視察レポート

視察レポート

2023年12月28日

【視察レポート】禁断のムスタン王国へ その①

<東京支店 春名釈>

 河口慧海の『チベット旅行記』を読んで以来、一度は訪れてみたかった「ムスタン王国」。河口慧海は仏教の原点を求めたいという気持ちから厳重な鎖国状態にあったチベットへ単身入国した明治時代の僧侶で、その志からまさに「日本の玄奘三蔵」と呼ばれました。

 その後チベットはネパール、中国、ブータンなどに分断され鎖国が解かれましたが、2008年までほぼ鎖国状態を続けてきたのがネパール領ムスタン自治王国でした。2008年にネパールの上ムスタン地域となり実質上の鎖国も緩和されましたが、宿泊施設は山小屋のようなロッジのみ、道路もところどころ寸断され、首都ローマンタンまでロバや徒歩による移動を含め3日間を要するという状況。しかしそんなムスタンへの道路が整備され、ローマンタンにホテルが完成したという情報を受け、さっそく現地に飛びました。
 知られざるヒマラヤの「禁断のムスタン王国」視察レポートを3回にわたり、ご紹介いたします。

ムスタン視察チーム 左から弊社のホテル「ホテル アンナプルナビュー」支配人で、エベレスト2回登頂を誇る井本、東京支店春名、ガイドのラジャフさん

カトマンズで特別許可を取得、いざムスタン王国へ
最初の課題は、高所対策

 2008年にネパールに統合されたとはいえ、ムスタンを訪れるには、カトマンズで特別許可の取得が必要となります。ジョムソン周辺の下ムスタンと、ローマンタンを中心とする上ムスタン、2つの許可を現地の手配会社の力を借りて約半日で取得します。また、外国人は2名以上で行動することが条件で、10日間までで1人当たり500ドル(約8万円)が必要となります。下ムスタンと合わせて約10万円。まだまだ簡単には訪問できないのです。

 午前中にムスタン特別許可を無事取得。いよいよ「ムスタン王国」を訪れるという実感が湧いてきます。ガイドのラジャフさんとともにポカラに飛び、「ホテル・アンナプルナビュー」に駐在している井本社員と合流しました。

 翌朝、ジョムソンへの山岳フライトもほぼ予定通り出発。航空機からは、アンナプルナ南峰、ダウラギリ峰、ニルギリの見事な展望が広がり、エベレスト2回登頂経験を誇る山男・井本の目が輝いていました。ムスタン王国への旅の最初のハイライトです。
 ネパールの旅行シーズンというと乾季にあたる10月から4月下旬まで。それ以降はヒマラヤの展望が見られない日も多くなりますが、ヒマラヤの北側は安定した晴天が続きます。カトマンズやポカラが雨季となる7月下旬から9月の間は、航空機の運航に支障が出てくる可能性があるので、避けたほうがいいですが、それ以外はいつ訪問しても晴天が続くのです。

 ムスタンへの旅の最初の課題は標高が高いこと。ガイドのラジャフさんに聞くと、「ジョムソンの標高は2720メートルなので、高所障害の症状はほとんど出ません。また、ここから自動車で少しずつ標高を上げていくので、まず心配ないでしょうとのこと。井本からはネパールは登山が盛んなので、いざというときの酸素の準備も簡単とのことなので、安心のためグループ用に持参することを決めました。

ポカラからジョムソンへの山岳フライト。ダウラギリ峰を望む
ジョムソンのホテルで休憩し、ムスタン王国を目指します。

道路事情が大きく改善。

 果たして本当に6時間ほどで走れるのか。期待と不安を胸にジョムソンを出発しました。この道路事情の改善は、ホテルの完成とともに今回の視察の大きな目的の一つでした。

 

 ジョムソンで簡単に朝食を終え、いよいよムスタン王国の首都、ローマンタンに向け出発をしました。ジョムソンの町中を抜けると、道路の舗装は無くなります。雄大なカリ・ガンダキ川に沿っての道は、かつてジョムソンまでの旅で訪れた時とは全く違い、未舗装ではありますが道幅は広く、四輪駆動車も時速50キロほどで快適に走ります。後方にはジョムソンの象徴、ダウラギリ峰とニルギリ峰が、白銀に輝いて送ってくれます。わずか30分ほどでカグベニに到着できました。以前、ジョムソンを訪れた時には、ジョムソンから1時間以上かかったと記憶しています。ここまでは快適に走れました。
 カグベニの村は、夏の水害で大きな被害を受け、中心の街並みが流され大きく様変わりしておりました。カグベニからさらに30分ほどのチュサン村には、上ムスタンへの特別許可のチェックポイントがあり、ついに上ムスタン地方、かつてのムスタン王国に入りました。道はいよいよカリ・ガンダキ川を離れ、峠道に入ります。ここまで道路は未舗装とはいえ快適で、ところどころ工事中、修復中で徐行する場所はあっても順調でした。

