2018年6月21日更新

奇才ガウディの作品に込められたメッセージ

スペインを代表する天才建築家ガウディ。独自の建築スタイルを確立し、その未完の大作であるサグラダ・ファミリアに匹敵する建物は、この世に存在しないとさえいわれています。ガウディの代表作の構造や色彩をひも解いていくと、人間の力を信じ、自然を愛した人物像が浮かび上がってきます。


「聖なる家族」に心血注ぐ
サグラダ・ファミリア
19世紀末にスペインのバルセロナで台頭した芸術様式モデルニスモの旗手となったのが、天才建築家アントニ・ガウディです。自然をモチーフとし、曲線を多用したデザインは、けっして誰も真似ることができない唯一無二のもの。感性のままに表現されたような造形も、実はそれまで対照的なものとされてきた構造と装飾を両立させた独自の様式です。  

1852年6月26日、スペインのカタルーニャ地方タラゴーナの町レウスで生まれたガウディ。その作品は個人の邸宅、公園など様々ですが、生涯をかけて取り組んだ未完の大作がサグラダ・ファミリア教会です。日本語に訳すと「聖なる家族」。バルセロナを代表する世界遺産です。

ガウディがサグラダ・ファミリア教会の二代目の建築家に就任したのは1883年秋のこと。もともとは1882年に着工し、当初は別の建築家が指揮していましたが内部対立で辞任。後を継いだガウディは、1926年に路面電車に轢かれて死去するまで、サグラダ・ファミリア教会の建設に心血を注ぐことになります。

愛する自然を作品に取り入れる
サグラダ・ファミリア内部
直線、直角、水平がほとんどない外観に数多くの彫刻が配され、建物と一体化しているサグラダ・ファミリア。ガウディはこの教会に「生誕の正面」、「栄光の正面」、「受難の正面」の、3つの正面を設けました。このうち、ガウディの生前に完成したのは「生誕の正面」だけ。朝日に照らされるように設計されたこのファサードは、イエス・キリストがこの世に姿を現したことを象徴する彫像などの装飾が施されています。

ガウディはこうした彫像をつくるために、生身の人間、死者、植物、動物などを型にとって研究を続けました。お告げの天使像のモデルとなったのは当時25歳だったデッサン画家のリカルド・オピッソ。「ズボン下だけの姿になると、ガウディは有無を言わせず私にポーズをとらせ、さらに石膏を体に塗った。私はすぐ腹痛に襲われて気絶した」とのちに語っています。もちろん、ガウディはただ本物そっくりの彫像をつくろうとしたわけではありません。モデルとなる人体のメカニズムや内部に秘められた力を完全に理解したうえで制作する必要があると確信していたからです。


また、聖堂内部にもガウディ建築のエッセンスがちりばめられています。木のように枝分かれした柱は構造上の利点に加え、信者と神との一体化を体験できる森のような空間をつくろうとしたからでした。伝統的なゴシック様式とはまったく違う設計で、時間によって異なる方向から自然光が入るように双曲線のカーブがなされています。

ご存じのとおり、サグラダ・ファミリアは現在もなお工事が続けられ、没後100年となる2026年に完成する予定です。

すべての建築物に色を
グエル邸
バルセロナには、ほかにも多くの傑作が残されています。実業家グエルの依頼を受けて制作したグエル公園、グエル邸、山をテーマとした住宅カサ・ミラなどが有名です。ガウディ作品はその斬新で豊かな色彩で人々を魅了。ガウディ自身、「植物も地質も地形も動物も、皆多かれ少なかれ色彩によって生命をあたえられ、引き立てられている。だからすべての建築物には色を付けなければならない」と語っています。

カタルーニャ以外でも見られるガウディの作品が、3つあります。このうち2つはスペイン北部のレオンにある「アストルガ司教館」と「ボティネス邸」、もう1つはモデルニスモ建築が点在する避暑地コミージャスのコミージャス侯爵邸内の庭園にある「エル・カプリチョ」です。
グエル公園
アストルガ司教館とボティネス邸は、どちらも外壁を覆う灰色の花崗岩を現地で調達したり、ネオ・ゴシック様式を採用したりと、多くの共通点を見出すことができ、カタルーニャの作品とはまた異なった趣を楽しむことができます。エル・カプリチョとは日本語で「気まぐれ邸」という意味。ひまわりをモチーフとしたセラミックタイルが一列に並んだ外壁が目を引きます。長い間放置されていましたが、日本人がスペイン人から買い取って、当時と同じように修復し、レストランとして開業させたのは有名な話です(現在はスペイン人がオーナー)。バルセロナオリンピックの際には、日本の皇太子殿下がスペイン王室を招いて晩餐会を開きました。また、サグラダ・ファミリアの「生誕の正面」に飾られている奏楽天使の彫刻は日本人彫刻家・外尾悦郎氏の作品。こうしたガウディと日本とのゆかりに着目するのも一興でしょう。


主な参考文献
■『ガウディ 建築家の見た夢』 (著/フィリップ・ティエボ― 監修/千足伸行 創元社 2003年)
■『ガウディの七つの主張』 (著/鳥居徳敏 鹿島出版会 1990年)