歴史ある風景
歴史ある風景
2021年04月06日
奥美濃の小京都・郡上八幡は内陸なのに「水の都」?
本社 プランニング事業本部:乗田憲一
岐阜県中央に位置する郡上八幡。夏の風物詩「郡上踊り」や名城・郡上八幡城で知られます。
今見られる町並みは17世紀、町が全焼したのを契機に町を再建したもの。4年かけて防火に配慮した城下町を整備しました。京に倣って区画割され、各辻の突き当りには城下の防禦のために寺を配置。家々は間口が狭く奥行きの深い長い京町屋スタイルに。通りの両側に設けられた水路には川から引き入れた水を豊かに湛え、防火用水、そして生活用水として人々の生活を支えてきました。これがこの町が「水の都」とも言われる所以です。
町中に網の目のように巡らされた水路は、いわば人工的な水の循環システム。家の前の水路に堰板をはめ水位をあげ、洗い場に。水舟と呼ばれる段差のついた水槽に湧水を引いて、上段は飲用や野菜洗い用、下段は食器洗い、流れ出たご飯粒などは魚の餌となり、水は自然に浄化されて川へと流れ込みます。「SDGs(=持続可能な開発目標)」と最近よく耳にしますが、郡上八幡の伝統的な暮らしと水利用のシステムはそれを何百年も先取りしているかのように私は感じます。
また水路沿いに遊歩道が設けられた「いがわ小径」にはカワドと呼ばれる共同の洗い場があって、昔も今も女性たちの社交の場。夏には清冽な水の中にスイカが沈められ、天然の冷蔵庫にもなります。余談ですが、「日本名水100選」の第1号に指定されたのは郡上八幡の「宗祇水」、市内には100以上の泉がわいているそうで、まさに「水と共に生きる町」です。
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