2014年5月1日更新

【講演会再録】大村幸弘先生が語るヒッタイトの魅力

ワールド航空サービス東京支店が主催した、3月の「ワールド・トラベルカレッジ」で、中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所所長である大村幸弘さんのセミナーを開催しました。

ワールド航空サービスでは、昨年「アナトリアの世界遺産を訪ねて」というツアーを実施し、大村先生が発掘を続けている、トルコのカマン・カレホユック遺跡を訪ねました。そのご縁もあり、調査報告のため帰国され、たいへんお忙しくされているところを、再びご講演いただく機会に恵まれました。

「WORLD旅のひろば」3月号には、大村先生のインタビュー記事を掲載いたしましたが、このピックアップツアーでは、「アナトリア古代文明『鉄を生み出した帝国ヒッタイト』をひもとく」と題して、大村先生にお話いただいた講演の内容を5点に要約してご紹介いたします。
 
大村幸弘先生 プロフィール

中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所所長。早稲田大学第一文学部西洋史科卒業後、トルコ政府給費留学生としてアンカラ大学言語・歴史・地理学部ヒッタイト学科に留学。中近東考古学科博士課程修了。留学中からトルコ国内の発掘調査に参加。帰国後、中近東文化センター勤務。1985年よりトルコのカマン・カレホユック遺跡の発掘調査に従事。著作に『鉄を生みだした帝国――ヒッタイト発掘』(日本放送出版協会、1981)、『アナトリア発掘記――カマン・カレホユック遺跡の二十年』(日本放送出版協会、2004)などがある。


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およそ90分、先生には様々なお話をしていただきましたが、冒頭、こんなお話から始まりました……

①歴史を知ることの重要性
奇観が広がるカッパドキアと洞窟
皆さまの中にもカッパドキアをお訪ねになった方がいらっしゃると思います。奇岩が林立することで知られるカッパドキアですが、ここには修道院が建設され、洞窟の中に数多くのキリスト教徒が隠れ暮らしていた、といわれます。

そこへアラブ、イスラームがキリスト教徒を追い出そうとやってきて、キリスト教徒は自らの信仰を守るために戦った、とガイドから説明されることが多いかと思います。敵の襲来に備えて大きな回転扉があってそれを締めた、というような話もされますね。

私も最初は真に受けて聞いていたんだけれど、これは事実ではないと思います。誰がこのような話を作ったか、それはヨーロッパです。アラブ、イスラームへの反感でもって作ったことです。もし、本当にそうだとして、アラブ、イスラーム軍がやってきて、穴倉の中に薪でも、水でも入れられれば、半日も保てません。すぐに終わってしまいます。

話としてはおもしろいのだけれど、カッパドキアでもなんでもそうですが、それを見るうえでは、ものを考えるうえでは、1万年を追っていって、初めて見えてくるものがある。歴史をきっちり知ることはとても大切なことなのです。

 
②トルコ・アナトリアの発掘の魅力

アナトリアという場所は東西南北の、本当の中間点にあります。ということは、北から南から、西から東から、黒海や地中海から、いろんな文化がここに入ってきます。それがなぜわかるか?

それはイスタンブールだけを見てもわからないし、エフェソスだけを見てもわからないし、パムッカレだけを見てもわかりません。ところが、トルコ中央部に位置するカマン・カレホユック遺跡にはギリシャへ続く道が通り、中央アジアへ続く道が通り、黒海、地中海へともつながり、まさしく東西南北の古代の道の十字路になっているのです。

ですから、ここを掘れば、新石器時代のものからアッシリア商人の時代からヒッタイト帝国、フリギア王国、アケメネス朝ペルシャ、ローマ帝国、ビザンツ帝国、セルジューク朝、オスマン・トルコ帝国など、様々な時代の出土品が出てきます。これは、イランでも、ギリシャでも、シリアでも、エジプトでも、中国でも、こういうことはない。たとえば、エジプトは長い歴史があるけれども、アナトリアのように、これだけ民族が激しく行き交っているところはないのです。
大村先生が30年近く発掘を続けていらっしゃるカマン・カレホユック遺跡(写真提供:中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所)
カマン・カレホユック遺跡の発掘が世界史を塗り替えるかもしれません

