2019年12月20日更新

スペインの熱気を伝える三大祭り

スペインではキリスト教の行事や聖人にまつわる祭りが各地で行われています。今回は「スペイン三大祭り」として知られるバレンシアの火祭り、セビリアの春祭り、パンプローナの牛追い祭りについてご紹介しましょう。



3/15〜19
新しい季節の到来を告げる
バレンシアの火祭り


バレンシアの火祭りは、起源は冬が明けた3月、新たな季節の訪れを前に、大工らが古道具やかんな屑を燃やしたことによるといわれます。後世にはキリスト教と結びつき、イエスの養父ヨセフ、サン・ホセが大工の守護聖人であったことから、その祝日である3月19日に家の軒先に人形を飾るようになりました。この人形が軒先から広場に置かれ、次第に巨大化して「ファージャ」と呼ばれる張り子人形になったのです。

ファージャは高さ30センチほどのものから10メートル、ときには30メートル以上におよぶものなどもあり、19世紀末から人々が優秀賞を選ぶコンクールとなりました。ファージャのコンクールは2月から始まります。街にはその年の火祭りに参加する大小様々なファージャ約700体が飾られ、観光客でも1人1票を投じることができます。投票は3月15日までなので、機会があったらぜひお気に入りを選んでみてはいかがでしょう。
さて、火祭りは3月15日の夜から本格的に始まります。1日目は「プランタ」といい、すべてのファージャがこの日の夜までに設置されます。16日の朝を迎えると、街には様々なファージャがずらり。これらのファージャは最終日まで人々の目を楽しませてくれるのですが、その間のイベントも盛りだくさんです。

「マスクレタ」という爆竹ショーはそのひとつです。実はバレンシアでは爆竹は結婚式などのお祝い事に欠かせないものですが、普段は路上で鳴らすことは禁止されています。しかし火祭りの期間は特別で、午後2時になるとマスクレタの爆音が鳴り響きます。さらに夜の爆竹ショー「マスクレタ・デ・コローレス」は花火も加わりいっそう賑やか、かつ華やかに。お祭り気分をこれでもか!と盛り上げます。  その一方、厳かかつ華やかなのが17・18日に行われる、オフレンダと呼ばれる献花パレード。民族衣装をまとった人たちが聖母マリア像に花を捧げる、敬虔な祈りの姿が見られます。
そして5日目の19日はいよいよ祭りの本番。夜の7時頃からパレード「カバルガータ・デル・フエゴ(炎の行進)」が始まります。そしてクライマックスが「クレマ(人形焼き)」。真夜中にコンテストで優勝した1体を除き、すべてのファージャに火がかけられる様は、一抹の哀愁も漂います。

なおこの火祭りはフィエスタ・ナシオナーレ(国民の祝祭)と呼ばれる闘牛シーズンの開幕を告げるものでもあります。三大祭りをはじめ、国内の主だった祭りと闘牛はセットとなっていますので、機会があったらぜひともに楽しんでみてください。

 

「バレンシアの火祭り」のクライマックスシーンを「特等席」でご案内する2コース

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「バレンシアの火祭りとアラゴンの『最も美しい村』」の詳細はこちらから




4月後半の6日間
春本番! セビリアの春祭り

セビリアの春祭りは「フェリア・デ・アブリル・デ・セビリア」と呼ばれます。これは「4月の市」という意味で、13~17世紀に開かれていた畜産見本市を19世紀に復活させ、それが次第に春の訪れを祝う祭りに変わりました。
祭りの日、女性たちはカラフルなフラメンコの衣装で、男性たちはつば広の帽子にジャケットで正装します。会場にはカセタという大きなテントが1000棟以上も並び、それぞれのカセタで飲み食べ歌えの宴会が開かれているので、会場は大賑わい。このカセタは9割ほどが職人組合や会社、県人会など、様々な団体ごとの私的なもので、関係者しか入ることができません。またテントとはいえ、優美な調度を設え、なかにはシャンデリアを飾るカセタも。中の様子を披露しているカセタもあるので、覗き歩くだけでも楽しいものです。また一般観光客にも開放している公共のカセタもあるので、地元のお祭り気分も味わえます。




7/6〜14
パンプローナのサンフェルミン祭

起源は12世紀頃に遡るといわれる、パンプローナの町の守護聖人サン・フェルミンの祝祭。その主要な行事のひとつが、ヘミングウェイの小説『日はまた昇る』で記され、世界的に有名になったパンプローナの牛追い祭りです。
牛追い(エンシエロ)自体は闘牛の牛を闘牛場まで追い込んだのが始まりで、次第に人間が牛の前を疾走する祭りに変わっていきました。かつては女性も参加できましたが、やはり命の危険も伴うことから1974年に禁止され、現在参加は18歳以上の男子に定められています。

牛追いは7日の8時から。旧市街に設けられた1キロ弱のコースを、男性たちが牛とともに猛スピードで駆け抜けていきます。疾走はわずか3分ほどですが、人々は早朝から沿道に陣取ります。スタートの合図とともに、ドドド……という地響きが伝わったかと思うと、人と牛の塊が一気に目の前を駆け抜ける、その迫力は圧巻。心に刻まれる、永遠の一瞬です。その後はパレードや音楽が繰り広げられます。

いずれの祭りも地元の人たちとともに楽しむことで、その地がより身近に感じられることでしょう。




主な参考文献
■『スペイン文化読本』(編/川成 洋 丸善出版 2016年)
■『地球の歩き方 スペイン』 (ダイヤモンド社/ダイヤモンド・ビッグ社 2017年)
■『アンダルシアを知るための53章』 (編著/立石博高・塩見千加子 明石書店   2012年)