カイザリアにも観光客が
 イスラエルへ向かったのは、6月。パレスチナとイスラエルの間で和平条約が結ばれて約4カ月が経ち、ツアー再開を前に実際に自分の目で現地の状況を確かめてみたいと思ったのです。
 首都テルアビブのベン・グリオン空港に降り立って驚いたのは空港の新しさでした。以前とは比べものにならないほどで、聞けば今年の3月に改装を終えたばかりだとか。
 すんなり入国を済ませると、ガイドの関根さんと合流。さっそく視察を開始しました。時刻は朝6時、6月だというのに少し肌寒く感じます。車で地中海沿岸を北上していきます。道は良く、ヨーロッパと比べても引けを取りません。
 最初に向かったのは、カイザリアの遺跡です。イスラエルは4000年の国。周辺の国と違わず数多く遺跡が残っています。地中海沿岸に残る遺跡の多くがそうであるように、カイザリアも純粋にローマ遺跡、ギリシャ遺跡というものではなく、その複雑な歴史を物語るように幾重にも時代の跡が積み重なっています。ローマ、ビザンチン、十字軍時代と興味深く、また、ここは使徒パウロがローマへ宣教に旅立った聖地でもあります。青く澄み渡る地中海を眺めていると、遙かローマに思いを馳せていたパウロの思いが伝わってくるようです。イスラエルの数ある見どころの中ではそれほど大きな観光地ではないにもかかわらず、朝からすでに観光客の姿が見えました。
 沿岸部から今度は内陸部のナザレへ向かいます。移動中には、沿岸部とは植生が異なり生い茂るオリーブの木々が見えます。ナザレは名立たる画家が取り組んだ「受胎告知」の舞台です。さすがに観光客が多く、土産物屋が軒を並べています。ひととおり周囲の様子をうかがった後、ガリラヤ湖畔のホテルへ向かいました。
 この日はイスラエル独特のキブツの経営のホテルに宿泊します。キブツとはイスラエル独特の共同村です。けっして豪華ではありませんが、キブツのホテルは人気があります。理由は食事にあります。キブツはその成り立ちが農業共同体であったため、野菜はすべて持ち前の農園で作ったものが出るのです。これがおいしい。また、キブツのホテルでなくともイスラエルの食事は全般に野菜類が多く、他の国を旅するよりも野菜を口にする機会に恵まれています。レストランで生野菜が出てもその野菜を洗っている水が心配でという方もいらっしゃるかもしれませんが、イスラエルは水道水が飲めるので心配ご無用です。

死海のホテル視察へ
 翌朝、ガリラヤ湖周辺の見どころを確認し、ヨルダン渓谷に沿って南下し、死海へ向かいました。その沿岸は水面下約400メートルにもなります。巨大な盆地にあり、温度は他の地域に比べて3〜4℃は上がります。緑豊かなガリラヤ湖畔からわずか1時間の移動で辺りの景色は一変し、赤茶色のむき出しの岩肌と荒々しい丘陵地がどこまでも続いています。四国程度の広さのイスラエルですが、変化に富んだ自然に出会えるのもこの国の魅力なのです。
 その荒涼たる砂漠地帯の中心に位置するのがマサダです。ローマ軍に追い立てられたユダヤ軍が最後の砦としたことでも知られています。四方を絶壁に囲まれ、頂上にはヘロデ大王が前30年頃に築いた宮殿跡が残っています。なるほど見るからに難攻不落の自然の要塞です。ケーブルカーで頂上へ上っていきます。こんな乾燥地帯の中でよくも生活をと思っていると、関根さんが答えてくれました。こんな砂漠地帯でも年に1、2回スコールのような大雨が降ることがあり、それを雨樋を利用して水を天然の岩のタンクに引き入れ、ため込んでいたそうです。
 マサダからは約15分で死海沿岸のホテルに到着。死海沿いのホテルを選ぶときに重要なのは、死海の「近く」に建つ、ではなく死海の「淵」や「畔」に建っていることです。なぜかというと、道路を挟んだり、死海から少し離れたホテルだったりすると、「海の家」があるわけでなく、ホテルから水着で歩いていかなくてはいけないからです。その点、利用する「ホッド・ハミドバー」は24時間いつでも浮遊体験を楽しめるプライベート・ビーチに死海エステを楽しめる施設も充実しています。どうぞご安心を。

