佳景・名景・絶景
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2021年03月06日
室生寺(奈良)
『旅のひろば』編集部 上釜一郎
「京の雅、奈良の鄙び」という言葉があります。雅とは宮廷風のことで、優雅で品格があること。「鄙(ひなび)」とは田舎風のことで、簡素で質朴なことといわれます。私はそんな鄙びという言葉が好きです。奈良を表現するとき、とても合っていると思います。
日本で最先端だった都、奈良が1300年を経て鄙びとなる。時が紡ぎ出した特別な価値です。そんな「鄙び」を感じさせてくれる名刹が「室生寺」ではないでしょうか。
写真家なら誰もが知る、戦後の日本を代表する写真家である、入江泰吉(05~92年)と土門拳(1909~90年)。叙情豊かでどこか柔らかさを感じさせる表現の入江に対し、報道写真のリアリズムの騎手として剛健を貫く土門。全く違う作風の二人ですが、ともに彼らを魅了した共通点は大和路。とりわけ「室生寺」は巨匠たちを魅了し続けました。
特に二人は冬の室生寺の撮影にこだわり、その撮影の中で生まれたたくさんの物語と逸話が残されています。
毎年4月の半ばになると、標高400メートルの室生寺のシャクナゲがつぼみを開きはじめます。最初は、濃く鮮やかな紅色から薄桃色になり、そのあと白に近い色になってやがて散ります。春夏秋冬、一年でこの季節がいちばん室生寺に「色」が加わる時期です。どの季節に訪ねても「絵」になる室生寺。大和路の「鄙び」をぜひ撮影していただきたいと思います。40年にもわたって「古寺巡礼」ライフワークとしてきた土門拳とまではいきませんが、私もじっくり「室生寺」と向き合ってみたいと思いと思います。
入江泰吉記念 奈良市写真美術館 http://irietaikichi.jp/
志賀直哉旧邸と新薬師寺のそばです
土門拳記念館(山形県酒田市)http://www.domonken-kinenkan.jp/
土門拳の約7万点を収蔵。秀峰・鳥海山を眺望する絶好の場所です。
▶講師上釜一郎と行く 日本撮り旅
「日本の絶景 吉野山の春景色 4日間」はこちら。室生寺も訪ねます。
▶花が彩る古刹をめぐる、四月の奈良
花の大和路と12年ぶりの薬師寺東塔の旅【4日間】はこちら
【上釜一郎】プロフィール
1964年奈良県生まれ。旅行誌(マガジンハウス/ガリバーほか)からファッション誌(集英社/ COSMOPOLITAN JAPANほか)、広告写真等のカメラマンとして活躍。また、『南オーストラリアのユートピア アデレード』(弊社菊間著・新潮社)『マカオ歴史散歩』『新モンゴル紀行」(ともに弊社菊間著・新潮社とんぼの本)の写真等も撮影。現『旅のひろば』編集部で、各地の視察も行っている。過去には紛争地や、対人地雷問題の取材などの取材経験も多数。1997年にノーベル平和賞を受賞した地雷廃絶国際キャンペーン(International Campaign To Ban Landmines=(ICBL))の日本キャンペーン(JCBL)元運営委員。
現在ワールド航空サービスの知求アカデミー講座で、写真講座の講師も務める。
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