町並み百選
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2021年11月04日
世界遺産・五箇山の街並み
プランニング事業本部 吉田義和
以前、日本の原風景ともいえる茅葺の集落京都の「美山」をご紹介しました。美山も美しい村の風情を持ちますが、もうひとつ日本の原風景的な集落を挙げるとするならば「合掌造り集落」を外すことはできません。飛騨地方から越中にかけて村が点在していますが、風情ある古民居が残り、世界遺産にも登録されているのが「白川郷」と「五箇山」です。今回は、素朴な山里の姿を今に残す「五箇山」をご案内いたします。
雪質によって異なる合掌造りの屋根の角度に注目
「合掌造り」。その独特な構造は、その地方の気候や風土から生まれたものです。冬季のの豪雪に耐えるため、茅葺の屋根が三角形に造られ、まるで両手を合掌しているかの様に見える合掌造り。五箇山ではその角度は60度になるように統一されています。この角度は現在の力学上でも上、横からそれぞれからかかる力に最も耐えられる角度といわれ、当時の人々の長年の経験が生み出した奇跡的な構造と言えます。地方ごとの雪質によって若干差異があり、雪質の軽い白川郷のほうが、五箇山よりも傾斜が軽く作られています。また、多くの合掌の屋根は東西に斜面を向けており、日照によって午前は東面、午後は西面の雪を解かすような構造となっています。ぜひ同時に訪れた際は、その屋根の傾きにもご注目ください。
加賀藩の特産を生み出した五箇山集落
五箇山集落は、富山県西部の町高岡から車で1時間ほど走った山中に位置しています。周囲は庄川と利賀川に囲まれた急峻な渓谷となっており、現在でも「山深い」と思わせるほどの場所にあります。集落は主に2か所が知られており、合掌造りが20棟ほど残る大きな集落が相倉(あいのくら)、7棟ほどの小規模な集落が菅沼(すがぬま)です。どちらもこの地方の山里の風景を色濃く残しており、世界遺産に登録されています。五箇山や白川郷は訪日観光客にも「日本を代表する景観」として人気ですが、その歴史は古く、1930年代にはドイツの建築家「ブルーノ・タウト」が自身の著書で合掌造りを合理的な建築と絶賛し、海外でもその名が知られるようになったと言われています。合掌造りは単に住居としての役割だけでなく、屋根裏では養蚕業、そして床下では焔硝を造っていました。焔硝は火縄銃の火薬として使われる軍事物資であり、土に蚕の糞などを混ぜて発酵させて作るこの地方独特の産品で、周囲の村とは隔絶された五箇山だからこそ加賀藩も幕府に秘密裏に製造できたと考えられています。この山奥から、百万石の栄華を誇った加賀藩の特産が生み出されていたのです。
五箇山最大の集落 相倉を歩く
20の合掌造り建築を今に残す相倉集落を歩いてみましょう。車で訪れると、高岡から砺波、城端までは平坦な田園風景が続きますが、城端を過ぎてから一気に山を登っていきます。20分ほど登った山間のバス停から5分ほど歩くと、相倉集落の入口に到着。入口からのびる細い道はかつて五箇山街道と呼ばれ、絹糸の生産地である五箇山と絹織物産業で栄えた城端を結ぶ産業の道でした。その左右には大小様々の合掌造り集落が並んでいます。集落を散策する前に、ぜひ立ち寄っていただきたいのが相倉集落を見渡す展望スポットです。集落入口の駐車場の脇から段々畑のあぜ道を登ること500メートルほどのところに小さな展望台が作られています。ここから見ると、集落の全体はもちろん、合掌造りの屋根の形までじっくりと眺めることができ、時間を忘れてしまうほどです。
展望スポットから下ったあとは、いよいよ集落の中へ入ってみましょう。近くで見る合掌造り家屋は想像以上に巨大なもの。屋根裏の養蚕スペースも含め、3階建て構造になっている家屋も多く残ります。ひとことに合掌造りといっても、様々な形があり、屋根の斜面側に入口がある入母屋の白川郷に対し、五箇山の集落は正面に玄関がある妻入という形になっています。現在残る合掌集落の建築は主に江戸時代中期から明治期に建てられたものですが、古いものは17世紀に遡ると言われています。集落の中には「原始合掌造り」と呼ばれる竪穴式住居の発展形のような住居も残っています。現在多くの建物は民宿や食事処として開放されており、内部の様子もご覧いただくことができます。
冬こそ美しい姿を見せる集落
豪雪地帯のため五箇山はグリーンシーズンの訪問地、というイメージが強いですが、ぜひ冬にも訪れていただきたい訪問地です。特にその冬の景観の代表がライトアップです。合掌の屋根に白く雪が積もり、集落にあかりが灯る光景は、まさに幻想的。相倉、菅沼それぞれで開催されますが、2月、3月の数回のみの貴重な機会ですので、ぜひ訪れてみてください。
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