③中近東文化センター(アナトリア考古学研究所)
の意義と役割


トルコには「ホユック」と呼ばれる遺丘が、少なく見積もっても3万以上はあると考えられます。カマン周辺だけでも1600ほどありますが、ほとんどは調査されていません。これを上から発掘区を設置して丹念に下まで掘っていったのは、アメリカやイギリス、ドイツ、フランスだけなのです。

そうすることによって、何ができるか。約1万年の”年表”を作ることができます。考古学、歴史学で最も重要なのはこの年表になります。日本の研究者はきちんとした年表づくりは誰もやっていません。

いわば、欧米で作ったものをタダで借りてきて研究しています。アメリカでも、フランスでも、その調査によって、歴史の流れを押さえて、文明の終焉や文明の衝突といったものを描いてきました。中近東文化センターは三笠宮殿下のご発意の下、出光佐三さんらの協力を得て設立されましたが、日本人自ら掘り下げて調査し、1万年の年表を作って、こういった文明論、文化論を話せる人材を育成するのが私たちの使命なのです。

 
④ヒッタイトの都が発見された瞬間

私が影響を受けたドイツ人のヴィンクラーは、アッカド語(くさび形文字)の研究者であり、古代エジプトのヒエログリフを読むことができました。当時、古代エジプトの碑文にあったルクソールやカルナックの存在はわかっていたけれども、「ヘテびと」(=ヒッタイト)の国はどこにあるのかはわかっていなかった。ヴィンクラーはその「ヘテびと」を探して、中近東をくまなくフィールドワークして見つけ出そうしました。

そして、辿り着いたボアズキョイの遺跡で、エジプトのカルナック神殿で目にしたエジプトとヒッタイトが交わした平和条約の文書と同じ内容を記した粘土板を見つけたのです。ヴィンクラーがヒッタイトの都ハットゥシャを発見した奇跡の瞬間でした。
ヴィンクラーが発見した、ヒッタイトの都! ハットゥシャ遺跡

⑤ヒッタイトとエジプトと鉄

ヒッタイトが大国エジプトと対等に戦うことができた背景に鉄の存在があります。たとえば、ヒッタイトの軽戦車というのはとても小回りが効いて、機動性に富み、エジプト軍を挟み撃ちにして攻撃したというようなことをラムセスが書いていますが、これは軽戦車の軸に青銅ではなく、鉄の軸を使っていた可能性も考えられます。
アラジャホユック遺跡から出土した世界最古の黄金装鉄短剣
ヒッタイトにとって鉄は非常に大切なもので、製鉄技術が流出しないように厳重に管理していたわけですが、ヒッタイト以前にも鉄は存在していたのではないかと考えられるのです。アラジャホユックで4300年前頃、前期青銅器時代後半の鉄剣が見つかりました。これを調べたところ、(地球外由来の、自然の)隕鉄であり、人工鉄ではないと結果が出ました。隕鉄にはニッケルが含まれていることからそのようにいわれます。

ところが、このような形状の鉄剣を作るのはたいへん難しい。私は鉄を溶かして型に流して作ったという仮説を立てています。ニッケルが入っていても、人工物の可能性があるということも誰かがいわないと始まらないので、今、分析しているところです。6月には、研究発表があり、それをホームページにアップしますので、またご覧いただければと思います。

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今年もカマン・カレホユック遺跡へ
 
昨年のツアーの様子
およそ90分、大村先生の熱いお話しは続きました。話題は多岐にわたり、お客様はたいへん熱心に、そして時に感嘆の声を上げながら、お聴きになっていました。現在、大村先生は再び、トルコのアナトリア考古学研究所へお戻りになり、発掘と研究の日々に入られています。

先生がお話されたように、カマン・カレホユック遺跡の発掘は、「歴史を編む」という壮大な目的に通じるものです。その現場を訪ねることは、とても刺激に溢れています。カマン・カレホユック遺跡と考古学研究所博物館の調査にこれからも目が離せません。


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