視察レポート

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2022年04月06日

汽笛の音と共に いざ郷愁の”旅路”へ  東北の想いを乗せた「SL銀河」乗車体験記

プランニング 吉田義和

旅情あふれる蒸気機関車で 大自然を走る

 1974年の全面廃止まで日本全国で人を、貨物を運ぶ輸送の最前線で活躍してきた蒸気機関車。横浜から新橋まで日本初の鉄道が敷設されて150年経った今年、改めて蒸気機関車の魅力を再発見する旅を設定いたしました。SLの旅というと、移動手段としての鉄道というイメージがあるかもしれませんが、「SL銀河」はJR東日が運行する「のってたのしい列車」をコンセプトとした観光列車で、乗車中にも旅の楽しみがたくさん。懐かしい汽笛の音と共に長閑な田園風景や緑豊かな渓谷を走る姿は、SL旅ならではの旅情を感じさせます。

三陸復興のシンボル「SL銀河」 に乗車

 SL銀河は三陸地方の観光面からの復興を目指して2014年に運行を開始した観光SL鉄道です。花巻出身の宮沢賢治の世界をモチーフに、フェラーリなどの工業デザインで知られる奥山清行氏が手掛けた美しい車体も話題となりました。6月の旅では乗車前日に花巻に残る宮沢賢治ゆかりの地や資料館を訪ねますので、車内の展示もより魅力的に映るのではないでしょうか。

美しい外装にもご注目ください。
入線するSL銀河

 今回は新花巻駅から釜石までの乗車を楽しみました。煙突から煙を上げて新花巻駅に入線する迫力は、SLならでは。客車を牽引する機関車のC58 239は1940年に製造されたもので、1972年の引退後岩手県の県営運動公園に39年間静態保存されていましたが、復興への東北の人々の想いから2年かけて整備され、奇跡の復活を遂げました。駅でも機関車の前には写真を撮る人々で熱気に溢れています。機関車だけでなく、客車の車体にもご注目。4両の客車は童話の世界から飛び出したような天の川の星座や動物が描かれ、『銀河鉄道の夜』の世界に紛れ込んだような雰囲気を味わうことが出来ます。すべてブルーで統一されていますが、8色の青を使い分け、朝から夜への流れを感じられるつくりになっています。スタッフの歓迎をうけながらまずは指定の席へ。客車は宮沢賢治の生きた大正から昭和の世界観でデザインされ、 ガス灯風の照明やステンドグラスがレトロで上品なつくりで、落ち着いた空間となっています。乗車後は、世界初という車内プラネタリウムの整理券を取得。1号車に備え付けられたプラネタリウムでは、時間ごとに上映されるプラネタリウムで「銀河への旅」を楽しむことができます。

レトロで上品な内装の客車
車内でプラネタリウムが楽しめる特徴的な車両です。写真提供:JR東日本

 汽笛の音と共に鉄道がいざ出発。SL銀河が走る路線は花巻~釜石間を結ぶ釜石線で、宮沢賢治が『銀河鉄道の夜』の沿線モチーフとしたのは前身の岩手軽便鉄道だと言われています。のどかな田園や里山が続き、初夏から夏にかけては緑の稲穂が風に揺れて非常に爽やかな風景です。最初の見どころは新花巻から30分ほど走行したところにある「宮守駅」。この手前でSL銀河を象徴する宮守川橋梁です。めがね橋とも言われる特徴的なアーチ橋で、SLが走る姿を一目見ようと多くの人々が集まり、手を振ってくれます。宮守駅では列車の点検のため10分ほど停車。ホームに降りて賢治の作品に多く登場するエスペラント語で書かれた駅名標や機関車をゆっくりと撮影するのもよいでしょう。宮守川橋梁や宮守駅に限らず、沿線の人々が笑顔で手を振ってくれるのも東北ならではの心温まる沿線風景です。

宮守川橋梁(めがね橋)を走るSL銀河
点検作業をする機関士

 乗車から1時間半ほど。途中の遠野駅では機関車への給水作業のため1時間ほどの停車時間が設けられています。柳田國男が遠野に伝わる伝承や民話をまとめた『遠野物語』で知られる遠野。駅から徒歩10分圏内には柳田國男が晩年を過ごした隠居所や昔話に触れる「とおの物語の館」や「遠野城下町資料館」、物産館などがあり、ちょっとした散策を楽しむことが出来ます。お土産には老舗和菓子屋「まつだ松林堂」の明けがらすや、ユニークな「カッパ捕獲許可証」などもおすすめです。ちょうどお昼時なので遠野で簡単な昼食をとることもできますが、ツアーでは遠野の散策時間もお楽しみいただくため、車内でお弁当をご用意させていただきます。

遠野駅は物産館も併設。ゆっくりとお買い物も。
遠野駅周辺の散策も楽しめます

 遠野を過ぎると、人里は少なくなり左右に山々が連なる自然豊かな景観が広がります。かつて銅山で栄えた上有住、陸中大橋に停車し、一路釜石へ。陸中大橋駅の手前ではこの地最大の難所、仙人峠を越えていきます。実に300メートルもの高低差を越えるため、線路をΩ型にした珍しいΩ(オメガ)ループを走ります。蒸気機関車も一層出力を上げ、汽笛を鳴らしながらの峠越えです。そして15:10に釜石駅到着。4時間半のSL銀河の鉄道旅は幕を閉じます。釜石駅は三陸鉄道との接続駅。ツアーでは三陸鉄道の乗車も楽しむ行程です。

仙人峠へ 鉄橋を走るSL銀河
釜石からは三陸鉄道の旅へ

 残念ながら、2023年春に運行の終了が決まったSL銀河。今だからこそ楽しめる鉄道旅へ お出かけください。

 

運行終了まであと僅か! SL銀河に乗車する旅はこちらから

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