができました。コロナ渦で訪れる方も少なくなった為か、訪れた私たちを歓迎し、丁寧にうれしそうな顔で案内してくれる姿が印象的でした。このあと長崎街道は、街道の難所冷水峠を越え、旧肥前、佐賀・長崎へと続きます。
長崎街道唯一の一里塚
吉野ヶ里遺跡のある佐賀県・神埼(かんざき)には、一里塚が残されています。一里塚は長崎街道沿いに1里、約4キロごとに造られたもので、現在、小倉から長崎までの228キロの中では、唯一残っている貴重なものです。小高く盛り土された一里塚は旅人に距離を知らしめると同時に、休息の場所でもあったといわれます。また、佐賀ブランドの神埼そうめんと、割烹文化が融合した「めん懐石」をご賞味いただきます。
先進技術も伝えた長崎街道
ところで、九州は石橋王国といわれ、数多くの石造りのアーチ橋が建設されています。一説では、 石橋を造る技術は、江戸時代に中国から長崎へ伝わり、1634年に長崎市の中島川にかけられた「眼鏡橋」が九州最古の石橋といわれます。その後、九州各地へと技術が広がってゆきますが、その伝来にも少なからず長崎街道が関わっているのではないかと想像することができます。長崎街道の途中、諫早にも石造りの眼鏡橋があり、石橋として日本初の国指定重要文化財に指定されています。江戸時代には、島原方面へ接続する交通の要衝に架けられていました。
南蛮船を通じて日本に到来した逸品を味わう
「長崎街道ここに始まる」の石碑が、長崎市内でも古い歴史が残る桜馬場に佇みます。シーボルトが開いた鳴滝塾跡が近くにあり、シーボルト通りと名付けられた道は、地元の人々の生活を感じることができる場所です。 ここでは街道を通って江戸へと献上された逸品を味わうことができます。
その一つがからすみです。形が唐(中国)の墨に似ていることに由来するからすみは、南蛮船によって日本にもたらされました。江戸時代には天下の三珍とうたわれ、長崎奉行を通じて将軍家に収めらました。明治19年創業の老舗「松庫商店」が長崎街道の一角に佇みます。
また、街道で運ばれたものの代表は何といっても砂糖で、街道沿道は砂糖のほか、菓子作りの技法なども入手しやすかったため、カステラや金平糖など全国的にも有名な銘菓が生まれました。明治10年創業の「いしだや万寿庵」には美味しそうな大福や生菓子が並んでおり、食べてみるとこれが美味。長崎街道シュガーロードには、今も各地に息づく銘菓があり、数百年の時の中で開花した、砂糖の文化を味わうのも長崎街道の楽しみのひとつです。
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