視察レポート

視察レポート

2021年03月23日

民話の里・遠野にて、見る、食べる

東京支店 酒井康行

岩手県の遠野は「民話の里」とも呼ばれるほど古い言い伝えがたくさん残る町です。それらの伝説を民俗学者の柳田國男がまとめ、今から100年以上も前に刊行したのが「遠野物語」です。「遠野物語」は日本民俗学の金字塔的な存在で、当時の庶民の思想や暮らしぶりを知ることの出来る貴重な資料として、長きにわたって愛されています。このたびは、「民話の里」遠野の魅力をご紹介します。

ツアーで訪れるのが一番

視察は遠野駅から開始しました。花巻と釜石とのちょうど中間あたりに位置する遠野へは、JR釜石線を利用して個人でも訪ねることが出来ますが、残念ながら電車の本数は1~2時間に1本程度。また、最近になって、高速道路が釜石と花巻とを結びましたが、それがかえって遠野にはマイナスとなり、遠野に立ち寄る観光客が減ってしまっているそうです。是非、遠野が含まれているツアーをお選びいただき、遠野散策をお楽しみいただきたいものです。

遠野駅前
駅に到着すると駅員さんだけではなくカッパが出迎えてくれます。

江戸時代の城下町・遠野を知る「遠野城下町資料館」

仙台藩と接する盛岡藩の要衝の地・遠野は、内陸部と沿岸部を結ぶ交易の拠点として多くの物資や人々が集まり、様々な商家が軒を連ねる遠野南部氏1万2千石の城下町として発展してきました。街路は敵の侵入を防ぐため鉤型に整備され、入口には人数を計る枡形が設けられました。遠野城下町資料館はこうした江戸時代の城下町・遠野の姿を紹介しています。

この並びに遠野城下町資料館はございます。
武士のくらしを知るためにはうってつけの資料館です。

昔話蔵と柳田國男展示館のある「とおの物語の館」

この地にあった造り酒屋の蔵を改築し、遠野地方に古くから伝わる昔話を紹介しています。広々とした蔵の中は、まさに昔話の世界。座敷ワラシや雪女などの話を、切り絵やイラスト、映像などを使って紹介しています。さらに、遠野出身の佐々木喜善を紹介するコーナーのほか、映像ライブラリーや絵本コーナーも設けられています。ここは、子供から大人まで幅広い世代が楽しみ、学びながら、それぞれの想像を膨らませることの出来る場所。「遠野物語」の世界に出会い、体験し、心豊かな時間が過ごせます。

とおの物語の館の入口。背後に見えるクリーム色の建物はホテル「あえりあ遠野」です。
「ネズミの嫁入り」。物語の下に人形が飾ってあります。
イラストで分かりやすく展示してあり、子供だけではなく大人も楽しめます。
遠野だけではなく、世界の昔話に関する展示も充実しています。

民俗学の父の足跡を辿る「柳田國男展示館」

旧高善旅館は柳田國男が滞在した宿で、明治から昭和にかけての遠野を代表する旅籠として知られています。柳田をはじめ、折口信夫、ネフスキーなどが宿泊し、民俗学調査の拠点としました。「遠野物語」の草創に深く関わった宿として現在の位置に移築し、柳田の生涯や遠野での足跡を紹介しています。また、旧柳田國男隠居所は、昭和31年1月16日から、昭和37年8月8日に88歳で永眠するまで柳田國男が妻の孝とともに過ごした家。東京の世田谷区成城にあったものを移築しました。柳田が好んだ装飾が施された、とても趣のある建物です。ここでは、柳田の功績や著作を紹介しています。

旧高善旅館入口
柳田國男展示館は柳田に関する資料が充実しています。
旧高善旅館内部
敷地には柳田國男の胸像もあります。

日本初の民俗専門の「遠野市立博物館」

遠野市立博物館は、昭和55年に開館した日本で初めての民俗専門の博物館です。平成22年に『遠野物語』発刊100周年および開館30周年を迎えたことをきっかけに全面リニューアルを行いました。遠野の人々の自然や暮らし、文化、歴史を、『遠野物語』を軸に多彩な映像や展示でご紹介しています。

