視察レポート

視察レポート

2025年12月26日

【視察レポート(第1回)】キルギス、カザフスタン 神秘のイシククル湖南岸をゆく

<東京支店 相澤 満弘>

<東京支店 相澤 満弘>

視察で訪ねたオシュにて。菊間(右)と相澤(左)

2025年7月、社長の菊間とともにキルギスの地を訪ねました。私にとっては2010年の添乗以来、15年ぶりの訪問でした。これまでのワールドのキルギスのツアーは、キルギスを代表する観光地のイシククル湖北岸や、シルクロードの歴史遺産を訪問するツアー、あるいは近隣国と併せた周遊の旅がほとんどでした。

今回、皆様へお届けする「新しいキルギスの旅」発表にいたったその経緯と魅力を、「視察レポート 第1回」としてご紹介します。


キルギス第二の都市オシュを訪問

今回の視察の、当初の主目的のひとつはキルギス第二の都市オシュでした。オシュは外務省の危険情報レベル2「不要不急の渡航中止」の地域(2025年12月現在)で、その実情を確認したかったのです。実際にオシュを訪ねてみると、町は極めて穏やかな印象で、滞在中に危険を感じることは一切なかったのですが、最大の見どころと期待していたバザールは都市開発のため移転工事が進み、大半の店舗が閉めてしまっている状況でした。
また、オシュから車で5時間ほどのところにはキルギスとタジキスタンとの国境にそびえる高峰レーニン・ピーク(標高7,134メートル)を望むベースキャンプがあり、ここも訪ねました。ユルト式の宿泊施設は魅力的でしたが、滞在するキャンプの標高が3,600メートルと高所でありながら、高度順応が難しく悪路も多いことなどから、企画化を断念しました。

キルギス南部のベースキャンプにもユルト宿泊施設がありました
オシュのバザール。開発により規模は縮小されていました

イシククル湖南岸 視察で会った新しいキルギス

首都ビシュケクに戻った後は、これまでもご案内してきたイシククル湖北岸のリゾート地チョルポン・アタに滞在しました。
ソ連時代、イシククル湖はリゾート地として親しまれていました。そのため北岸沿いにはリゾートホテルや別荘が建ち並び、年間の国内観光客は150万人にも上ったといいます。この15年の間にも、ますます町の規模は大きくなり、ホテルやリゾートの建設が続いている様子でした。

北岸のリゾートから望む湖と山並み

その後は、湖の東岸にある国内第4の都市カラコルへ向かい、いよいよ視察旅行が終盤を迎えようとしたときに、急遽予定を変更して、イシククル南岸にも訪れることとしました。そこで出会ったのが「シルダック」と「グランピング・ユルト」です。
2023年11月、来日したキルギス共和国大統領サディル・ジャパロフ閣下より、「近年のキルギスには、伝統的な遊牧民のテント『ユルト』を現代的にアレンジしたグランピング施設が誕生している」との話がありましたが、このイシククル南岸は北岸のリゾートが並ぶエリアとは印象が異なり、一本の道路の車窓にはただイシククル湖と天山支脈の風景が見えました。そこに、大統領閣下も話していた新しい宿泊施設がいくつかできてきており、これはぜひ皆様にご紹介したいと2人の意見が一致しました。

イシククル湖岸すぐのユルトに2連泊
ユルト内は伝統的なデザインかつ、トイレ、シャワー完備で快適です

また、そのユルトに近い南岸の小さな村ボコンバエフで、現地ガイドのすすめで、伝統織物の工房に入りました。ここでは母から娘へと受け継がれてゆくフェルト刺繍「シルダック」が、今なおすべて手縫いで作られています。それは、本当に小さな工房でした。

ボコンバエフの小さな工房にて

イシククル湖畔の小さな村で、一枚のフェルトに目を奪われました。

色鮮やかなフェルトに施された幾何学的な渦巻き、自然をモチーフにした文様―それは、アイヌ文様を彷彿させ、思わず息を呑むほどでした。古くよりキルギスで受け継がれるフェルト刺繍「シルダック」。村の女性たちが、母から娘へ、祖父から孫へと受け継いできた技。その手仕事の温もりに、遊牧民の誇りと愛情を感じました。
遠く離れた中央アジアの遊牧民と日本。なぜこれほど似た文様が生まれたのでしょうか。キルギスと日本のあいだには、顔立ち、言語の文法など数多くの共通項があります。紀元前よりシルクロードで交易されたフェルト製品は、キルギスの女性たちの手で今も大切に受け継がれています。この出会いが、新しいキルギスの旅の始まりでした。(菊間 陽介)
説明1
女性たちの手作業で作られるシルダック
説明2
2色のフェルトのデザインを組み合わせて手刺繍で縫い合わせ

イシククル湖畔という古のシルクロードのルート、唐代には玄奘三蔵が通ったとされるこの道で見つけた工房。シルダックを調べてゆくといろいろなことがわかりました。シルダックの歴史は、2500年前にもさかのぼります。キルギス、カザフスタンの国境付近の遊牧民の遺跡からは古代のフェルトが発掘されており、このフェルトは現在サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に収蔵されています。シルダックは2012年、「キルギスの伝統的なフェルト絨毯」としてユネスコ無形文化遺産に登録されました。2019年にはイギリスのキルギス新任大使の信任状奉呈の際、故・エリザベス女王2世への贈呈品として選ばれたり、2022年のミラノ・コレクションではシルダックをあしらったドレスが発表されたりと、注目を集めています。
車も航空機もなかった古の時代、目印となるは天山山脈の氷河や雪から溶け出た清らかな水が注ぐ湖イシククル。ロシアのバイカル湖に次ぎ、世界第2位の透明度を誇ります。紀元前8世紀からこの地を世界最古の騎馬民族とされるスキタイが縦横無尽に駆け抜け、その血筋はいずれ、後続の遊牧民となるモンゴルにも伝わっていったのかもしれません。


イシククル湖南岸を巡ることで、これまでの旅では気づかなかったキルギスの歴史、文化により深くふれ、壮大な歳月をかけてこのキルギスの大地で交わり、やがて世界各地に伝わっていった人々の営みを感じることができました。

この記事に関するキーワード

お気軽にお問い合わせください

電話相談はこちら

受付時間:午前9:30~午後5:30

東京
03-3501-4111
大阪
06-6343-0111
名古屋
052-252-2110
九州
092-473-0111
札幌
011-232-9111
湘南
0466-27-0111