歴史ある風景

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2021年07月13日

日本絵画ルネッサンス「空間プロデューサー」円山応挙

本社 プランニング事業本部:乗田憲一


江戸時代、圧倒的な人気を誇った絵師、円山応挙(1733~1795)。日本絵画に革新をもたらしました。私の大好きな絵師です。農家の次男坊が研鑽を積み、当代きっての絵師として御所の出入りを許されるまでに上りつめた、まさに絵画界の下克上を成し遂げた人物です。

円山応挙_近世名家肖像
穴太寺(画像提供https://photo53.com/anaoji.php)

応挙の特徴は何と言っても「写生」。当時の日本絵画は「狩野派」に代表されるような伝統技法で描かれるのが一般的で、古典の素養がないと理解するには少々難しい。

それに対し目の前の対象物を見て描く応挙の「写生」はわかりやすく、幅広い層に人気を博しました。また平面的な構図が中心だった日本絵画に「奥行き」をもたらし、「空間の画家」とも評されます。この「奥行き」は、西洋で言うとルネッサンス時代に確立した「遠近法」くらいのインパクトです。

最後の晩餐 遠近法の一つである一点透視図法 (消失点が設定され、全ての線が中央に集約する構図になっている)

私が応挙を尊敬するのは、この技術だけでなく、その人柄です。農家の次男坊で金剛寺に奉公、絵を描くのが好きな応挙をみて、住職は京都の玩具屋に奉公に出し、その主人もまた応挙の才能を見抜き、狩野派の画家の元へ習いに行かせたり…。若き日の応挙を贔屓にした大乗寺の密蔵上人は、絵の修行に出る費用も出したと言います。才能がいくらあっても人に愛される人間性がなければこれだけの庇護はなかったでしょう。それだけ、彼が人間味に溢れた人物だったのではないかと思うのです。

狩野永徳筆 唐獅子図 宮内庁三の丸尚蔵館

彼は、若き日の恩を忘れませんでした。56歳の時、金剛寺に本堂全面の襖と壁面に「山水図」「波濤図」「群仙図」を描き、寄進。大乗寺へは165枚にも及ぶ襖絵を描き、寄進しています。襖絵は仏間の十一面観世音菩薩を中心に、13の部屋が仏の世界(曼荼羅)を立体的に具現するよう構成されています。

©金剛寺 円山応挙『群仙図』
円山応挙が晩年に手掛けた孔雀の間 ©大乗寺

円山応挙 芭蕉の間©大乗寺

襖というカンバスに留まらず、その絵は連続性を持って境内、庭、さらに日本海まで果てしなくつながっていきます。美術展などで襖絵だけを見ても決してわからない、全体としての美。応挙の空間プロデューサーとしての才が存分に発揮されている傑作です。

金剛禅寺・応挙寺とも呼ばれるお寺(画像提供https://photo53.com/kongoji-kameoka.php)

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