明治43年(1910年)6月14日発行の『遠野物語』初版
昔の遠野の方の暮らしぶりも良く分かります。
遠野では機織りも盛んに行われていました。
遠野の歴史が丁寧に説明されています。
遠野地方ならではの農具の展示も充実しています。
このたび訪れた時は特別展として多数の雛人形が飾られていました。

遠野のシンボル「カッパ淵」

常堅寺裏を流れる小川の淵にはカッパが多く住んでいて、人々を驚かし、いたずらをしたと言われています。澄んだ水がさらさらと流れるカッパ淵は、鬱蒼とした茂みに覆われ、今にもカッパが現れそうです。淵の岸辺には、カッパ神を祀った小さな祠があり、子持ちの女性がお乳が出るようにと願をかけると叶うと言われています、願かけには、赤い布で乳の形を作り、この祠に納めるのが習いとされているそうです。私が訪れた時は、2月15日夜に発生した強風のために、常堅寺の屋根が吹き飛ばされてしまい、その修復工事のため、カッパ淵へは行くことが出来ませんでしたので、残念ながらカッパにも出会えていません。

修復中の常堅寺、左手の道を進んで行くとカッパ淵があります。
カッパ淵(イメージ)© 一般社団法人東北観光推進機構
残念ながら私は行けませんでした。

遠野地方の農家の生活を垣間見ることの出来る「伝承園」

遠野地方の農家のかつての生活様式を再現し、伝承行事、昔話、民芸品の製作・実演などが体験出来る伝承園。園内には国の重要文化財に指定されている曲り家「菊池家住宅」、遠野物語の話者「佐々木喜善記念館」、千体のオシラサマを展示している「御蚕神堂」などがあります。遠野地方の古民家は「南部曲り家」と呼ばれるものがほとんどで、現在では住居にしている家庭も少なくなっています。「曲り家」とはL字型になっており、人が住む母屋と馬小屋が繋がっている住居で、馬はかけがえのない人間の友であり、同じ屋根の下で暮らしていました。

重要文化財に指定されている曲り家「菊池家住宅」
遠野物語の話者「佐々木喜善記念館」

遠野で宿泊するのならホテル「あえりあ遠野」

遠野市立博物館の隣、南部神社へ通じる階段の麓に位置するホテル「あえりあ遠野」。四季折々に、豊かな自然と「民話」、「伝説」にふれあえる遠野に平成13年7月にオープンしたホテルです。夕刻には囲炉裏を前に語り部さんによる昔ばなしをお楽しみいただけ、また、地元産の角閃石を使用した大浴場にてゆっくりと旅のお疲れをお取りいただけます。角閃石には遠赤外線効果で体を芯から温め、血行を促す効果があります。角閃石は日本列島で遠野だけに産する貴重な天然石です。

ホテル「あえりあ遠野」の外観
語り部さんによる昔ばなしもお聞きいただきます
平成25年7月4日、天皇皇后両陛下(現上皇上皇后両陛下)が、東日本大震災の被災者お見舞いのため、岩手県へ行幸啓になった際、「あえりあ遠野」にご宿泊されました。
開放感のある明るいロビー
地元産の角閃石を使用した大浴場
天皇皇后両陛下(現上皇上皇后両陛下)が訪問された際のお写真
秋篠宮皇嗣同妃両殿下も訪れていらっしゃいます。
ホテルのすぐ近くには南部神社の鳥居がありますので、朝の散歩に南部神社へ行かれるのも良いでしょう(階段ではございますが)。
南部神社は明治9年、明治天皇が東北地方を巡幸したことをきっかけに、明治15年に創立されました。
南部神社から望む遠野の町並み。手前に見えるクリーム色の建物がホテル「あえりあ遠野」です。

