第一弾 秋のソラクサンと嶺東線・京春線の沿線を訪ねて
中央線に乗って、海苔巻き食べて
近年、船旅の人気の高まりとともに、鉄道の旅が見直されています。1987年に始まった、テレビ朝日系列の3分間番組「世界の車窓から」が人気を保ち続けているように、また最近では、鉄道の旅を扱った書籍もよく見かけます。スピードの速い世の流れの揺り戻しでしょうか、旅くらいのんびりいきましょう、ということかもしれません。
しかし、たとえば韓国でも日本同様に高速道路が整備され、鉄道に乗るよりも高速道路を走っていったほうが早くて便利ですし、ツアーでも、観光バスを使って高速道路を移動するのが一般的。また、韓国版新幹線KTXも整備されて、いわゆるローカル線は縮小傾向にあります。いずこも同じ(経済優先の)事情を抱えているわけですが、旅を愛する者としては、地域に密着したローカル線がなくなっていくのは寂しいかぎりです。
視察では、ツアー発表を前に、韓国でも人気が高く、眺めのいい路線に乗車したいと考えました。そして「眺めのいい」となると、大都市を結ぶ幹線よりもやはりローカル線。今回、乗車したのは、中央線、嶺東線、京春線の3本です。
最初に、ソウルを流れる大河・漢江の支流南漢江に沿って走る中央線に乗車して安東を目指しました。安東には郊外に河回村という昔ながらの町があって、ツアーでご案内したいと考えていたからです。
中央線の列車はソウル市内の清涼里駅から出発します。東京と同じくソウル駅には列車の方面別にいくつかのターミナル駅があります。清涼里駅はあかぬけているとは言い難いのですが趣があって、東京でいうと上野駅といったところでしょうか。清涼里駅を出発した列車は、しばらくはなんの変哲もない「郊外」を走っていきますが、ハングルの字の付いた異国の郊外はそれはそれで興味深いものです。やがて右側に南漢江の渓谷が近づいてきて、その後はこの南漢江に沿って走っていきます。
鉄道の旅の楽しみのひとつというと、日本ではご当地名物の素材を使った駅弁でしょう。最近では駅弁と地酒の「ワンカップ」の組み合わせが、流行りのようです。ひょっとして「地マッコリ」も、なんて期待して乗り込んだものの、韓国ではそもそも当地名物の駅弁という発想はなかったらしく、これといった弁当には出会えませんでした。残念。とはいえ、お腹も減って試しにと選んだのが韓国風海苔巻き(キムパプ)。これがけっこうイケました。あと、ついでに頼んだ、味付けのゆで卵が味がよく染みていて絶品でした。車内販売では、キムチ味のスナックなど酒のつまみになるようなものも売られていますし、韓国のお菓子を味わってみるのもいいでしょう。
『冬ソナ』の舞台も訪ねる
河回村を訪ねた翌日、安東からは韓国随一の景勝地といわれる雪嶽山の玄関口、江陵まで、車窓風景で定評のある嶺東線の旅を楽しみます。安東を出発した列車は中央線を北上して栄州へ。ここから山岳路線の嶺東線に入ります。途中、太白線の合流する桶里駅までは、一日7往復の列車しか通っていないローカル路線。ディーゼル機関車に引かれた4両編成の列車は、山村をのんびりと走っていきます。
嶺東線の最初のハイライトは韓国唯一の羅漢亭スイッチバック。列車はトンネルと急カーブの連続で山を下りていきます。もうひとつの楽しみが、東海駅辺りから望む海岸線の車窓風景です。ここは韓国の鉄道で海を見ながら走る貴重な区間です。ツアーでは、あえて江陵の手前の正東津駅で下車することにしました。プラットホームから望む海岸線の風景が素晴らしいんです。韓国のドラマや映画の舞台としても使われているそうですが、うむ、納得しました。
そこからは鉄道路線がないので、バスに乗って紅葉で有名な雪嶽山へ向かいます。
もうひとつのローカル線が渓谷美で有名な京春線。春川から乗車します。春川はドラマ『冬のソナタ』の舞台として脚光を浴びた町ですが、風光明媚な町としても知られています。
春川を出た列車は、ソウルの郊外までのほとんどの区間を、北漢江の渓谷に沿って走ります。この路線はソウルからも近く、最近脚光を浴びる観光ルートです。周辺には、渓谷の散策や山歩きを楽しめるハイキングコースがたくさんあって、週末にもなるとどの列車も予約でいっぱいになるそうです。約2時間の列車の旅を楽しみながらソウルの清涼里駅に到着すると、韓国ローカル線の旅も終わりを迎えます。
韓国の鉄道に日本語アナウンス
