視察レポート
視察レポート
2024年03月01日
【視察レポート】禁断のムスタン王国へ その②
<東京支店 春名 釈>
<東京支店 春名釈>
視察報告第2弾は「屋根のないチベット文化博物館」と称賛される、ムスタン王国の首都ローマンタンから始めます。いまだに城壁に囲まれているローマンタン。城内には約160世帯、550名ほどの人々が生活しております。近年では場外にも少しずつ広がり、人口を増やしていますが、いまだにほぼすべてがチベット建築物で近代的な建物は見当たりません。
それは、2008年にネパールに合併されるまで、鎖国政策をとっていたため、他のチベット文化圏に比べ、近代的な波や外国からの影響を受けなかったからでしょう。
いまだに中世チベットそのままの姿が残る、貴重な首都です。視察レポートその②は、このローマンタンから始めましょう。
ジョムソンから約6時間。ローマンタンに無事到着
思った以上に快適に到着できたムスタン王国の首都、ローマンタン。ジョムソンから途中の村や、レストラン、ロッジなどを視察しながら到着したので、ローマンタンについたのは夕暮れでした。ただし、ジョムソンから四輪駆動車で走っていた時間は、途中数えきれないほどの写真ストップを含めても、5時間40分ほど。以前3日間かかった行程が、道路の整備で6時間余りに短縮されたのは、まさに事実でした。驚いていたのは同行したネパールのガイド、ラジャフさん。以前来た時には、日本からのトレッキングツアーに同行し、ジョムソンからテントで宿泊しながら数日かけてたどり着いたローマンタンへ、自動車で6時間とは夢のようと語っていました。
これだけ、短縮した大きな理由は、以前の道路を修復したのではなく、完全に新しい道路を造ったところでしょう。日本出発前には、5,000mを越える峠があると聞いていたところ、この新しい道路では、標高4,010mの峠が最高点でした。標高も回避しているのに驚きました。
視察のもう一つの目的、ローマンタン初のホテルへ
今回の視察の大きな目的が、道路事情とローマンタン初のホテルの完成でした。目的のホテルは、「ロイヤル・ムスタン・リゾート」というかつてのムスタン王室家族が運営するホテルでしたが、視察した時が秋の終わりということで、すでに今期の営業が終わっていたこともあり、快適といわれるロッジ「ピース・ホテル」に宿泊しました。「ロイヤル・ムスタン・リゾート」意外は、ロッジしかないローマンタンでは、快適なロッジの一つと紹介を受けましたが、暖房設備、お湯の供給がなく、部屋には裸電球が1つのみ。暖房がないので室内でも気温がマイナスであり、通常のツアーでの宿泊は難しいことを実感しました。翌日には、その他3か所ほどのロッジを視察しましたが、電気ストーブがあっても電気がないという状況であり、同じ状況でした。
聞くと、ローマンタンの一般家庭に電気が入ったのがコロナ直前。ほぼ同じころに水道も引かれ、ローマンタン市内に共同水道が設置されたとのこと。まだまだ秘境であることを感じました。
そんな中で、だんだん不安になってきました。果たして「ロイヤル・ムスタン・リゾート」は、大丈夫なのかと。3名の視察チームに不安が横切りました。
不安を一気に吹き飛ばす。「ロイヤル・ムスタン・リゾート」へ
午後、いよいよ視察の約束をとっていた「ロイヤル・ムスタン・リゾート」を訪れました。
すでに今期の正式な営業は終了していたので、私たちの視察を待ったいてくれたという感じでした。
このホテルが快適でなければ、今回のツアーは断念せざるを得ないということで、視察チーム3名とも不安と共に訪れました。
出迎えてくれたのは、男性スタッフのジグメ・ビスタさん。早速、ホテル内を案内いただきました。
入ったとたんに広がるチベット建築、装飾が見事なロビー。2階の客室へはスリッパに履き替え進みます。2階に進むと、なんと床暖房。部屋に入るとエアコンが設置され、なんとベッドには電気毛布が用意されていました。水が貴重なのでバスタブまではありませんが、シャワー、洋式トイレのある洗面所では、お湯も問題なく利用できました。
また、ちょうどお昼でしたので、レストランで昼食をいただくことに。ネパールの定食ダルバートを頼みましたが、地元の野菜を利用し、見た目もおしゃれな内容に驚きでした。そして、デザートは名物のアップルパイと、チャイ。味も最高でした。
まさに別世界。自家発電をしているので、電気も心配はないとのこと。視察チームの不安は一気に消えました。
若き皇太子が、ムスタンの将来を語る
昼食のレストランでサービスしてくれる女性スタッフに「このホテルはムスタン王室が運営していると聞きましたが、実際に王室のスタッフはいらっしゃるのでしょうか。」と聞いてみると、なかなか話してくれませんでしたが、最後に「あの男性が、皇太子様なんです。」と、そっと教えてくれました。
ただし、絶対に言わないでと言われているので、お願いしますとのこと。
昼食を終え、再び案内いただいたジグメ・パルバー・ビスタさんに、勇気を振り絞って、ムスタン王室のかたですかと直接伺ってみました。
すると、初めはためらっていましたが、実はその通りですと話してくれました。
「すでに王政は終わっていますので、私はホテルのいちスタッフです。これからは、ホテルの仕事を通じて、ムスタンの歴史、文化、遺産を守り、世界に紹介し、外国からの観光客を受け入れ、収入を得てゆかなければなりません。また、早く世界遺産登録の準備をし、チベット文化が近代化等により失われないように保護したく思っています。」とのことでした。
「日本の方にも是非お越しいただきたい。お待ちいたしております。」と強く語ってくれました。