発酵のプロフェッショナル 佐々木要太郎さんが手掛ける料理とどぶろくに舌鼓

「発酵のプロフェッショナル」、「どぶろく醸造家」、「米農家」など、様々な顔を持たれる「料理人」佐々木要太郎さんが営むオーベルジュ「とおの屋 要(よう)」。遠野で100年以上続く「民宿とおの」の4代目として、しかし、民宿とはまた異なるサービスを提供すべく、岩手県紫波の豪農家にあった築200年程の「米蔵」を民宿の隣に移築再生させ、1日ひと組み限定、1棟貸し切りのオーベルジュが誕生しました。
佐々木さんは菌を味方に、菌たちの声を聴くことで、カビの力を使った「発酵」で保存するという考えに基づき、料理をされていらっしゃいます。
また、料理だけではなく「どぶろく」づくりにも精を出され、2015年にはスペインや香港に輸出され、スペインのサンセバスチャンにある世界的に有名なレストラン「ムガリッツ」でも扱われると、何とそのどぶろくを使用したコースが新設されたそうです。
このたびは、「とおの屋 要(よう)」にてどぶろくやお食事をいただくという、何とも贅沢な機会に恵まれ、一品一品いただくたびに感動し、いつかは「ローカルガストロノミー」の旅として皆様にもご紹介したいと思いました。何せ数ヶ月先まで予約でいっぱいという人気のオーベルジュですので、いつになるかはわかりませんが、是非、首を長くしてお待ちいただければ幸いです。

薄暗くなりかけた時刻に「とおの屋 要」を訪ねました。
装飾ひとつひとつが凝っています。
最大8名様までという贅沢な空間にてお食事をいただきます。
吹き抜けとなっている2階には寛ぎのスペースが広がっています。
究極のどぶろく。今までほとんど飲んだことはございませんでしたが、口に含むとシャンパンのように泡がはじけ、そしてもろみの一粒一粒まで味や食感を楽しめ、たちまちどぶろくの虜になってしまいました。
芋サラ、ジャガイモと地元の三升漬け(3種の野菜の味噌漬け)とクリームチーズを混ぜた料理
ジャガイモのほのかな甘みと三升漬けのカリカリした食感が楽しかったです。
自家製納豆に梅干しソースと有精卵がを乗せ、青のりを振りかけてある料理。混ぜていただくと、梅の酸味が納豆の臭みを消して爽やかな味わいでした。
岩手の郷土料理ひっつみに粉チーズとほや塩を振りかけた料理。ひっつみはアルデンテで、粉チーズのまろやかさとほや塩の塩分が絶妙な塩梅でした。
海のキャラメル。牡蠣を発酵させ、まわりを岩手の海藻「まつも」で覆った料理です。
中は濃厚ですが、周囲のまつもの香りで、全体的には爽やかな味わいでした。
酒粕の茶碗蒸し。中に山椒と米で発酵させた亜麻豚肉(料理しづらい前足の部位をミンチにして1年寝かしています)が入っています。豚の甘みに山椒のアクセントが効いていました。
ホタテの糠漬けと温葛切り。ホタテのぬるっとした食感と葛切りのつるっとした食感がマッチしており、最後にオリーブオイルの香りが口に広がりました。
南部小麦の自家製生麩に陸前高田の北限の柚子と白ワインソースをかけた料理。外はカリカリ、中はもっちもちでした。
鴨のささみと村上農園のトマト、さやえんどう、蕪のサラダ。トマトの甘みとオリーブオイルの香り、蕪のコリコリした食感が絶妙なバランスでした。
イノシシの藁焼き、ほどよい噛みごたえがあり、肉の旨味を感じることが出来ます。脂があっさりしていて甘く、臭みは一切ありませんでした。
胡桃入りパン、乗っているのは、ひとつは11月に仕込んだ赤蕪の熟れ寿しとバター、もうひとつはイノシシのミンチとキノコの赤ワイン煮込み
岩手の農家の方が田んぼ作業の合間に食べるという「がんづき」、このたびは黒糖風味で蒸した後に焼いて出してくださいました。添えてあるのは酢を使った発酵クリームソース。黒糖のほのかな甘みとクリームソースの酸味、そしてがんづきの香ばしさが、それぞれを邪魔せず、マッチしていました。
最後にお抹茶をいただきました。
佐々木要太郎さんと石川さん
約2時間、食事を堪能し、「とおの屋 要」をあとにする頃には、すっかり外は真っ暗になっていました。

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