佳景・名景・絶景

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2021年08月14日

終戦の日を前に。(旅行業は平和産業)

『旅のひろば』編集部 上釜一郎

 

パラオの世界遺産「ロックアイランド」中でもなかでも最も美しいと言われている地が、「セブンティアイランド」。保護区のためボートでも立ち入ることはできません。セスナからのツアーでは上空から見ることができます。

明日、8月15日で終戦から76年を迎えます。
コロナのことで頭がいっぱいになっていますが、今日は平和について考える日にしたいと思います。海外旅行はもう少し先ですが、様々な国に行くとどこかに戦跡があります。人目に触れずひっそりと残されているものもあれば一つの観光地になっている場所も。印象に残った場所はたくさんあるのですが、今回はそのうちの2か所を紹介します。
 一つ目はパラオ共和国。現在はマリンリゾートの地としてダイバーに人気ですが、かつては太平洋戦争の激戦地で特にぺリリュー島は両軍に多くの戦死者を出しています。島内には一部、海中を含め当時の航空機や戦車、基地の跡がが残っています。初めて訪ねた30数年前は当時の戦争を知る語りべも多くいらっしゃいましたが、現在は存命の方はどんどん少なくなっているようです。

海中に残された太平洋戦争当時の戦闘機
1944と書かれた戦車
追悼の墓標
世界遺産「アンコールワット」この近くにもかつては多くの地雷が埋められていました。今やカンボジアの観光産業を支える大きな柱に。

もう一つの国はやはり一番関わりを持ったカンボジアです。対人地雷の問題に関わっている頃訪ねましたが、地雷原を実際に歩き、除去の現場に合宿し、毎日被害者が運ばれる病院の手術室、またそこで亡くなっていく方々、そして義足を作りリハビリを続ける多くの人々を目の当たりにし大きな衝撃を受けました。当時はポルポトもまだ生きていて難民の帰還も安全な土地がないため困難を極めている状況でした。

ソ連製の対人地雷
炎天下、緊張を強いられる除去の現場
発見した地雷を爆破処理
万全ではない医療状況も困難を極めていました
土地があるのに耕せない彼らの糧はWFPが届ける食糧援助でした
除去が終わった土地では、今精一杯稲が育っています
筆者が取材していた地雷除去チームの隊員たち。所属は故ダイアナ妃がアンゴラで訪ねたこともあるHALO Trust(Hazardous Area Life-support Organization Trust 危険地域人命救助機構)写真右はICRC赤十字国際委員会が運営するリハビリセンターにて

他にもこの数十年で平和になり私たち観光客が気兼ねなく訪れることができるようになった国や地域は増えた一方で、内戦によって状況が悪化した国も少なくありません。よく「旅行業は平和産業」と言われますが、単に平和だから訪ねることができたからよかったというのではなく、やはり私たち旅行者としても相互理解や文化交流を通して、意識していかねばと感じています。「貧困」と「格差」が深刻な社会課題となっている国々では、観光業は裾野が広く、経済波及効果が高い産業で、様々な社会的悪循環を断ち切る効果が期待できます。
終戦の日を前に、平和への思いをもう一度胸に刻み、また、旅行業のあり方を考えてみたいと思います。

※掲載している人物写真につきましては、それぞれ署名入りの撮影および使用許可を頂いております。

1990年の第一次湾岸戦争直後のイスラエル、エルサレムにて。通りではイラクからのスカッドミサイルの破片が売られていました。
【上釜一郎】プロフィール
1964年奈良県生まれ。旅行誌(マガジンハウス/ガリバーほか)からファッション誌(集英社/ COSMOPOLITAN JAPANほか)、広告写真等のカメラマンとして活躍。また、『南オーストラリアのユートピア アデレード』(弊社菊間著・新潮社)『マカオ歴史散歩』『新モンゴル紀行」(ともに弊社菊間著・新潮社とんぼの本)の写真等も撮影。現『旅のひろば』編集部で、各地の視察も行っている。過去には紛争地や、対人地雷問題の取材などの取材経験も多数。1997年にノーベル平和賞を受賞した地雷廃絶国際キャンペーン(International Campaign To Ban Landmines=(ICBL))の日本キャンペーン(JCBL)元運営委員。
現在ワールド航空サービスの知求アカデミー講座で、写真講座の講師も務める。

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