そして、最後に嬉しい吉報がもう一つ。「私たちが運営するもう一つのホテル「マヤズ・ヘリテージイン」が、ツァラン村に出来ているので、帰りに是非お立ち寄りください。」という情報。
ツァラン村といえば、ローマンタンに来るときに立ち寄ってきた川口慧海氏が10か月を過ごした村。そして、このホテルは来るときに、昼食が美味しく絶賛したホテルです。帰りにも是非立ち寄ることを約束しました。
ローマンタンを案内する2人の兄弟に出会う
私たちのもう一つの課題が、ムスタン地域には、トレッキングで訪れる外国人はあっても、観光で訪問するグループはいないということで、現地ガイドが一人もいないということでした。カトマンズから同行してくれたラジャフさんは、とても評判の良いガイドではありますが、ムスタン、ローマンタンのことに関しては独学で勉強したレベル。その中で、現地の詳細や町の案内などには、ぜひ現地ガイドも欲しいと考えていました。
そこで、ロイヤル・ムスタン・リゾートの皇太子、ジグメ・パルバー・ビスタさんに相談してみると、日本語を話し、外国人が来た時に、時々町を案内している兄弟がいるので、相談してみてはどうですかという嬉しい情報がありました。早速、この兄弟を訪ねることにしました。別な仕事をしている中、夕方ホテルでお会いすることになりました。
ローマンタンに在住するグルンさん兄弟で、共に日本語が出来ます。「日本には合計で12年ほどおりました。その間、日本の方に大変お世話になり、休日には日本各地の見学にも連れて行っていただきました。そのころから、いつかは私の故郷ローマンタンを日本の方々に紹介したいというのが、私の夢の一つでした。これで、私の夢が一つかないました。喜んで案内させてください。」と快諾。
ましてや、河口慧海ゆかりのツァラン村にも来てくれるとのことで、ガイド問題も解決しました。
いろいろな課題が、どんどん解決してゆき、良い旅になりそうな予感で、視察チームにも笑顔が戻りました。そんな中、皇太子のジグメ・パルバー・ビスタさんより、良ければ今夜は私のホテルに泊まりませんかという嬉しい提案。「今夜は暖かい部屋で寝れる。」最高のプレゼントをいただきました。
案内人グルンさんと共にローマンタンを見学。1つの王宮と3つの寺院巡りへ
早速、日本語の案内人、グルンさんと共にかつてのムスタン王国の首都、ローマンタンの見学を楽しみました。「屋根のないチベット文化の博物館」と称されるローマンタン。いまだに1つの城門を持つ城壁都市として、中世そのままの姿を残しています。
ローマンタンでは、1つの王宮と3つの寺院巡りが楽しみとのことで、まずはその見学へ。残念ながら王宮は数年前の地震で屋根の一部が落ちてしまい、入場不可となっておりますので、外観を撮影後、3つの寺院へ。
まずは最大で僧院を併設しているチョンデ・ゴンパ(寺院)へ。ここから僧侶が同行してくれ、他の2つの寺院(トゥプチェン・ゴンパ、チャムパ・ゴンパ)を巡ります。3つの寺院共に圧巻だったのは、内部の壁画の素晴らしさです。チベットへの重要なルートとしてムスタン王国が栄えたのが14世紀。そのころ描かれた曼荼羅、仏画、千仏などが寺院の壁を見事に埋めています。残念ながら、その撮影は出来なかったのですが、その素晴らしさは圧巻でした。
それと素晴らしいのが旧市街のチベット建築群。近代的なものは一切ない、まさに「屋根のないチベット文化の博物館」そのものでした。現在旧市街には、160世帯、約550名が暮らしているといいます。
案内人のグルンさんの計らいで、一般家庭の屋根に案内してもらいました。屋根の上は日本でいう土間のような役割があり、冬に向けて燃料の木や干し草を干していました。そして、何よりもローマンタン全体が見渡せる、最高の展望台でした。
案内人のグルンさんは、知り合いの家庭にて一生懸命ローマンタンでの暮らしを教えてくれます。
町の人はみな知り合いのようで、挨拶を交わしながらの散策でした。やはり地元の案内人がいると違うねと胸をなでおろしました。
また、ローマンタン郊外には、大規模な洞窟住居群チョサルがあります。最初にチョサルを訪れた時に最初に思ったのは、「まるで、最初に訪れたころの敦煌莫高窟か。」を思うほどでした。合わせてお楽しみください。
旧国王から嬉しいメッセージが
以上で、ローマンタンでの視察を終了しました。
ロッジに到着した時には、不安でいっぱいだったのですが、滞在中にその不安は一気になくなり、早く皆様をご案内したい気持ちでいっぱいになりました。旅のひろば3月号では、4月、5月のツアー6本、すべての出発が決まったことを現地側に伝えると、各担当者から皆様に多くのメッセージが届いたものを掲載していますので、是非ご覧ください。
そして、この原稿を作成している最中に、もう1通嬉しいメッセージが届きました。ロイヤル・ムスタン・リゾートの皇太子ジグメ・ビスタさんのお父さん、ムスタン王国の最後の国王、ジグメさんからです。このメッセージを添えて、視察報告その2を終えたいと思います。
日本から多くのお客様をお迎えできることを大変うれしく思います。
ローマンタンで大切にしているチベットの文化、建築、歴史的遺産を守りながら、新しく切り開いた「観光」という分野にも、しっかりと取り組んでゆきたく思っています。
ローマンタンのホテルでお会い出来ますことを楽しみにしております。
ロイヤル・ムスタン・リゾート ディレクター:ジグメ・ビスタ
視察報告その③は、急遽宿泊することになったツァラン村と、ムスタン・グルメをご紹介する予定です。どうぞお楽しみに。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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