町並み百選

町並み百選

2021年07月29日

3つの重伝建を持つ町 高岡 

プランニング事業本部 吉田義和

日本全国に現在123か所が登録されている重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)。中でも古い町並みが広範囲にわたって広がる町では、ひとつの街に複数の重伝建地区が登録されることがあります。ひとつの町に4つの重伝建を持つ町は、京都、金沢、そして萩と、日本を代表する古い町並みが広がる3都市ですが、それに次ぐ3つの重伝建を持つ町が「高岡」です。今回は、富山と金沢の中間に位置する歴史の町高岡をご紹介いたします。

万葉故地から前田家の城下町へ

高岡は、富山県西部、富山市と金沢市の中間に位置し、かつては越中国の中心的役割を果たしていました。西暦746年、この地に赴任し、5年間、越中守として政務を執ったのが大伴家持です。万葉集に歌人最多の473首を残した家持は、ここ越中国で223首を詠んだと言われ、古くから万葉故地として知られていました。

その後、高岡の地を整備したのは加賀前田家二代目当主の前田利長です。織田家の重臣、前田利家の長男である利長は、金沢城を居城としていましたが、のちの富山城に隠居。富山城の焼失に伴い、高岡城を中心に町を整備しました。町の整備の際、高岡の産業振興のために鋳物職人や加賀の商人を高岡に集めたと言われています。これからご紹介する重伝建地区も、その際の利長の政策によって出来た町並みです。

高岡駅前に残る大友家持の像
国宝指定を受ける前田利長の菩提寺「瑞龍寺」

町に残る3つの重伝建

2020年、高岡北郊外、吉久の町並みが重伝建登録され、高岡の町に3つ目の重伝建が誕生しました。「山町筋」「金屋町」そして「吉久町」、近くにありながら、3つの町は異なる町の特徴を持ち、巡ってみるのも楽しいです。特に「山町筋」と「金屋町」は徒歩でも5分程と至近です。一番高岡の中心部に近い山町筋は、五箇山などの山間部から運ばれた糸を卸す商家などが並ぶかつての商業エリア。間口の狭い妻入りの町家とは異なり、平入り(家の間口の広い所に入口のある)の土蔵造りの商家が立ち並ぶ迫力のあるつくりが特徴です。対して「金屋町」は高岡の町を整備した利長の時代に鋳物職人が集められて鋳物街として造られた町。現在でも鋳物職人が多く暮らす風情ある千本格子の家並みが特徴的。鉄道のCMで吉永小百合さんが撮影したことでも知られています。夏には各軒先に風鈴が並び、涼やかな音を奏でていました。最新の重伝建である「吉久町」は他の2つの重伝建から5㎞ほど離れた、庄川と小矢部川の畔にあり、江戸から明治にかけて富山平野の米を大阪に送る廻船が船をつけた湊町。多くの米商家が並んでいました。市街地から遠いため、最も古くからの素朴な風情を残す町並みです。

大きな土蔵造りの商家が並ぶ山町筋
千本格子のつくりが美しい鋳物街「金屋町」
鋳物職人の職人街、金屋町
かつての米商家が並ぶ素朴な吉久町
重伝建巡りには市電「万葉線」が便利です。

高岡を起点に魅力的な鉄道旅へ

高岡からは、富山、金沢を結ぶ幹線の他、魅力的なローカル鉄道が2本出ています。氷見(ひみ)線と城端(じょうはな)線です。城端は富山県の内陸部、五箇山で生産された生糸を加工した織物の町。氷見は言わずと知れた「寒ブリ」の港町。2つの特徴的な町へ、それぞれ30分程度の鉄道旅が楽しめます。車窓からの景観も美しく、城端線では砺波の散居村(家の周りに田畑を設けるため、広大な田畑に民家が散らばって形成される景観)が、氷見線では海と立山連峰を共に楽しめる雨晴海岸が楽しめます。週末には観光列車べるもんた(ベル・モンターニュ・エ・メール)が運行しています。(土曜日は城端、日曜日は氷見)列車の中に寿司職人が同乗し、鉄道旅と富山湾の新鮮な寿司を同時に楽しめる特別列車です。冬にはべるもんたを利用した旅も計画中ですので、ぜひお楽しみに。

観光列車「べるもんた」
富山の人気店「とやま寿司」の職人が握る寿司も楽しめます
緑の美しい砺波の散居村
立山連峰を望む雨晴海岸も車窓からⓒ(公社)とやま観光推進機構

この記事に関するキーワード

お気軽にお問い合わせください

電話相談はこちら

受付時間:午前9:30~午後5:30

東京
03-3501-4111
大阪
06-6343-0111
名古屋
052-252-2110
九州
092-473-0111
札幌
011-232-9111
藤沢
0466-27-0111