町並み百選

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2021年09月02日

明治大正洋風建築の宝庫 山形の町並み 

プランニング事業本部 吉田義和

いよいよ9月に入ってきました。現在は北海道におりますが、段々と秋の気配を感じるようになっています。本日は、山形県の県庁所在地、山形市をご紹介いたします。明治期に多くの洋風建築が造られ、弘前と並びお洒落な洋館が並ぶ先進的な町並みがあった場所です。現在は都市化していますが、明治の面影を各地にご覧いただける町となっています。

明治大正洋風建築を巡って

蔵王の山の西麓に広がる盆地に、山形の町が広がります。山形県の観光は、さくらんぼ狩りをはじめ果物のイメージが強いかもしれせんが、実は見応えのある町。以前鶴岡の町並みでもご紹介した、「偽洋風建築」と呼ばれる建物が多く残るのです。「偽洋風建築」とは、宮大工や日本古来の建築の技を持つ職人が、見よう見まねで造った建築のことで、独創性に溢れた木造建築が特徴です。この建築を奨励したのが、明治期の山形県令三島通庸(みちつね)でした。薩摩藩出身で大久保利通らと行動を共にした三島は、山形県令時代に山形や鶴岡の地に多くの洋風建築を造らせたのです。建築や道路整備を積極的に行った三島は「土木県令」と呼ばれるほど積極的なインフラ整備を行ったのです。山形のシンボル「文翔館」も迎賓館かと見紛うほどの立派な洋風建築。こちらは三島が建てた県庁が火災で焼失した後、大正時代に建てられた県庁と議事堂で、新県庁が建設された昭和50年まで利用されていました。現在は郷土館として保存され、明治・大正風情を残す洋館として、多くの映画のロケ地に利用されています。

蔵王の山に抱かれた山形市街
山形文翔館

山形の明治洋風建築でお勧めの訪問地が、旧山形城「霞城公園」の一角にある旧済生館本館(現山形市郷土館)です。正面から見ると通常の望楼のようですが、裏に回ると中庭の周りに円状の十四角形の廊下が造られ、まるで中国の客家土楼のよう。三島の「山形の近代化を図る」という号令のもと、山形の宮大工と職人300人の手で完成。東北でも最先端の病院として利用されました。明治期に東北を旅し、旅行記を残したイザベラ・バードも完成直前のこの建築を見て、「大変立派な設備」と評しています。現在は史料館となっていますが、中庭から見た望楼は見事のひとこと。ぜひ内部をじっくりとご覧いただきたい建築です。

山形 旧済生会本館
円廊と望楼を組み合わせた面白いつくり

山形にはキリスト教文化も色濃く残ります。禁教令が出された江戸時代にも上杉米沢藩が幕府に対抗して弾圧を加えなかったことで米沢から山形、鶴岡と最上川沿いにキリスト教が伝播し、多くの信徒がいたと言われています。明治期になると海外から教師や医師が山形入りし、さらにキリスト教が普及しました。そんな明治の末期に造られたのがカトリック山形教会です。現在残る教会は大正末期の教会ですが、八角形の尖塔や、木をふんだんに使った内部など、レトロでありながら美しいつくりに驚かされます。

大正末期に建てられたカトリック山形教会
木造建築と洋風建築を融合させたつくり

今年世界遺産登録で話題の縄文文化。国宝の「縄文の女神」も山形に。

今年、北海道と北東北の縄文遺跡群が世界遺産登録され、話題になっています。山形の縄文遺跡は残念ながら世界遺産の構成遺跡にはなっていないのですが、国宝に指定される「縄文の女神」が出土したことで知られる西ノ前遺跡など、多くの縄文遺跡が残ります。国宝の「縄文の女神」は霞城公園の内部、山形県立博物館に展示されています。顔には何も装飾されず、頭巾をかぶったような頭部。スマートな姿、特徴的な足のつくり。「女神」と呼ばれるだけあって神秘的な雰囲気を醸し出しています。1998年に出土し、2012年に国宝指定された縄文土器の傑作です。

山形県立博物館にある「縄文のヴィーナス」
国宝登録書も展示されています。

御殿堰で名物そばをいただく。

山形の洋風建築を主にご紹介してきましたが、山形の江戸風情が残る訪問地も面白いところ。その代表が御殿堰

です。御殿堰は山形市内を流れる用水路を整備したもので、石垣と周囲の店が整備され、散策スポットとして人気です。なかでも御殿堰にあるそば処庄司屋は地元でも人気の店。挽きたて、うちたてにこだわったそばをいただけます。山形市のある村山地方は古くから田植えや収穫後に「そば振る舞い」をする習慣があり、そばの文化が発展。現在も「そば街道」などにその名残を残しています。雰囲気のある御殿堰七日町には、山形の伝統文化を受け継ぐやまがた舞子さんの姿も見かけることがあります。

御殿堰のそば

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