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 孔子を敬慕する人々の気持ちが築いた穏やかな城壁の街へ

孔子を敬慕する人々の気持ちが築いた穏やかな城壁の街へ

これまでもご案内してきた、中国山東省の曲阜ですが、視察を済ませて、新たな旅が誕生しました。その視察の模様を、松本と上釜がお話しします。

視察報告 松本佳晴(本社 写真左) 上釜一郎(「旅のひろば」編集部 写真真ん中)

城壁と瓦屋根の町曲阜の町そのものを紹介したかった

上釜:3月の週末を使って曲阜視察に出かけてきましたが、今回もまた見るべきものが多く、慌ただしく各地を2人で巡ってきました。そもそも、なぜ今曲阜だったのか、松本専務からお願いします。

松本:曲阜といえば、孔子様。孔子が生まれ育った町として知られています。近年、たとえば、昨年11月、ブータン国王が来日し話題になりましたが、彼らの国是である「国民総幸福」に注目が集まっているように、「モノの時代」から「心の時代」へという流れが以前にまして強まっているように思います。そして、孔子の『論語』が、今再び読まれるようになってきています。これは日本だけでなく、欧米でもそうです。そういう時代背景もあって、孔子の曲阜をもう一度しっかりと取り上げてみたいという思いがありました。他方、これまで、曲阜の観光というと、お定まりの三孔、つまり、孔子を祀った「孔廟」、孔子一族の墓がある「孔林」、また彼らの住居や仕事場である「孔府」の見学に終始していました。でも、それだけではなく、もう少し引いた目で、広く、深く、曲阜という町そのものをご紹介したかったのです。

上釜:実際に訪ねてどうでしたか?

曲阜の県城(旧市街)には、信号がひとつもありません

松本:孔子様の生まれ故郷とはいえ、中国の地方都市には変わりありませんから、やはり最近は町の開発が進んでいるのかなと思っていました。そうしたらこれが、いい意味で期待を裏切られて、実に雅趣に富む町でした。

上釜:私はまず高い建物がないというのが目をひきました。孔廟に太成殿という建物があります。紫禁城の太和殿、泰山の廟とともに、中国三大古建築のひとつに数えられるのですが、この大成殿より高い建物は建ててはいけないことになっているということでした。

松本:これ、最近の話じゃないですからね。2500年前からそうだというのですから驚きです。だから曲阜にいると、空が広く感じられます。現在、中国の地方都市に行くと、野放図にビルが林立していますが、曲阜では孔子様を超えるなんて、恐れ多いということなのでしょう。中国では日本人が思っているより、孔子様は慕われていて、彼らの敬愛の情が伝わってくる話です。

上釜:もうひとつ、目をひいたのが、町をぐるりと取り囲む城壁です。宋、明、清と受け継がれ、近年修復されたと聞きましたが、大変に立派なものです。町を構成するこの城壁もそうですし、瓦屋根の家並みも、けばけばしくなく、大人の町という感じで、曲阜は文化レベルの高い町だなという印象を強く受けました。静かで、車も少ないですし。

老舗旅館のような闕里賓舎。4ツ星クラスです。

松本:中国の町の中には、過度に華美に造った町がありますからね。その点、曲阜は日本人にも馴染みやすい「渋さ」があります。皆様にお泊まりいただくホテルも総2階建てで、客室数も150ほどの、老舗の和風旅館のようなこぢんまりとした落ち着いたホテルです。このホテルに泊まることも、旅の魅力のひとつになると思っています。

上釜:中庭を囲むように客室があって、雰囲気がとてもいいですし、何より立地が抜群ですね。

松本:城内の中心にあり、鐘楼の目の前、孔廟、孔府はすぐ隣というこれ以上ない場所に位置しています。城門をくぐり抜け城壁沿いを歩いて、孔廟の正面前から路を通ってホテルまで朝もやの中を一周する30分ほどの早朝の散歩はぜひお楽しみいただきたいものです。

上釜:孔廟の開門と同時に、その周辺も観光客が多くなっていきますから、閑静な中での朝の散策は宿泊する者だけのメリットといえるでしょう。

孔林へ、のんびりと馬車に揺られて。ワールド初登場の尼山山麓も。

馬車に揺られて北門を抜け、孔林へ。楽しい。

上釜:今回は、孔家一族のお墓がある孔林へ馬車で行くというプログラムも楽しみです。

松本:1キロほどの道のりをのんびりと。曲阜の町をゆったり流れる時間に合っている気がします。

上釜:孔林も広大なので、中は電気カートでの移動になります。聖人の墓を指して、「林」と呼びますが、すごかったですね、ここは。なんせ樹木の緑とともに10万以上の墓碑があるといわれています。