ガイドとともにエルサレム巡り
 かけ足の視察は翌日には三大宗教の聖地エルサレムへ。死海からおよそ2時間で到着です。晴れていたこともありますが、エルサレムの高台から死海が遠くに見えたのには驚きました。
 エルサレムの見どころは実に多いのですが、最も見応えがあるのは、ゲッセマネの園に万国民の教会、ビア・ドロローサ(悲しみの道)、聖墳墓教会(ゴルゴダの丘)と、イエス・キリストの最後の足跡を実際に訪ねられるところでしょう。
 そのひとつひとつに立つだけでも感動ものですが、さらに日本語ガイドがそれを巧みな説明で盛り上げてくれます。キリスト教徒ではない私も、原罪を背負って死に臨んでいくキリストの物語に目を潤ませてしまいました。なにせ目の前のすぐそこに新約の舞台があるのです。聞くと、イスラエルのガイドは1年半に及ぶヘブライ語の研修の後に、試験に受かった者だけが資格を与えられるそうです。取得するのに、世界でいちばん厳しいガイド資格だと関根さんもおっしゃっていました。
 最終日、時間を見つけてイスラエル博物館も覗いてきました。ここにはクムランで発見された世界最古の写本・死海写本が展示されていますが、それ以外の展示も充実しています。なかでも目をひいたのが西洋絵画コレクション。シスレー、ピサロ、モネ3点、セザンヌ3点、ゴッホ、ルノアール、ゴーギャン5点、モディリアーニ等々、名画の数々が並んでいるのです。これらはいずれも諸外国のユダヤ人による寄贈とのこと。思いもしなかった粒よりのコレクションを十分堪能。最後にオールド・ヤッフォに立ち寄り、地中海に沈む夕日を眺めてから帰途に就きました。

視察を終えて
 一度はイスラエルに行ってみたいと思いながらも、安全面等々から二の足を踏んでいる方もいらっしゃるかもしれません。私も出発前には、条約が締結されたとはいえ、さぞ各地で厳戒態勢が取られているのだろうと想像していました。しかし、観光客をどこへ行っても見かけ、検問もなく、他の国を旅するのとなんら変わりなく、視察を終えました。唯一、セキュリティ・チェックを受けたのは、「嘆きの壁」に入るときだけでした(ここはいつでもセキュリティ・チェックをしています)。チェックは以前に比べてむしろ少なくなったようにも感じました。ニュースで映し出されるイスラエルの姿は迷彩服の人々や涙や怒りの場面ばかりですが、条約締結後の今、当たり前のことですが、そこには平穏に暮らす市民の生活があり、笑顔を浮かべる人々の姿がありました。イスラエルは「旅」できます。安心してイスラエルの旅にご参加ください。

イスラエルを訪ねる旅はこちら

 

オリーブの丘から望むエルサレム旧市街

キブツでの朝食風景。イスラエルの食事はとにかく野菜が豊富です

地中海を望む町カイザリアの水道橋遺跡

(上2点)ガリラヤ湖畔

死海のすぐほとりに建つホテル「ホッド・ハミドバー」

ガリラヤ湖のほとり「山上の垂訓教会」

笑顔のイスラエルの子どもたち。エルサレムの旧市街にて

イスラエル博物館に展示されている死海写本

視察でお世話になったガイドの関根さん

聖墳墓教会

シオン山にある最後の晩餐の部屋

イエスが十字架を背負って歩いたビア・ドロローサ(悲しみの道)

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