歴史ある風景
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2021年08月10日
長崎、五島列島 美しき教会群 その2 江上天主堂とキリシタン洞窟
本社 プランニング事業本部:乗田憲一
大小140もの島々で形成される五島列島。中心となる5つの島のうち、福江島と中通島を除く、3つの島、久我島、奈留島、若松島の3島は定期船の本数も少なく、訪問すること自体が中々難しい場所にあります。
その中でも私が好きな場所が二つあります。まずひとつ目は、建築面での美しさから気に入っています。奈留島にある、江上天主堂です。1918年、50戸あまりの信徒が共同し、キビナゴの地引網で得た資金で建てられました。日本における教会建築の父・鉄川与助に依頼。クリーム色の外壁や水色の窓枠がアクセントの、教会というより、1軒のお家のような佇まいが素敵です。今では少ない木造建築の素朴な教会で、コウモリが羽を広げたような天井は賛美歌の声を美しく響かせるためのもの。柱に描かれた文様や光を巧みに操る技法など文化財としても十分に価値の高い建築様式です。
もう一つは若松島。明治初期に吹き荒れたキリシタン弾圧の嵐のなか、里ノ浦地区のキリシタン、山下与之助、山下久八らは迫害を逃れるために「船でしか行くことのできない」洞窟に身を隠して苦しみに耐え、必死に信仰を守り続けました。しかし朝食を炊く煙が沖を通る漁船に見つかり、捕まってしまいました。この先人たちを偲び、その悲しみを永く祈念するために1967年、洞窟入口に高さ4mの十字架と3.6mのキリスト像が建てられました。
洞窟は若松港から瀬渡船で10分ほどのところにあり、奥行き50m、高さ5m、幅5m。よく見ると十字の形をしたドーム型洞窟で海岸からは入口が見えないこの場所は格好の隠れ場であったといえます。船上で波に揺られながら、この洞窟を見上げると、ここまでの苦労をして信仰を守り抜こうとした彼らの強い精神力に感服します。毎年11月、土井ノ浦教会の信者を中心に100名ほどが上陸し、ミサを行い、祈りを捧げています。
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