 ここからがいよいよ本番です。ローマンタンまでは8つの峠を越えてゆきます。ここからの道路は峠道の為、さすがにカーブが多く平均時速は25キロ位でしたが、道幅は今までと同じく速度を落とさなくても対向車とすれ違えるほどの広さがありました。
 8つの峠を越えましたが、最高地点はニイ峠の4010m。聞いていた5000mを越える標高の場所はありませんでした。ドライバーに聞いてみると、道路の場所自体が旧道と違うため、無くなりましたとのこと。よく見ていると、ところどころに旧道を見ることができました。高所対応を心配していた中で、大きな吉報でした。

四輪駆動車に分乗。余裕を見て1台に3名とドライバーで乗車
ガミ村付近の道路。新しく整備された道が続く

まさに絶景街道。飽きることのない絶景の連続

 道路事情もさることながら、感激だったのは絶景の連続でした。道の両側には6,000m級の山々が連なり、その後ろには7,000〜8,000mのアンナプルナ連峰がそびえます。ポカラで見るアンナプルナの反対側、北側の風景です。その絶景の中に、チベットの村が点在し、道路のところどころには道しるべのように仏塔が続きます。8つの峠は絶好の展望台です。今まで、タクラマカン砂漠、中国パキスタン国境を越えるカラコルムハイウェイなどを訪れましたが、どこよりも雄大な風景を見ることが出来ました。
 特に復路の風景は、正面に7,000mを越すアンナプルナ連邦を見ることが出来、印象的でした。また、峠の間には、ツァラン村、ガミ村などのチベットの魅力的な村があり、ビューポイント、写真ストップの連続でした。途中、ツァラン村にて見学や昼食をとりましたが、その時間を除けば、ジョムソンからローマンタンまで、5時間33分で走破することが出来ました。ところどころ、整備中や工事中の場所はありましたが、全体的に思っていたより快適に、時間も早く到着することが出来ました。  

ローマンタンに続く道。目を見張る絶景の中へ
ローマンタンへは8つの峠を越えて。峠は絶好のビューポイント
復路は正面にアンナプルナ連峰の北側が連なる
カグベニ村の風景。途中の村も楽しみです。

快適にローマンタンを目指していただくために

 ローマンタンに到着し、井本とガイドのラジャフさんと到着を祝って簡単に乾杯しました。
 話をしたのは、道路事情は思っている以上に良かったこと。これなら、昼食や村の見学、絶景ポイントでの写真ストップを含めて、問題なく走ることが出来るということ。また、途中の村やドライブインが思った以上にあり、トイレストップも可能です。
 車は四輪駆動車に分乗しますが、車窓風景をお楽しみいただくためにも、1台にお客様3名とドライバーとしたいこと。(通常はお客様4名とドライバー)
 また、標高に関しては3名とも全く高所障害は出ませんでした。航空機で到着するジョムソンが、標高2,810m。そこから、陸路で少しづつ標高を上げてゆくので、影響は少ないとのこと。航空機で直接標高3,600mに登ってしまう、中国チベット自治区のラサや、南米のクスコなどとは全く違うようです。
 そして、5,000mを越える峠も回避できたこと、万が一のために酸素ボンベを持ってゆくことで、安心してご参加いただけるのではないかと思います。

ジョムソンから直接走ると約6時間でローマンタンに到着
川口慧海ゆかりの、ツァラン村の風景。

以上が視察レポート「禁断のムスタン王国へ」その① でした。

その➁では、ホテル事情と首都ローマンタン、その③では、チベットの原風景、途中の村とお食事事情を紹介いたします。
また、各地で「視察報告・詳細説明会」を開催しますので、ぜひお越しください。紹介されることの少ない「禁断のムスタン王国」を写真とともにご紹介させていただきます。

この記事に関するキーワード

お気軽にお問い合わせください

電話相談はこちら

受付時間:午前9:30~午後5:30

東京
03-3501-4111
大阪
06-6343-0111
名古屋
052-252-2110
九州
092-473-0111
札幌
011-232-9111
藤沢
0466-27-0111