高級チャドルはなんと、モデル・ジャパン
古都イスファハンのイマーム広場近くのレストランでひとりで食事をしていたら、小さな男の子の手を引いたお父さんが、「日本からですか?」と英語で声をかけてきた。「そう、東京から来ました」と答えると、「どうぞイスファハンを楽しんでください」とにこやかな笑顔で返してくれた。地元の家族が自分の住み暮らすイスファハンを誇りに思っている様子が伝わってきて、心温まるひとときであった。また、やはりイスファハンのイマームモスクの正面で打ち合わせをしていると、数人の若い女性が「どこから来たの?」と英語で話しかけてくる。彼女らは、北部の東アゼルバイジャン州(州都はタブリーズ)からの観光客だという。短い時間だったが、やはり私とのやりとりを楽しんでいる様子だった。
イスファハンで最古の「金曜のモスク」の門前には、女性が着用するチャドルの店が何軒も集まっているが、そこには高級ブランドとして、なんと「モデル・ジャパン」が堂々と陳列されていて、値段は高いが人気なのだという。お金持ちは好んで、この日本モデルのチャドルを愛用しているのだ。そして、通りを行く夥しい車列も、「トヨタ」車が一番人気の高級車として目立っている。15年前と比べて、女性の服装も明らかに変わってきている。当時は、黒一色のチャドル姿ばかりであったが、最近はカラフルなスカーフを身に着けた若い女性の姿も増えてきた。聞くと、鮮やかな色でなければ、特段信仰上の問題にはならないという。
女性の社会進出はすさまじいもので、今や大学生の64%は女性。街角でも、すれ違う男女比は、ほとんど同率である。イランは夕食が午後9時頃からと遅いこともあって、10時を過ぎても町はけっこう賑やか。驚くのは、そろそろ深夜も近いというのに、子どもや赤ちゃん連れのファミリーが、繁華街で散歩を楽しむ姿が一般的なことである。
テヘランには地下鉄が開通していた。こちらは中国の技術で造られたとのことだが、日本の地下鉄と大差ないほど、モダンである。そして、テヘラン市長の方針で、あちこちの公園や街路に植樹がされ、かつての灰色の街並みは緑豊かな景観へと変貌を遂げている。これは、シラーズやイスファハンでも同様で、いずれの都市も、グリーンシティの印象に変わった。道路の整備も相当に進んでいた。また、かつては、簡易アスファルトのガタガタ道をクーラーもない扇風機付きのイラン製中型ベンツで移動、という姿であったものが、まず路面状態が格段に良くなり、そして大型40〜50席のボルボなどの新型バスでの移動に変わっている。テヘランのホメイニ新空港は、本年3月にオープンしたばかりだし、シラーズやイスファハンの空港も、新ターミナルビルとなり明るく広々とした空間で気分がまことに良い。シラーズの空港内では、チャドル姿の若い娘さんの笑顔に呼び止められ、シラーズ特産の香水(12米ドル)を次女の土産に買うはめになった。また、イスファハンでは、名人が描く細密画(350米ドル)をVISAカードで買い求めた。クレジットカードも使用できるのだから便利になったものだ。
そして、かつてイスファハンのイマーム広場にはなかったレストランも、この6月にオープンした店を含め、3軒になっていた。冒頭、お父さんに声をかけられたのもこのうちの一軒で、ミートボール料理のクフタ(アゼルバイジャン地方の名物)がうまい店であった。かつては、毎食ケバブ料理が続くといったイラン旅行であったが、食事面もずいぶん変わって、大きな楽しみがひとつ増えた、といってもいいだろう。もちろん「おいしい」と地元で知られるケバブの店なども視察で探してきた。
ホテルについては、首都テヘランよりむしろ地方都市の充実が著しい。シラーズ市内のホテルはもちろん、ペルセポリスまで3キロ(車で5分)という場所にロッジスタイルの小ぎれいな宿泊施設も完成、夕日に輝くペルセポリス見学も可能となっている。イスファハンの高級ホテル「コウサルホテル」も、最近、内装改修が完了し、広々としたスペースで、設備もさらに新しくしっかりしたものになったので、見違えてしまった。快適そのものである。
チャイハネ問題
イランは恒常的な水不足が問題で、その影響で、イスファハンでは水パイプを楽しませるチャイハネが休業に追い込まれるという珍現象が起きていた。有名なハージュ橋のたもとにあるチャイハネや、チュービー橋の中ほどにあるチャイハネなどが休業していた。水パイプでどれほどの水が使われるのか、合点がいかなかったが、どうやら当局は水問題を大義名分に水パイプを排除したいらしい。それは残念、と探したところ運よくイマーム広場に面するバザール入り口の階上の「屋上チャイハネ」が先週再開したとの情報を入手し、さっそく向かった。
雰囲気たっぷりの内装は素晴らしいが、なによりここからの眺めが逸品である。広場の向こう正面にイマームモスクの圧巻、右手にアリカプ宮殿、左手に繊細な無数のブルーのモザイクで彩られるシェイク・ロトフォッラーモスク、広場に遊ぶ馬車……、この広さでは天安門広場に次ぎ、美しさでは世界一と称されるイマーム広場を、適度な高さから堪能しながらのティータイム。これは至福のひとときである。
アリカプ宮殿に特別入場
ペルセポリスをはじめとする、遺跡の数々、各地のバザールの様子など、変わってほしくないものは何も変わらず、古き姿をとどめている。人々の篤い信仰心も健在であった。
今回のツアーでは、本来、金曜日は閉まっているアリカプ宮殿の階上テラスに特別許可を得て上がり、敬虔な祈りを捧げて礼拝を済ませてイマームモスクから数千人もの市民が出てくる様子をご覧いただくプログラムを組み込んでいる。写真好きな方には、200〜300ミリの望遠レンズをおすすめしたい。印象的なシーンをご覧いただけることと思う。 |