松本:まさに、墓碑の林の中にいるような、ちょっと不思議な空間で、これは初めて味わう感覚でした。

上釜:気持ち悪いとか、そういうことではまったくないのですが……。

松本:そう、そういうことではなくて、何といえばいいのでしょう、昔の映画のシーンの中にいるような……、或いは夢を見ているような……。皆様にもご体験いただきたいですね。
また、これまでの曲阜の旅と異なり、郊外へ足を延ばすのも特徴です。まずは世界遺産の泰山。また、南東に50分ほど車を走らせると、孔子の生まれ育った村があります。ここには石碑が残されているだけですが、そこからさらに数キロ行くと、山麓に書院が残されています。孔子が弟子3000人と起居をともにしていたという場所で、今にも孔子様が現れそうで、思わず襟を正したくなるような凛とした空気が流れていました。

静寂の尼山孔子廟の入り口

上釜:尼山孔子書院はガイドブックにも載っていない、ワールド初登場の見どころです。樹齢1000年を超える神木に囲まれて、聖地のようでしたね。中国の人にとっては、孔子様は菅原道真公のような存在で、ここには天神様にあるような、学業成就の札がたくさん並んでいました。受験生がお参りにやってくるのでしょう。また、建築もおもしろいので、柱などの細工にも注目してみてください。

松本:ほかにも、孔子に次ぐ儒教の聖人として知られる孟子を祭った孟廟を訪ねます。ここは世界遺産の暫定リストに入っていて有名ですが、その10キロほど手前に孟子の生家が残されていると聞きつけて、村も訪ねてみました。「孟子故里」の碑があり、その傍らには、なんと自由市が立っていました。市場は5日に一度やっているようです。そしてヒビ割れた塀伝いに歩いていって、ふと顔を上げると、朱色の「孟子故宅」の表札が。びっくりしましたね。

上釜がお手伝い。その向こうの壁が孟子の故宅です

上釜:うれしいサプライズでした。でも、修復されたり、保存されたりはしていないようです。管理人らしき人もおらず、鍵がかかったままでした。

松本:有名な「孟母三遷」を地でいくような、家のそばに市場があって、という展開ですが、地元の人はあまり関心がないのか、放置されたまんまという。日本ではちょっと考えられないことですが、このあたりが中国らしい。上釜はおばちゃんを手伝って、石臼で豆をひいちゃいました(笑)。

徐州に残る日本人が建てた鐘楼と、戦後に寄贈された桜

立派なお屋敷が連なり残る戸部山明清街

松本:成田発のツアーでは、曲阜に3泊したのち、徐州に1泊します。今回、戸部山の明清街を初めて訪ねましたが、ここも立派です。その名のとおり、戸部山の中腹をぐるりと明清時代の古民居が取り囲んでいます。たとえば江南の水郷古鎮といった、ほかの場所の明清街というと、庶民の古民居が並んでいることが多いですが、戸部山にはお屋敷が連なっています。今は流れを変えましたが、かつて徐州にはあの大黄河が流れ、1624年に大洪水が発生したそうです。その後、洪水を避けるために、裕福な人々は競って山腹に家を建て、こうしてユニークな明清街が残されたということです。

上釜:世界遺産への登録申請中だそうですね。中もすばらしいものでした。また、私は徐州では鐘楼と桜の話に感銘を受けました。徐州市は、中心部の人口9万人の曲阜と異なり、中心部で150万人、周辺も加えると1000万人という大都市です。そこに日本人が暮らしていた時代に建てられた、当時最も背が高かったという鐘楼が今も残されているという。

松本:そうですね。交通の要衝であった徐州は、「徐州徐州と人馬は進む」という軍歌『麦と兵隊』で知られるように、日本軍が進軍し、日本人小学校が2つあったほど日本人が数多く暮らしていました。普通なら、そんな日本人が建てた鐘楼なんて壊してしまうところですが、大都市の一角に今も大切に保存してくれています。話を聞きながら、申し訳ないのとうれしいのとで、複雑な気持ちになりました。また、「徐州会」という、当時徐州に暮らしていた日本人たちの会があるそうですが、彼らが桜の木を徐州に寄贈したそうで、春ともなれば日中友好の実りのように花を咲かせます。

