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世界一のペリト・モレノ氷河

ペリト・モレノ氷河 まだまだ残暑厳しい日本だが、南半球は、今は冬。南米大陸の南端にあるパタゴニアが真紅のノートロや黄のカラファテに彩られるのはまだもう少し先、11月頃のことである。

 「パタゴニア」はチリとアルゼンチンに跨る、一般的には南緯40度以南の地域を指す。別名「風の大地」。人々が「吠える(南緯40度)」、「叫ぶ(南緯50度)」と呼んでいる、激しい偏西風がいつも吹き荒れているからだ。その烈風にあおられ、草もまばらな見渡す限りの灰褐色の荒野に立つと、「ああ、南の果てにいるのだ」と、いいようのない感慨に包まれる。南に行けば行くほど、風は増し、気温も下がっていく。理屈ではわかっているのだが、南下すれば豊饒の南国が待っている日本人にとっては、どこか不思議な感覚も伴う。

氷柱崩落の瞬間 パタゴニアには類い希な世界遺産がある。50近い氷河を擁するロス・グラシアレス国立公園である。北欧、スイス、アラスカなど氷河の光景は各地にあるが、ここが一番だと言っていい。なかでもペリト・モレノ氷河は今なお前進し続けており、夏には1日に2メートル以上動くこともあるという。ここでは氷河末端の氷柱の崩落が見物だ。周囲に設けられた遊歩道で、その瞬間をじっと待つ。眼前には、波打つ大洋を一瞬にして凍りつかせたようなブルーの帯がどこまでも続いている。風が天気をめまぐるしく変えていく。雲が出たかと思うと、数分後には日に包まれ、その光線の角度や強弱によって氷河の青が千変万化する。一瞬とて同じ表情を見せない。飽きることがないのだ。と、今まで耳にしたことのない、氷柱の裂ける音がかすかに鼓膜を揺らす。地響きのような音を立て氷塊は崩れ滑り落ち、湖に姿を一度消して再び豪快に湖面に姿を現す。この間わずか数秒の出来事である。

 ペリト・モレノ氷河のあるカラファテへは、北米、南米主要都市と航空機を2回乗り継いで向かう。日本の全く反対側だ。だが、やっとの思いで辿り着くからこそ、その光景との出逢いがいっそう心を強く揺り動かす。行くだけの価値のある、南米いや世界屈指の大自然がそこには待っている。

(写真:上/ペリト・モレノ氷河 下/氷柱崩落の瞬間)

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