歴史ある風景

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2021年06月29日

長崎・外海 陸の孤島で信仰を守った、ある宣教師の想い

本社 プランニング事業本部:乗田憲一

ヨーロッパに出かけることがなくなり、日本国内でキリスト教関係に触れることが増えたせいか、学生の頃に「キリシタン大名」という言葉だけ覚えていた大友宗麟や大村純忠などを最近、身近に感じます。

キリシタン大名として知られる大友宗麟像(瑞峰院所蔵)
風情ある臼杵二王座の町並みは、大友宗麟の丹生島城に始まり、江戸期に町筋が造られたものです

日本は伝来してすぐに禁じられたので、不遇の時代の方がまだ長いくらいです。キリシタン大名、大村純忠の藩領であった辺り、長崎の西の外れに外海があります。陸上交通手段なく「陸の孤島」であった地域。ここは聖画や教議書、教会暦などを密かに伝承し、信仰を守り続けた集落。キリスト教解禁後、数千人規模の隠れキリシタンがいたことで知られています。

禁教期に小規模な潜伏キリシタンの信仰組織が連携し、自分たち自身で信仰を続けた集落である外海

江戸から明治への転換期に、日本へ来日したフランス人宣教師ド・ロ神父は1879年、外海の司祭となりました。極貧であるにも関わらず、信仰心の強い村人たちを救済したい。彼は信者と力を合わせ、1882年、出津(しつ)教会を完成させます。強い強風に耐えられるよう屋根を低くした木造平屋、漆喰の白い外壁は山の緑に映え、とても優美です。

国の重要文化財に指定されており、ユネスコの世界遺産にも登録されている出津(しつ)教会
外海の主任司祭として赴任
救助院の設立など様々な福祉活動を行ったド・ロ神父
出津救助院
※写真掲載については長崎大司教区の許可をいただいています。

この集落での長きにわたる「潜伏」が終わり、新たな時代を迎えたことを象徴しているように思います。慈善事業にも力を入れ、出津救助院など創設。また17年かけて畑を開墾し、道路を造り、波止場を築きました。彼が尽力して創りあげた町並みは「長崎市外海の石積集落景観」として国の重要文化財に登録されています。

信徒のためにド・ロ神父が設計し、私財を投じて信徒とともに建てられた大野教会は、「長崎市外海の石積集落景観」構成遺産の一つ
遠藤周作の小説『​沈黙』の舞台ともなった黒崎の地に建つ
黒崎教会

故郷フランス・ノルマンディー地方の風景と、外海とを重ね合わせてくれたのかなと想像しながら、神父の想いの詰まった集落を歩くと、何だか感慨深いものがあります。

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