韓国のローカル線に乗車して思ったのは、その利用しやすさでした。すべての駅の案内表示には、ハングル語だけでなく漢字、ローマ字の表記があり、停車駅のアナウンスもすべて日本語入りというのには驚きました。また列車の種類は4種類。高速鉄道のKTX、日本の特急にあたるセマウル号、快速列車のムグンファ号、各駅停車のトンイル号です。トンイル号は各路線とも一日に1本、2本走っているくらいで、ほとんどがムグンファ号です。トンイル号以外の列車はすべて座席指定となっています。日本と同様に、食堂車の連結はほとんどなくなってしまいましたが、今回利用するローカル線では車内販売があり、お弁当も購入できます。
そして何より印象に残ったのは、人々の優しさでした。言葉がわからなくても親切に話しかけてくれる車掌さんやプラットホームまで案内してくれた小さな駅の駅員さん。そして身振り手振りで何かと笑顔で話しかけてくれる車内の人々。昔の日本の鉄道もこうだった、とその車内風景の中に佇みながら懐かしくなりました。韓国・ローカル線の旅には、人情、旅情が残っていました。
旅の見どころ
韓国最北の国立公園 雪獄山
嶺東線の終点、江陵から向かうのが、太白山脈の最高峰・大青峰を有する雪獄山国立公園。訪ねたときはあいにくの空模様だったのですが、大勢の観光客の姿に驚きました。後日、韓国人の知人に聞いたところ、今、韓国で最も注目を浴びている国立公園とのこと。四季折々の美しさがあり、なかなか宿も取れないそうです。主峰の大青峰(1708メートル)には、本格的なハイキングコース、手軽に楽しむ散策コースなど種々あります。気楽に山並みを楽しむなら、麓から出ているロープウェイに乗って権金城に向かいましょう。山頂駅まで約6分。下車後、20分ほど上ったところからは雪獄山周辺の絶景が見渡せます。もっと楽に景色を楽しむなら、ロープウェイ駅から少し下った寺の裏側からの眺めもおすすめです。
時間があれば、飛仙台もぜひ訪ねましょう。軽くハイキングをする程度のコースで、雪獄山で最も美しいルートのひとつといわれています。飛竜瀑布ルートは、渓谷と滝が多く見られるため、緑と調和する水の美しさが満喫できます。また、ここには古刹・新興寺が残っていて、韓国仏教の趣ある雰囲気に浸ることができます。総じて、ゆっくりと時間をかけて訪れたい国立公園です。
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美人の車掌さんに迎えられいざ出発 |
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京春線の車内風景 |
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中央線の車窓より |
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やっぱり車内販売が気になる大阪支店長の渡邊浩一 |
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日本のようにご当地名物の駅弁がなかったのは残念。しかし写真の韓国風海苔巻きと味付けゆで卵はけっこうイケました |
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ツアーで訪ねる河回村。朝鮮王朝時代、数々の大家を輩出した名門両班が代々暮らしていた村で、今でも130戸余りの立派な韓屋が並んでいます |
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嶺東線は山岳路線。視察時はあいにくの雨だったが、霧にかすむ風景もまたおつなもの |
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駅も車内も日本人にわかりやすい表示です |
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嶺東線の海岸に面した小さな駅が正東津。海岸線を走る区間が少ない韓国の鉄道の中にあって、海辺にある貴重な駅です |
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