上釜:徐州の人たちは、その桜を見て花見をするそうですね。

松本:なんともうれしいことですね。徐州では、その鐘楼の前に建っている、かつてのヤマトホテルだった現「花園飯店」で昼食を召し上がっていただこうと思っています。

思わず撮影したくなる「孔府宴」撮影スポットもいっぱい

夕食後の散歩がまた素晴らしい

上釜:徐州の桜には間に合いませんが、皆様が訪ねられるときには曲阜は緑いっぱいで美しい季節になります。治安もよく、夕食後に城壁や城門のライトアップを見に行くにもちょうどいい季節でしょう。夜景散歩はおすすめです。

松本:上釜は今回もたくさん写真を撮っていたけれど、なかでも写真映えするところはどこだった?

上釜:城門や鐘楼のライトアップもきれいでしたが、落日寸前の光が当たった孔府や孔廟、そして街並みが特に写真映えしましたね。
そうそう、それからツアーでは皆様に曲阜自慢の「孔府宴」をお楽しみいただきます。これは孔子が客人を迎えたときの宴席の名を取った特別料理ですが、ご覧のような写真に撮りたくなるようなメニューの数々が出てきますので、カメラをお忘れなく。

松本:6月の日中は、25、6度と、快適ですし、雨も少ない季節です。日本の「わび」、「さび」に通じるような曲阜発見の旅ぜひお出かけいただきたいと思います。

曲阜写真レポート

※写真はクリックすると大きな画像が表示されます。

世界中で、特に先進国で「論語」が静かなブームを呼んでいる、という。「モノの時代」から「ココロの時代」への象徴的な現象でしょうか。

その孔子の故郷曲阜を視察して参りましたが、そこには孔廟より背の低い建物だけの、信号のひとつも無い、四方を高い城壁に囲まれた県域(旧市街)が、立派に残っていました。2500年来、中国の人々が孔子に深い敬意を払い続けていることが、この街造りにもよく表されていて、ここはまさに「心のふるさと」。気持ちが不思議に落ち着きます。

このたびは、やはり秦の始皇帝から始まり、2500年前にはすでに皇帝の大典を催す場所となっていた歴史の聖山、泰山(たいざん ロープウェイで上ります。)と共に、ご案内申し上げます。
(視察チーム、松本佳晴/上釜一郎)

曲阜ホテル

闕里(けつり)賓舎。今回お泊まりいただくホテル。「朋有遠方自来亦楽不乎」「友有り 遠方より来たる また楽しからずや」(『論語』の開巻第一に出てくる言葉。)の大きな書で迎えられた。曲阜の中心、孔廟と孔府に隣接した木造2階建ての古典建築。町の中心なのに、中庭に面した客室は静か。また、この地の宴席料理「孔府宴」も自慢です。

曲阜の町

孔子様の生まれ故郷とはいえ、中国の地方都市には変わりありませんから、やはり最近は町の開発が進んでいるのかなと思っていましたが、いい意味で期待を裏切られて、実に雅趣に富む町でした。まず目を引くのが高い建物がないということ。孔廟に太成殿という建物がありますが、この大成殿より高い建物は建ててはいけないことになっているということでした。だから曲阜にいると、空が広く感じられます。曲阜では孔子様を超えるなんて、恐れ多いということなのでしょう。中国では日本人が思っているより、孔子様は慕われていて、彼らの敬愛の情が伝わってくる話です。

世界遺産の三孔は外せない

孔子を祭祀す孔廟、孔子の直系子孫とその家族が住んだ邸宅兼執務室、孔府、そして孔子とその一族の墓所、孔林へ。

孔廟

孔府

孔林

孔子ゆかりの地 尼山書院

孔子の生まれた地とされている夫子洞や儒教を教えたといわれる尼山書院がある。樹齢1000年を超える神木に囲まれた空間は、まるで聖地のようだった。ガイドブックにも載らないここは、穴場の訪問地。

孔子に次ぐ聖人、孟子ゆかりの地も訪ねた

孟子は孔子の100年ほど後の人物だが儒教を広めた功績は孔子(至聖)につぐ聖人(亜聖)と称えられています。

孟子故居

孟廟・孟府

曲阜を代表する食文化「孔府宴」

歴代の孔府の主人が客人をもてなした宴席が「孔府宴」です。たいへん凝った作りで見た目も楽しめます。思わず写真を撮りたくなる料理ばかりです。

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