視察レポート

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2022年03月11日

知られざる巨大石窟「大悲山」へ 視察レポート

プランニング 吉田義和

未知なる仏教芸術を求め、福島へ

 日本から遠くインドの地で生まれた仏教。そのインドの地には、紀元前の時代から多くの「祈りの場」として石窟が彫られました。世界遺産にもなっているアジャンタ、エローラなどの石窟は、訪れた方も多いのではないでしょうか。インドから多くの僧によって東方にもたらされた仏教は、その途上で多くの信仰の民を生み、その各地にも石窟が彫られています。いわゆる「シルクロード」を旅する時、ベゼクリクやキジル、敦煌といった多くの石窟に、今もその信仰の証を見ることができます。そんな石窟寺院が、日本の、それも東北の地にもあった。ということは、あまり知られていないのではないでしょうか。入社以降中国シルクロードの担当として多くの仏教遺跡をご紹介してきた私は、福島の摩崖仏を紹介する書籍でその存在を知り、いても立ってもいられず早速現地へと足を運びました。

訪問の前に名物で腹ごしらえ

東京から、東日本大震災以降、9年ぶりに全線が開通した常磐線に乗って、いわきへ。いわきからは車で南相馬へ1時間の道のりです。いわきから高速に乗ると、常磐自動車道は福島県の浜通りを走ります。途中には「帰宅困難地域」も通り、震災から11年経った今でも生々しい震災の爪痕が垣間見えます。今回訪れたのは、南相馬南部、小高地区に残る「大悲山(だいひさ)」です。小高地区は南相馬の町よりも浪江に近く、途中でこの地区の震災復興の象徴的存在になっている「道の駅なみえ」に立ち寄りました。浪江や南相馬というと震災のイメージに直結するかもしれませんが、現在町は通常通りの賑わいを取り戻しており、道の駅にも多くの方が買い物や食事に訪れていました。浪江といえば、なんといっても全国的に知られる「浪江焼きそば」が有名。さっそく私もいただきました。

浪江町復興のシンボル、道の駅なみえ 地の産品やレストランがあり、地元の人々でにぎわいます。
名物焼きそばとして全国的知名度を誇る浪江焼きそば 太麺とラードのコクが特徴です。

敦煌を思わせる 圧巻の”薬師堂”の石仏群

食事をすませ、いよいよ大悲山へ。石窟を管理する南相馬市の教育委員会文化財課の藤木さんに同行いただき訪ねました。「石窟と山」という名前から、山深い印象があるかもしれませんが、実際は小高い丘の中腹にあり、駐車場から歩いてすぐ。通常の寺院見学と変わらない程度の歩きで見学できます。まずは樹齢千年という大杉に守られるように、ひっそりと造られた「薬師堂石仏」へ。保護のガラス戸を特別に開けていただき石窟内部に入ると、砂岩の崖を間口15メートル、高さ5.5メートルにかけて掘り抜き、4体の如来像と2体の菩薩像と飛天が浮き彫りされた圧巻の光景が眼前に。顔は石芯塑像のため剥落してしまっていますが、光背の線刻や彩色などもしっかりと残ります。「誰がいつ彫ったかは明らかになっていませんが、光背の火炎紋や唐草紋は東大寺盧舎那仏の台座に似ており、首の太さや衣の幅などから、平安前期のものと言われています。」と藤木さん。平安前期といえば中国の唐の影響く、大陸では洛陽の龍門や敦煌の莫高窟にも多くの石窟が残された時代。薬師堂石仏もまさに「莫高窟」へ来たかのような錯覚を覚える迫力です。「通常訪問した方はガラス戸越しの見学ですが、今回は石仏にご興味のお客様なので、当日も鍵を開けてお待ちしています。」と嬉しいご提案もいただきました。

薬師堂への途上には石窟を見守るような樹齢千年の大杉が。石窟までのアップダウンは写真の階段のみで、あまりありません。
大悲山、薬師堂石仏。通常はガラス戸越しに見学となりますが、ツアーでは特別に内部参観をお願いしました。
薬師堂内部にて。藤木さんと。人と比べると大きさが分かります。
石窟内で細かく見ていくと、光背や飛天の線刻や彩色なども分かります。1000年の経過を感じさせない保存状態です。

日本最大級!9メートルの巨大千手観音像が彫られた”観音堂”

 その後、薬師堂から徒歩3分程度のところにある「阿弥陀堂石仏」へ。ここにはかつて阿弥陀如来が彫られていたそうですが、現在は剥落してお堂が残るのみとなっています。最後に薬師堂、阿弥陀堂から車で2分程度の所にある「観音堂石仏」へ。ここはお堂の外観からして大規模なのが一目にわかる規模。大悲山の本尊であったとされる千手観音坐像が刻まれています。こちらも剥落が多いですが、残る千手観音の頭部や手の姿から推定される大きさはなんと9メートル。日本最大の石仏が平安期にこの地に刻まれていたのです。その左右にはシルクロードの千仏洞の如く、鮮やかな化仏が彫られています。「頭の上に化仏を捧げる手の配置から平安期の清水寺本尊をルーツとする清水型千手観音と言われています。」と藤木さん。同型の平安時代の仏像は中尊寺にも残されており、大陸と都、そして東北の繋がりを今に感じる石窟です。

敦煌の石窟寺院のような観音堂の外観。
剥落も激しいですが、スケールの大きさが伝わってきます。
シルクロードに残る千仏洞を思わせる化仏
頭上に化仏を捧げた「清水様式」の手の形がよく分かります。

南相馬観光局の方とも打ち合わせ

 大悲山から車で20分。南相馬の町の中心に位置する南相馬観光局へもご挨拶に伺いました。観光局は明治、大正、昭和の蔵建築が残る旧松本銘醸の建築物を再生した「野馬追通り銘醸館」に位置します。ツアーでは銘醸館の中にある古民家の食事処「食彩庵」にてお召上がりいただく行程にいたしました。食後には観光局の方に南相馬の文化について懇話的にお話しいただく機会も設けさせていただきました。せっかくなので、懇話の時間には南相馬の地元の和菓子の名店「松月堂」の銘菓をご用意して、お茶と共にお楽しみいただこうと思います。また、今回は閉館中でしたが、南相馬市博物館も訪れます。南相馬といえば、野馬追の祭りで有名。博物館で野馬追の文化にも触れていただきます。

 グループでの訪問の際は、郡山を宿泊の拠点とし、いわきに残る福島県唯一の国宝建築物「白水阿弥陀堂」も訪れる行程としました。阿弥陀堂は平安後期に流行した阿弥陀堂を中心都市、中央に池を配した「阿弥陀式庭園」(平等院鳳凰堂が代表)を今に残す貴重な史跡です。あわせてぜひお楽しみいただければ幸いです。

街の中心にある南相馬観光局
観光局の比護さん(右)と吉田(左)
街の中心部には古い蔵造り建築も残ります。
南相馬を代表する松月堂の銘菓も現地でご用意しました。
南相馬市博物館では、解説員の方から野馬追について語っていただく時間も設けました。
福島県唯一の国宝建築「阿弥陀堂」は貴重な平安時代の史跡です。

「大悲山」を訪れるツアー 【驚きの巨大石窟「大悲山」を訪ねて】

「大悲山」の旅に連続参加可能な旅もございます。【日本遺産を訪ねる 仏都会津の名刹と会津五街道の旅】

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