視察レポート

視察レポート
2026年02月19日
【視察レポート】アイヌの記憶 道東カムイの世界
一万年、口伝により伝わってきたアイヌの記憶をたどり
カムイ宿る道東の地へ
2026年2月1日~3日 視察者:菊間陽介、吉田義和
「カムイノミ」を主宰するアト゚イさんを訪問
2024年6月に企画した「初夏の北海道再発見の旅」で二風谷を中心としたアイヌの文化や芸術にふれ、より「アイヌ民族とは何か」「アイヌの世界観とは何か」に興味を持った私たちは、縁あってご紹介いただいた屈斜路に住むアイヌのエカシ(長老)アト゚イ(Atuy)さんを訪問することができました。1945年生まれで現在80歳のアト゚イさんは、子どもの頃から大変好奇心旺盛で、明治生まれのアイヌのエカシ(おじいさん)やフチ(おばあさん)の話を聞いて育ち、当時のアイヌの考え方や伝統、風習、食文化などを生の経験として今に伝える貴重な存在です。このたびの視察では、アト゚イさんの考えるアイヌの世界観や、カムイノミ「絶滅危惧種鎮魂祭」についてお話を伺いました。ツアーでも鎮魂祭会場でアト゚イさんにお話いただきますが、今回伺ったお話の一部を抜粋してご紹介します。


【現代にある2つのアイヌの世界観】
アイヌの世界観には、現代のアイヌの世界観と、明治時代まで培ってきた世界観の2つあるのです。日本人側からすると1つに見えるでしょうけれど。私の話す内容は、古代のアイヌの精神世界の世界観をベースとし、現代にその実践をして日常生活を少しでも豊かにし、現実に活かせるようにというものです。 今はアイヌの法律ができて、巷ではアイヌの支援金を目当てにしたり、行政が特産品を手がけて政府のお金を使ったり、普段は日本人と変わらない生活なのに儀式の時だけ急にアイヌになって踊ってお金をもらう、というような「生活して金を得るためのアイヌ文化」がほとんどなのです。 しかし、私たちのグループはアイヌの精神文化をベースにして、自分自身がまず幸せになり、結果として社会にお伝えできればという形を大切にしています。
【日常からルーツや考え方をを考える】
皆さんは北海道にアイヌ民族がいることは知っていますが、どのような思想や信仰を持った人々なのかはほとんど知らされていません。これは皆さんの責任ではなく、て教えられてこなかったからです。 例えば「カムチャッカ」。これはアイヌ語で「カム(肉)」「チャッカ(切断して干す場所)」、つまり保存食を作るのに素晴らしい場所という意味です。 日本各地に、アイヌ語で説明できる地名も多いです。例えば「富士山」、あれはアイヌ語では「フチ・ヌプリ」と言います。「フチ」は火の神様、おばあさん。「ヌプリ」は山。「神なるおばあさんの山」という意味です。こういった地名のように、日本列島についている古い地名は、アイヌ語でなければ解読できないものがたくさんあります。私が子どもの頃からおばあちゃんたちは、「今の日本人が使っている言葉(日本語)は、遠い国から来た和人の言葉と、日本列島に住んでいた先住民族(アイヌ)の言葉が混ざり合ってできたものなんだよ」と話していました。同様に、自分のルーツは何か、自分がどのような哲学を持っているのかを考えることはとても大事なことです。
アイヌ社会には階級制度がなく、人が人を教えるという概念もありません。「ウレシパ(互いに育て合う)」、つまり異なる価値観の美しさをお互いに発見する努力をするのです。その際、自分の価値観を相手に押し付けません。 縄文時代が1万年も平和に続いたのは、武器が出てこないことからもわかるように、こうした「異なる価値観を認め、支配しない」という哲学思想があったからではないかと言われています。未来の平和を作るためには、この「異なる価値観の美しさを発見し、押し付けない」という精神が重要だと思います。
【カムイノミ 絶滅種鎮魂祭について】
私が魚釣りをしていた時に、ふと「人間は死んだら供養するのに、人間が滅ぼした動物たちの供養は誰もしない」と気づきました。そこで、絶滅した種や絶滅に瀕しているシマフクロウ(コタンコロカムイ)へのレクイエム(鎮魂歌)を作曲しました。 それをお祭りにしようと思い、京都の神社の宮司さんと相談しました。アイヌにも神道にも「絶滅した種を祀る」儀式はなかったので、「じゃあ新しく作ろう」と。 思想や宗教の垣根を越えて、人間が犯した罪(自然破壊)を素直に認め、反省し、感謝する祭り。「反省と感謝の祭り」として、今年で26回目を迎えます。今回お越しいただく皆さんにも、儀式を通じ自然との向き合い方についてアイヌの精神を感じ、何かを持ち帰っていただけたらと思います。
アト゚イさん自慢の創作アイヌ料理フルコースをいただく
アト゚イさんは屈斜路湖畔で「丸木舟」という宿を営んでいますが、その丸木舟の名物がアト゚イさんと家族、スタッフが手掛ける「創作アイヌ料理フルコース」です。アイヌ料理というと、野生味のある料理のイメージを持たれるかも知れませんが、ここの料理は「フルコース」というより懐石をしっかりといただくようなイメージで、全国で様々な食を体験した我々でも、「これはうまい!」と思わず言ってしまうほどの絶品の数々。8品の料理をあっという間に平らげてしまいました。アイヌの伝統を受け継ぎつつ、自然の恵みを生かした料理はぜひ皆様にもご体験いただきたいと思います。




釧路でアイヌ文化を知る
【春採生活館での釧路アイヌ保存会との交流】
カムイノミの前に、釧路ではアイヌ文化に理解を深めるプログラムを考えています。今回は、釧路市にある「春採生活館」を訪れ、釧路に暮らすアイヌの人々「釧路アイヌ保存会」の皆様とお会いしました。お会いしたのはアイヌ刺繍や伝統楽器トンコリの演奏を行う桃井芳子さんとアイヌ工芸の優秀工芸師である伊藤夕美さん。ともに釧路を中心にアイヌ工芸や食文化などを伝える活動を行っています。訪れた際もアイヌの人々がお茶として味わうシケレベの実を味見させていただいたり、桃井さんやメンバーが作ったアイヌ刺繍の衣装などを見せていただいたりしました。当日は全国からいらっしゃる皆様にアイヌ文化を知っていただけるよう、アイヌ衣装の着付けや、トンコリ、ムックリといったアイヌ楽器体験など、文化を身近に感じるプログラムをと打合せしてきました。


【釧路市博物館でアイヌ文化にふれる】
釧路のアイヌ文化を知るうえで外せないのが釧路市博物館です。屈斜路湖から釧路川、湿原を渡った丸木舟をはじめ、アイヌの衣装や民具などを展示。サハリンから入った服や靴、本州から交易で渡ってきた家紋入りのお櫃や刀などもあり、交易の民として外の文化と繋がっていたことが伺えます。ツアーの当日は職員による解説もお願いしてきました。

他にも「冬の北海道」を色々視察してきました!
6月のツアーの視察以外にも、せっかくの冬の北海道ということで、北海道の冬の体験を様々視察してきました。流氷をのぞむ砕氷船おーろら号、オホーツク海岸を走る釧網本線、タンチョウの暮らす鶴居村など、来期の冬のツアーを今から準備してまいります。近年冬の北海道といえば! というほど人気の小鳥「シマエナガ」を全世界に広めたカメラマン、山本光一さんとの出会いも大きな収穫でした。来年の冬の北海道の旅にもぜひご期待ください。




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