2018年1月15日更新

名作を生む永遠の都ローマ

古代ローマからルネッサンス、バロックへと辿ってきた歴史を今に伝えるイタリアの首都ローマ。街なかには歴史的建造物が点在し、観光名所にもこと欠きません。そんな「永遠の都」ローマは、古くから名作の舞台にもなってきました。

ローマを舞台にした映画で最も有名なのは『ローマの休日』(1953年/アメリカ)でしょう。オードリー・ヘップバーン演じる王女と、グレゴリー・ペック扮する新聞記者のひとときの淡い恋が、ローマの街を背景にロマンチックに描かれます。髪を切った王女がジェラートを食べたスペイン階段、2人が訪れたサンタ・マリア・イン・コスメディン教会の「真実の口」などは、この映画を機に一躍世界に知られるようになりました。
(上)スペイン広場 (下)真実の口

古いものではほかに、ヴェネト通りの高級ホテルやカフェを舞台にセレブの退廃を描いたフェデリコ・フェリーニ監督の『甘い生活』(1960年/イタリア)や、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の「愛の不毛三部作」の一つ、アラン・ドロン主演の『太陽はひとりぼっち』(1962年/イタリア)などがあります。ローマは、愛の物語が似合う街なのでしょう。  近年では、ウディ・アレンが監督したラブ・コメディ『ローマでアモーレ』(2012年/アメリカ・スペイン・イタリア)が、ほぼ全編ローマで撮影されました。ローマに生きる人々の恋愛模様を描いたこの群像劇では、トレヴィの泉、コロッセオ、テルミニ駅、カンピドリオ広場、ボルゲーゼ公園など、ローマの名所が続々登場します。『ダ・ヴィンチ・コード』(2006年/アメリカ)の続編として話題となったミステリー映画『天使と悪魔』(2009年/アメリカ)もローマが舞台です。サン・ピエトロ大聖堂やローマ市内の教会内部などはセットで撮影されましたが、ナヴォナ広場、パンテオン、サンタンジェロ城など市内各地でロケが行われ、話題になりました。

ローマを描いている作品は映画ばかりではありません。デンマークの童話作家として日本人にも馴染み深いハンス・クリスチャン・アンデルセンが、ローマを舞台に小説を書いていることをご存じでしょうか。彼が手がけた初の長編小説『即興詩人』は、童話作家として有名になる前のアンデルセンが、イタリア旅行をした際の体験をもとにまとめたもの。ローマの貧しい家に生まれたアントニオを主人公に、イタリア各地を彷徨しながら幸せをつかむまでの恋物語が格調高く綴られていますが、バルベリーニ広場から始まる前半は、ローマ市内および周辺のスポットが描かれ、ローマの名所案内の側面も持ち合わせています。
 
舞台が残るオペラ『トスカ』

そしてローマを舞台にした名作として外せないのが、ジャコモ・プッチーニの傑作オペラ『トスカ』です。  物語の設定はフランス革命後、共和制の崩壊した政情不安の中にある1800年のローマ。孤児から歌劇場の人気歌手へと上り詰めたトスカは、パリ帰りの画家カヴァラドッシと恋に落ちますが、共和主義者のカヴァラドッシは、ローマ市の警視総監スカルピアに狙われ、脱獄した政治囚アンジェロッティをかくまった罪で死刑宣告を受けてしまいます。恋人の命と引き換えにスカルピアに関係を迫られたトスカは、恋人を救うためスカルピアを殺害。しかしカヴァラドッシは処刑され、トスカも彼の後を追います。

この激しくも美しい恋の物語は、ローマに現存する3つの場所が舞台です。第1幕の設定は、17世紀初頭に建てられたサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会です。名建築家カルロ・マデルノの設計によるバロック様式の豪奢な建物で、内部には大きなドームの下、広大で明るい空間が広がります。見どころは、なんといっても2人の芸術家の競演でしょう。ドームに渦巻き状に描かれたランフランコの天井画『聖母被昇天』は、バロックの大傑作といわれるもので圧巻。ドメニキーノのフレスコ画『聖アンドレア伝』『四福音書記者』も必見です。冒頭、脱獄囚アンジェロッティは、この教会の礼拝堂に身を隠します。  第2幕の舞台は、ファルネーゼ宮殿に移ります。教会から歩いて5分ほどのこの建物は、ローマ教皇パウロ三世を輩出したファルネーゼ家が暮らしていた宮殿で、16世紀はじめに着工、ミケランジェロらが引き継いで完成をみました。現在、この宮殿は在伊フランス大使館となっているため、内部の見学はできませんが、壮麗な外観は一見の価値あり。ミケランジェロの手によるファサード、ファルネーゼ家の百合の紋章などを見ることができます。この優美な外観とそぐわず、物語ではこの宮殿の中に設けられたスカルピアの執務室や拷問室で壮絶な場面が展開されます。
サンタンジェロ城
第3幕、最後の舞台は、トスカが悲しみのあまり身を投じるサンタンジェロ城です。「聖天使城」を意味するこの城は、もともとローマ皇帝ハドリアヌス帝が自らの霊廟として建設を始めたもので、後には要塞や牢獄など様々な用途で使われました。「聖天使」の名は、6世紀終わり、ローマでペストが大流行したとき、グレゴリウス一世がこの城の頂上に大天使ミカエルを見て、ペスト終息を宣言したという言い伝えから付けられたもの。今も、城の頂には天使像があります。テラスからは、美しい彫刻が左右に並ぶ眼下のサンタンジェロ橋からバチカンのサン・ピエトロ大聖堂、ベネチア広場、パンテオンまで、ローマの街が一望の下。城内の博物館では、ルネッサンスの画家たちの絵画や彫刻が鑑賞できます。

実は、この城とバチカンは約800メートルの「秘密の通路」で結ばれています。映画『天使と悪魔』にも登場したので、ご存じの人もいるでしょう。

知るほどに深まるローマへの興味。名作の印象を道連れに、「永遠の都」を歩いてみてはいかがでしょうか。



主な参考文献
■『ローマ散策』(著/河島英昭 岩波新書 2000年)
■『イタリアの都市とオペラ』(著/福尾芳昭 水曜社 2015年)
■ イタリア政府観光局公式サイト http://www.visitaly.jp
■ROMA SITO TURISTICO UFFICIALE http://turismoroma.it/lang/ja/
■『ローマでアモーレ』公式サイト http://romadeamore.jp/location