視察レポート
視察レポート
2021年07月12日
歌人が愛した江戸の宿と、500年続く伝統の旅籠を訪ねて
福島 伸彦
梅雨の晴れ間の週末、社長の松本とプランニングの吉田が山形・宮城の視察に出かけると聞きつけ、押しかけて同行してきました。秋の商品発表の前にコースの確認をすることが最大の目的でしたが、想定の旅程以外にも山形、宮城の様々な魅力に触れられました。今回は、特に印象に残った2つの温泉宿をご紹介します。
歌人が愛した江戸の宿。 和歌(うた)の宿 わかまつや
山形の大歌人、“歌聖”と謳われる斎藤茂吉。生涯に17冊の歌集を残し、1万8千首の短歌を詠んだと言われ、自然をこよなく愛し、その雄大さや美しさを綴った作品が多く残されています。生まれ故郷は現在の上山市。蔵王連峰の麓に位置しており、その鋭い感性を育んだのは厳しい自然美を見せる蔵王の大地と言えるかもしれません。東京に拠点を構えた後も、故郷の山形にたびたび帰省した斎藤茂吉がしばしば泊まったのが1655年創業、蔵王でも有数の老舗の宿、和歌(うた)の宿 わかまつやです。
ほうぼう視察をした後、わかまつやには、かなり遅めの到着となってしまった中、笑顔で暖かく迎えてくれたのが若旦那、斉藤亘さんとその奥様、若女将の彩果さん。お二人からは、蔵王温泉街や旅館の歴史についてのお話に加え、実は若旦那の一族は斎藤茂吉の遠縁にあたること、斎藤茂吉はそれもあって、この宿を利用してからすっかり気に入って贔屓にし、宿の中にはここで詠んだ直筆の作品が残されていることなど伺いました。
その後、山形の郷土料理も含めた美味しい夕食と温泉を堪能しましたが、さすがに「和歌(うた)の宿」、館内には斎藤茂吉の直筆の作品のみならず、和歌や俳句に関連する様々な展示がありました。各部屋には短冊と筆ペンのセットが準備されているので、歌心を刺激されてもいつでも一句したためられます。紅葉の秋、そして樹氷の冬の企画で利用しますが、わかまつやは蔵王温泉の中心部、高湯通りのすぐ近くに位置しているので、湯冷めせず、のんびりと3つの外湯巡りをお楽しみください。
開湯600年の伝統と格式。鎌先温泉:湯主一條
山形県のお隣、宮城県の白石市北西に位置するのが鎌先温泉。伝承によれば600年前に農作業中に鎌の先が地面にあたって温泉を掘り当てたことから名前がついたとか。その開湯とほぼ同時に創業したのが、今回訪れた「時音の宿 湯主一條」です。ここでは、二十代目の湯主である一條一平さんとその奥様、二十代目女将、千賀子さんが出迎えてくれました。そもそも一條家のご先祖様は京の公家の出で、戦国大名、今川義元に仕えていたが、桶狭間の戦いで敗れてからこの地にやってきて、温泉宿を創業したことや、蔵に残る古文書のことなど歴史ある家系ならではの様々な話を伺いました。
湯主一條の2つの魅力
湯主一條の魅力は様々あると思いますが、特に二つのことに心惹かれました。ひとつはその「別世界感」です。駐車場から温泉街を抜けて細い路地を上がった一番奥にあるのですが、周辺を森に囲まれている為、聞こえてくるのは風にゆれる森の木々のざわめきと鳥の鳴き声だけ。裏山のお散歩、或いは露天風呂でもこの別世界感が強く感じられます。
もう一つは、20代目一條一平さんの宿に対する並々ならぬ愛情、こだわりとプライドです。本館と別館は明快なコンセプトで使い分けられており、別館は宿泊者が快適に過ごす為に考え抜かれたティースペース(夜はバーラウンジになります)、2種類の温泉、そして最新の設備やアメニティーを備えた客室棟として整えられていますが、そこかしこに蔵から出てきた古美術品などがさりげなく置かれ、センスの良さが伺えました。別館から内廊下を渡ると、重要文化財に登録された本館にたどり着くのですが、個室料亭として利用されている本館は別館とはまるで趣が異なり、一気に大正時代にタイムスリップしたかのようです。
いただいた名刺には「20代目 一條一平」と書かれておりましたが、「一平」という名前は代々の一條家の長男が温泉を引き継ぐ際に襲名しているとのこと。そこで引き継がれているのは名前だけではなく、先祖伝来の地を愛し、訪れるお客様を歓待する「心」であり、宿泊されたお客様にきっとご満足いただけると感じました。
お気軽にお問い合わせください
電話相談はこちら
受付時間:午前9:30~午後5:30
- 東京
- 03-3501-4111
- 大阪
- 06-6343-0111
- 名古屋
- 052-252-2110
- 九州
- 092-473-0111
- 札幌
- 011-232-9111
- 藤沢
- 0466-27-0111